仲間との忘年会や大人数のクリスマスパーティなど、すっかりコロナ前に戻った様子の今年の年末。一年を通してお酒や人数の制限なく過ごせた久しぶりの年となった。

外食機会のグッと増えた2023年、グルメ界隈で生まれたヒットの数々を、記事本数や店舗数などを参考に、独断と偏見でランキング形式にてご紹介!

2023年 トレンドグルメ

10位:行列の先には「進化系クロワッサン&ドーナツ」

masayan.310
「フードスケープ ベーカリー パンとスープ 」のクロワッサンロール   出典:masayan.310さん

なぜか変わり種のクロワッサンが大人気だった2023年。ニューヨーク発祥の丸いクロワッサン「シュプリームクロワッサン」が「クロワッサンロール(サークロ)」と呼ばれブレイク。海外で人気の「ブリオッシュスイス」のクロワッサン版「パンスイス」も多くのパン屋が販売。

江戸っ子嫁ちょこ子
「BOUL’ANGE 日本橋店」のクロフィン   出典:江戸っ子嫁ちょこ子さん

クロワッサンとマフィンのハイブリッド「クロフィン」はアメリカや韓国のトレンドを受けてブレイク。2色使いが鮮やかな「バイカラークロワッサン」、クロワッサンとシュークリームをミックスした「クロッシュ」もじわじわきている。もち小麦を使って生地を伸びやすくした「のびるクロワッサン」もSNSでバズり中。

「croshu & nut’s milk’s smoothie’s」のクロッシュ 写真:お店から
エノキング
「MILK DO dore iku? 」のドーナツ   出典:エノキングさん

2022のトレンドグルメで1位にランクインした「ドーナツ」も人気継続。ブームの火付け役「I’m donut?」は7月に原宿店、9月に表参道店をオープン。ポルトガルの伝統菓子がハワイで人気になった揚げドーナツのような「マラサダ」のヒットも見逃せない。専門店「THE MALASADA TOKYO」は1月に下北沢店、9月に吉祥寺店をオープン。マラサダのような揚げた生地にクリームを詰めた「生ドーナツ」は都心部だけではなく北海道で大人気。専門店の「MILK DO dore iku?」は今年に入って北海道に6店舗もオープンした。

9位:わざわざ行きたい「町焼肉」

虎太郎がゆく
「焼肉幸泉」の焼肉   出典:虎太郎がゆくさん

焼肉にもトレンドの変化が。少し前までは飲食系企業が出店する高級路線の映え焼肉や量がたっぷりのハイコスパ系が人気だったが、今年は個人店やそこまで規模の大きくないお店で、どこかノスタルジックな「町焼肉」がトレンドに。立地も都心部ではなくローカル線沿線など“わざわざ”行くエリアにヒット店が多かった。

「炭火焼肉ホルモンさわいし 川崎うらら」のタン 写真:お店から

店主であった祖母の引退を機に、2022年3月9日に孫の安氏がリニューアルオープンした「焼肉幸泉」は京成立石にありながらもSNSで人気に火がつき、2023年は予約困難店に。「食べログ 焼肉 EAST 百名店」にも選出されている「炭火焼肉ホルモン うらら」出身の「炭火焼肉ホルモンさわいし 川崎うらら」は8月オープンにして2023年12月現在の食べログ点数は3.90! 高品質なハラミとタンが評判を呼んでいる。

「焼肉ここち」の並ロース 撮影:八木竜馬

肉バカの小池克臣氏が教えてくれたのは今年4月にオープンした高円寺の「焼肉ここち」。「すぐにタレの味に魅了され気に入ってしまい、最近いい店ある?と聞かれたら真っ先に推したい店です」と大絶賛だ。

8位:10代も活躍「超若手シェフ」

左からシェフの遊士丸さん・陽之進さん・凛志郎さん 写真:浜崎龍

ここ最近は若手シェフを応援するムードの飲食業界ではあるが、今年の話題をさらったのが京都府福知山市にある「NOMI RESTAURANT」の3兄弟。包丁の切れ味に着目し、「食材が切られたことに気がつかないほどノンストレスで切る」ことにより驚くべきおいしさを引き出した唯一無二の料理は、Foodieの間でたちまち話題に。記事掲載時の年齢は17歳・20歳・22歳!

