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【噂の新店】「Pienezza FUKASAWA」

駒沢オリンピック公園も程近い、閑静な住宅街の一角。緑に恵まれたこの世田谷の地に、昨秋オープンしたイタリアンレストランが「Pienezza FUKASAWA」。南青山の実力店「JINBO MINAMI AOYAMA」の姉妹店だ。本店の神保佳永シェフから店を託されたのは「リストランテ濱崎」で11年にわたり研鑽を積んだ長谷川泰シェフ。2022年からは、神保シェフの片腕として本店のスーシェフを務めてきた逸材だ。

「都心から離れた世田谷という場所でやるからには、この地ならではの特性を持たせたいと思いました」という長谷川シェフが目を向けたのは“世田谷野菜”。都内23区の中でも、練馬区に次ぐ農地面積を誇る世田谷区。江戸時代から江戸(東京)近郊の農村として発展してきた歴史もあり、現在でも地場野菜が多く、地産地消の取り組みも盛んなのだとか。長谷川シェフ曰く「東京のような大都会にあって、産地の近くに店を構えられるのは、とても贅沢なことだと思います」。

それゆえ、近隣の農家には週に2回は足を運んでいるとか。中でも懇意にしているのが上町の「苅部農園」。無農薬で年間60~70種類もの野菜を栽培する、少量多品目がコンセプトの農家だそうで、日々少しずついろいろな野菜を使いたいレストランにとっては願ってもないスタイルだろう。世田谷野菜は、この苅部農園のほか2軒ほどの農家から仕入れているそうだ。
世田谷生まれの新鮮野菜がたっぷり! 乾杯のお供に最適なシグネチャー「アンティパストミスト」

その朝採れ野菜をふんだんに楽しめるのが、同店のシグネチャーメニューでもある「アンティパストミスト」。6,600円のランチ、8,800円のディナーのいずれにもコースのスターターとして登場する。直径33cmという特注の大皿に盛り付けられた色とりどりの前菜は全8種類。季節野菜のスープ(写真はかぼちゃ)に秋茄子のグラタン、白身魚(取材時は姫鯛)のカルパッチョ、世田谷野菜のサラダと生ハム等々、一つ一つの量感もあり、何を食べたかがきちんと伝わるボリュームも食いしん坊にはうれしい限り。

さらには、秋茄子のグラタンやサルシッチャ、アランチーニといった温かい料理は、ワンテンポ置いてからアツアツを提供するサービスも気が利いている。おいしく食べてほしい、という長谷川シェフの真摯な思いが伝わってくるようだ。
そしてもう一つ、長谷川シェフ渾身の一品がある。「ピアディーナ」だ。ピアディーナとは、イタリア・ロマーニャ地方のストリートフードで、トルティーヤにも似た薄焼きのパンのこと。生ハムやチーズ、野菜などの具材を挟んで食べる軽食なのだが、長谷川シェフによれば、このピアディーナが故郷・奈良の郷土料理“しきしき”とよく似ているのだとか。

曰く「“しきしき”も、薄焼きクレープのような小麦粉料理。ジャムや餡を巻いて食べる奈良の伝統的なおやつなんです」とのことで、しきしきの生地をピアディーナに見立て、奈良の柿のジャムとペコリーノロマーノチーズ、ルッコラと合わせている。出身地である奈良の文化をさりげなく取り入れつつ、素材を活かしたシンプルでイタリアらしい料理を、と考える長谷川シェフの思いを見事に反映した佳品といえよう。
手打ちと乾麺の2種類を味わえるのがうれしい「本日のパスタ」
グラスを傾けつつアンティパストを堪能したら、お次はお待ちかねのパスタの出番。手打ちと乾麺の2種類を味わえるのも、パスタが欠かせないイタリアンラバーには願ってもない話では?

取材日は、シチリアの代表的なパスタ“イワシとウイキョウのパスタ”のサンマバージョン。ソテーしたサンマを松の実やレーズン、ウイキョウと合わせ、パン粉に加えてカラスミもかけ、ちょっぴりリッチにしてあるのが長谷川流。隠し味のアンチョビとニンニクオイルの香りにウイキョウの風味が連鎖して、エキゾチックな味わいを醸し出している。麺のゆで加減、具との絡まり具合も申し分ない。

オイル系パスタの次は全粒粉の手打ち麺。グッと重量感のある「牛テールの赤ワイン煮込みのタリアテッレ」だ。

しっかりと煮込まれた牛テールはゼラチン質のうまみと赤ワインのコクが一体化。全粒粉の麺と力強く絡む。
メインの肉では、骨付きのまま焼いた豚肉のうまみを堪能

そしてメインは、魚か肉を選べるスタイルだ。取材時の肉のメインは「骨付き豚肉のアリスタ」。アリスタとはトスカーナ地方の郷土料理でローストポークのこと。豚肉は群馬県のくちどけ加藤ポークを使用。脂肪融点が31.1度と低いため、とろけるような口どけと豊かなうまみが特徴で、通常の豚よりもオレイン酸を多く含んでいる。

このオレイン酸、オリーブオイルにも含まれている不飽和脂肪酸の一つで、コレステロールを抑制し動脈硬化を防いでくれるという有難い働きが期待できるとか。これを多く含む加藤ポークは、ある意味ヘルシーな豚ともいえそうだ。長谷川シェフは、このくちどけ加藤ポークのロースを骨付きの塊のままハーブでマリネした後、じっくりと焼き上げている。

見た目の派手さはなくとも、骨付きで焼けばこそのうまみがじんわりと広がる。ソースは、骨から取ったジュ。手間暇かけたおいしさを、噛み締めるほどに味わいたい。
最後のお楽しみのデザートは3種類。こだわり卵で作る「深沢プリン」、ふわっと軽やかな食感の「ティラミス」、そして「ジャージ牛乳のジェラート」をラインアップしている。デザートは、プラス1,200円で3種盛り合わせも満喫できる。

ワインは、イタリアを中心にフランスワインもそろえてあり、ペアリングは4種類で5,500円。グラスワインは1,500円~。オリジナルのノンアルコールペアリング4,400円もある。
※価格はすべて税込


