京都だからこその凱旋出店

オーナーシェフの手島竜司氏

パリの一つ星レストラン「パージュ」のオーナーシェフ手島竜司氏が、京都市役所近くに、パティスリー「アトリエ パージュ 京都」を7月20日にオープン。手島氏は、パリでレストランのほか、ビストロとパティスリーを運営しているが、そのDNAを受け継いだすっきりとセンスのよい店だ。

センスが光る内装

パリに移り住んで20年、自らのレストランをオープンして10年、その間東京に店を出さないかという話は数多あったそうだが、今ひとつ現実的に考えられなかった。それが、京都に出店という機会を得て、初めて日本への凱旋オープンが実現。

「パリと京都市が姉妹都市であることはもちろん、どちらも古都。歴史の重みを感じながら、自分の作品を発表できることは、またとないお話だと思い、喜んでお受けしました」と手島氏は言う。

ショーケースに並んでいるのはパリから空輸で届くボンボンショコラ(秋からの販売)。焼きたてのフィナンシェ2種(プレーン、ショコラ)、そして8種のジェラート。フィナンシェのカリッ、しっとりとした焼き上がりは、日本で売られているそれとは一線を画す。口中には発酵バターの香りとアーモンドのコクがいっぱいに広がる。なぜフィナンシェだけなのですか?と尋ねると「やはり、得意なものから攻めていくべきだと思いまして」と手島氏。なるほど、焼き菓子の中でも一押しはフィナンシェなのだと納得。確かにこれは今まで食べたことのないおいしさだ。

フィナンシェ 1個250円

ジェラートはショコラコロンビア100%、ショコラフェルテ82%、いちごフロマージュブラン、コーヒー、シトラスココ、オレンジクローヴ、ピスタチオ、ミルクの8種だ。季節に応じて内容も変わっていくそうで楽しみだ。店内にはイートインスペースもあり、こだわりのコーヒー(SPブレンドby北大路焙煎室【ポットサービス】850円)や紅茶と一緒に味わうことも可能で、ゆったりとした時間を過ごすことができる。

ボンボンショコラには、1~21の数字がナンバリングされている。これが何を表すかというと、パリの1区から20区までの数字。それぞれ、シュオ(エルダーフラワーの香りを移し、甘いフローラルな香りのするショコラ)、プラリネノワゼットなどのフレーバーが決まっているのだ。21はなんと、京都とパリを融合させたフレーバーを準備中。ショコラは「アロンディスマン(区)」というシリーズ名で、ボックスで販売予定とのことだ。日本で初めて、ニコラ・ベルジェのクーベルチュールを使用したショコラであるから、ショコラ好きには堪らない。

ジェラート シングルカップ500円、ダブルカップ650円 ダージリンティ(ポットサービス)850円

手島氏にビルの全体像を案内してもらうと、なんと、シェフズテーブルのようなレストランのオープンも視野に入れているそうだ。手島氏が京都に滞在中だけ開く、秘密のスペース。オープンは今年の秋冬になるとのことだが、なんとも楽しみだ。現在真白な壁にも、アーティストが大胆に絵を描く予定があるなど、生まれたばかりの「アトリエパージュ」。まだまだこれから進化を続けていきそうだ。

「いろいろな人に助けられての、パリでの成功や経験を、日本の美食の世界に恩返ししていかねばという気持ちがあります。だからこそ、この空間でできるさまざまなことにトライしていきたいのです」と手島氏は言う。京都から発信するパリの味を楽しみに訪れたい。

※価格は全て税込。

文:小松宏子
撮影:久保田狐庵