シェフの久保雄之介さん 撮影:山田大輔

青山のグローサリーストアの奥というわかりにくい立地ながら、絶品パスタが食べられると話題になっているのが「AOYAMA GOURMET MART」 。山盛りの松茸パスタなど、原価率の高いパスタを大胆に作る久保雄之介シェフは21歳。

シェフの林大さん 撮影:佐藤潮

ミシュラン二つ星の「明寂」など人気店をプロデュースする林亮治氏が10月にオープンしたイノヴェーティブレストラン「白寧」の林大シェフは26歳という若さながら、店舗を訪れた食通が皆絶賛するほどの腕前を持つ。

7位:サービス色々「予約争奪戦」

「aca」のパエリア
「aca」のパエリア   写真:お店から

今年はコロナも落ち着き海外からのFoodieが数多く来日し、国内の有名レストランの予約もさらに取りにくくなった印象がある。高級店を訪れるとカウンターの半分以上が外国人、ということもしばしばだ。

国内外のFoodie向けにさまざまなサービスが登場し、人気店の席はますますプラチナシートになった2023年。例えば2022年にスタートしたレストランの席をオークション形式で手にいれる「食オク!」には「鮨さいとう」「成生」「aca 1°」など名だたる店が名を連ね、現在トップページには14店舗が掲載されている。中には1席20万円以上の高額で落札された店もあるようで、日本の予約困難店の白熱した人気が窺える。

pateknautilus40
「鮨さいとう」の握り   出典:pateknautilus40さん

2016年にサービスを開始した「TABLEALL」は富裕層インバウンド向け高級飲食店オンライン予約サービスだが、コロナが落ち着いてからかなり予約が入っていると聞く。定価よりやや高めの設定でも円安の影響もあり、海外の高級店に比べるとかなり割安に映るのだろう。

国内では招待制飲食コミュニティも話題になった。予約困難店をユーザー同士が誘い合うサービスで5月に「OSASOI」、6月に「Foodies Prime」がローンチ。有名店での食事は今後ますます情報と人脈、お金が必要になりそうだ。

6位:感謝を知る「農園レストラン」

りなのすけ1976
「田舎の大鵬」   出典:りなのすけ1976さん

今年Foodieの間で一番話題になったと言っても過言ではないのが「田舎の大鵬」。京都にある町中華「大鵬」の2代目が綾部市の山中にオープンした農園レストランだ。鶏舎で平飼いにしている鶏を絞めるところから始まる食事には、命をいただくことの尊さや感謝を感じ、「食べる」ことについて深く考えさせられる体験になる。

ケンチェラーラ.
「3274」   出典:ケンチェラーラ.さん

その日に手に入った食材でメニューを構成する三重県の「3274」もある意味「田舎の大鵬」に近いかもしれない。2020年3月にオープンしたたった4席のイノベーティブレストラン。公共の交通機関はなく車でのアクセスのみだが、捌きたてのジビエと自家農園の野菜で作る唯一無二の料理を求めて全国からFoodieが集まる。

やっぱり蕎麦
「my farm to table おにや」   出典:やっぱり蕎麦さん

新潟の「my farm to table おにや」はシャポン(去勢鶏)を堪能できる鳥料理店。オーナー自らが鶏を育てる・捌く・調理する、全ての工程を行う。2022年11月のリニューアルを機に料理の幅も広がり評判も鰻上り。

5位:3,000円超えも?「ラーメンの高価格化」

「麺や 紀茂登」の特製3,500円
「麺や 紀茂登」の特製3,500円   写真:お店から

サッカー元日本代表の本田圭佑氏がX(旧Twitter)に日本のラーメンが安過ぎるという旨のツイートしたのが1月9日。

長年「1,000円の壁」に悩まされていたラーメン業界。「1,000円の壁」とは原材料や人件費、家賃等の高騰により値上げをしたくても“ラーメンは1,000円以下”という世間の認識が強いためデフォルトのラーメンを1,000円以上に設定できないジレンマのこと。

「饗 くろ喜」の「特製塩そば」1,650円 撮影:溝口智彦

だがこの数年でデフォルトのラーメンを1,000円以上にする店が急速に増え、「1,000円の壁」は静かに崩壊していたようだ。10月に移転した「饗 くろ喜」も基本の「塩そば」が1,150円、麻布台ヒルズにオープンした「麺尊 RAGE」は「軍鶏そば」が2,000円だ。実際に食べるとスープから麺、具材まで恐ろしく手が込んでおり、決して高くは感じないお店も多い。

ぴーたんたん
「麺尊 RAGE」の「味玉軍鶏そば」2,200円   出典:ぴーたんたんさん

ラーメンの価格上昇に一役買っているのが湯河原の超人気店「らぁ麺 飯田商店」だろう。2022年5月、トップランナーである「らぁ麺 飯田商店」が「原材料の価格高騰ではなく、未来のラーメンの事を自分なりに考え出した答えです」と料金改定。「しょうゆらぁ麺」1,300円→1,600円、「つけ麺」1,800円→2,000円に値上げしたことで背中を押されたラーメン店主は少なくないはずだ。

「麺や 紀茂登」の内観
「麺や 紀茂登」の内観   写真:お店から

ラーメン価格の高騰は止まらない。日本料理「紀茂登」が8月、茅場町に「麺や 紀茂登」をオープンした。こちらは基本のラーメンが3,500円と「3,000円の壁」を超えてきた。それでもFoodieや海外からの観光客で盛況の様子。

4位:うれしい悲鳴「インバウンド復活・行列復活」

maru5585
「創作麺工房 鳴龍」の行列。写真は2022年12月のもの。今はさらに行列が延びているという……   出典:maru5585さん

10月に訪日外国人が251万6500人となり、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年同月(249万6568人)を上回ったことにより、飲食店でも外国人を多く見かけるようになった。

特にミシュラン掲載店の人気は高く、大塚のラーメン店「創作麺工房 鳴龍」は、週末2時間待ちは当たり前の大行列。平日でも数十人は並んでおり半分以上が外国人とのこと。

k-tig
出典:k-tigさん

元祖インバウンド行列店の豊洲「寿司大」はコロナ禍には予約ができて待ち時間ゼロのこともあったが、今や行列も完全復活しているとか。

3位:焼きたての幸せ「伝統焼き菓子」

「ルノートル東京」のフィナンシェ 写真:市川歩美

ここ数年安定的に流行しているのが「フィナンシェ」や「カヌレ」などの昔からある焼き菓子。さらに最近は「焼きたて」にこだわるお店が増えてきた。食べログマガジンでも紹介した7月オープンの「ルノートル東京」のフィナンシェは、店内の厨房で毎日焼き上げられる出来立ての味。

「パティスリー&カフェデリーモ」 写真:お店から

同じく7月にオープンした京都の「アトリエ パージュ 京都」、11月オープンの虎ノ門ヒルズ「DOLCE TACUBO CAFFE」も焼きたてフィナンシェが看板商品。11月に麻布台ヒルズにできた「パティスリー&カフェデリーモ」は「a la minute(すぐに、できたて)」をコンセプトに、店内で焼き上げたできたての焼き菓子をその場で提供するスタイル。12月には大阪・北新地に焼きたてフィナンシェ専門店「POIRE Le bon beurre」がオープン。焼きたてフィナンシェの人気は全国に広がっている。

「Pâtisserie La Gare by Louis Robuchon」の焼き菓子 写真:お店から

またフィナンシェに限らず焼き菓子専門店も増えており4月にはカヌレ専門店「LE TREIZE」、焼き菓子専門店「Conflans Saint honorine」、5月にはロブションの子息がプロデュースする「Pâtisserie La Gare by Louis Robuchon」など破竹の勢いでオープンしている。

2位:終わらない「おにぎり」ブーム

「一汁おにぎり 一粒万福」のおにぎり 写真:お店から

ここ数年のおにぎりブーム、火付け役は大塚のおにぎり専門店「おにぎりぼんご」だ。もともと行列のできる人気店だったがSNSで爆発的に人気になり、その知名度を生かしたプロデュース店や出身者の店が多く開店した。1月には新宿に系列店「おにぎり まんま」、3月に監修店「おにぎり こんが 赤坂Bizタワー店」、4月に「おにぎり こんが 羽田空港国際線ターミナル店」、10月に「ぼんご」で修業した店主の「一汁おにぎり 一粒万福」が西小山にオープンした。

「西麻布 米組」 写真:お店から

おにぎり人気にあやかり「ぼんご」系列ではないおにぎり専門店も見かけるようになった。東大院卒27歳の社長が手掛ける、カラフルなおにぎり専門店としてテレビでよく見かけたのは7月にオープンした人形町の「TARO TOKYO ONIGIRI 人形町ファクトリー」、同じく7月オープンの西麻布「西麻布 米組」は料亭経験30年の和食職人が本気で作ったおにぎりを提供する。

1位:Wヒルズ(麻布台ヒルズ・虎ノ門ヒルズ)

「CRAZY PIZZA TORANOMON」 写真:虎ノ門ヒルズ

2023年後半、グルメ界隈の話題は麻布台ヒルズ・虎ノ門ヒルズのWヒルズで埋め尽くされた。

10月に開業した「虎ノ門ヒルズステーションタワー」は駅前広場「ステーションアトリウム」直結の地下1階にあるフードコート「T-MARKET」が素晴らしい内容。「CRAZY PIZZA TORANOMON」「雅宝ARBOL seiro」などイケてる店で食事をオーダーし、「LAMMAS / ISTINTO」のチーズとワインを楽しんだら「DOLCE TACUBO CAFFE」「赤坂おぎ乃 和甘」の極上スイーツが待っている。お土産に「BEAVER BREAD BROTHERS」のパンを買い、翌朝までおいしい食いしん坊コースが叶ってしまう。

pateknautilus40
「フロリレージュ」の料理   出典:pateknautilus40さん

11月に開業した「麻布台ヒルズ」にはこれから開店を含めると、なんと90店舗以上の飲食店がオープン。「フロリレージュ」「寺子屋すし匠」「天風良 にい留」「富小路やま岸」「aca°」「鮨さいとう」など名だたる店の移転や系列店オープンに話題沸騰。

中目のやっこさん
「ペリカンカフェ」のエビフライサンド   出典:中目のやっこさんさん

カジュアル店でも「麺尊 RAGE」「ピザフォーピース東京」「ペリカンカフェ」など、食いしん坊ゴコロをくすぐる通な店揃いで 、どこで食べようか迷ってしまう。

「麻布台 やま幸鮮魚店」「根津 松本 麻布台」「麻布台 鳥しき」などが入るグルメ感度日本一と噂されるマーケットも来年2月頃開業予定だ。

Hottest spot 2023:じわじわきてる「目黒区東山」・Foodieが大人の遠足「福知山・綾部市」

目黒区東山

「東山無垢」 撮影:佐藤潮

2023年のグルメシーンを盛り上げたのは間違いなく虎ノ門と麻布台のWヒルズがある神谷町界隈なのだが、それ以外だと都内では、中目黒と池尻大橋からそれぞれちょっと距離のある「東山エリア」のお店が熱かった印象。

まずは店名に東山を冠した「東山無垢」。7月オープン。コース1万円台という今どきリーズナブルな日本料理だが内容はしっかり満足のいくもの。

「クイント」のハンバーグ 撮影:溝口智彦

「トレイス」の河島シェフが監修した姉妹店として話題になったのが和のテイストを強めにしたイノベーティブ料理の「クイント」。カリッとした食感の先に口溶けの良い究極とも言える肉のうまみが縦横無尽に広がるハンバーグは絶品!

「La gueule de bois」の白子モンドール 撮影:山田大輔

他にも食べログマガジンで紹介した東山のお店はまだまだある。「自然派ワインに恋して」の連載で昨年12月に紹介した創作料理の「nou」はプレハブの2階という隠れ家的な立地ながら連日賑わう人気店で、系列店の「iro」も同じ東山エリアにオープンして盛況。今年12月に紹介したカジュアルフレンチ「La gueule de bois」はアラカルトOKで使い勝手抜群。

「うどん豊前房」の「冷やしキムチうどん」 撮影:千葉英里

夏季限定で食べられる「冷やしキムチうどん」の名店として紹介した「うどん豊前房」も東山エリアで1998年から愛されている。

「鮨 つぼみ」マグロの握り 撮影:片桐 圭

「鮨 さいとう」の系列店「鮨 つぼみ」も東山エリア。予約困難だった個室が一般開放され、予約が取りやすくなったニュースをいち早くキャッチし10月に紹介した。

福知山・綾部市

IKKO
「田舎の大鵬」   出典:IKKO'S FILMSさん

2023年、全国のFoodieが新たに足繁く通ったエリアと言えば間違いなく京都からプチトリップの「福知山市」と「綾部市」だろう。なぜなら前述の「田舎の大鵬」と「NOMI RESTAURANT」という話題のニューフェイスがこの隣接した市にそれぞれあるのだから。

pateknautilus40
「NOMI RESTAURANT」   出典:pateknautilus40さん

複数名で集まり京都駅からタクシーやバスをチャーターして大人の遠足をするFoodieが増えている。2024年もこの2店舗は引き続き人気になりそうな勢いがある。