〈食べログ3.5以下のうまい店〉

グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、年間100店以上の焼肉店に通う焼肉作家、小関尚紀さんが2025年ブレイクしそうな店として注目する、幡ケ谷のニューカマー焼肉酒場を紹介。

教えてくれた人

小関尚紀
焼肉作家。通称:YAKINIQ。お肉博士1級。MBA(経営学修士)。焼肉店には年間100店舗以上通い、焼き方を研究している。海外渡航60カ国。 焼肉好き伝説の番組 BS朝日『美女と焼肉』(2022年3月終了)の初期レギュラー。著書に『焼肉の達人』(ダイヤモンド社)、『世界一わかりやすい「ゲーム理論」の教科書』(KADOKAWA)、『「即判断」する人は、なぜ成功するのか?』(サンマーク出版)。

上質なホルモンをつまみに飲める大衆焼肉酒場

今回は「焼肉たぬき」

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

木造民家のような鎧張りの外壁が目を引く店構え
 

小関さん

YAKINIQ(私)は以前、幡ケ谷の住人でした。街の雰囲気が好きで今でも定期的に訪問しており、たまたま六号通り商店街で発見したのが「焼肉たぬき」でした。焼肉店とは思えないカジュアルな外観で、吸い込まれるように入店。カジュアルな雰囲気なのに肉質は良く(特に内臓)、大衆店とは思えないクオリティ。本格派だなと思いました。幡ヶ谷焼肉の超新星、現る……。

京王線幡ケ谷駅南口から徒歩約2分。甲州街道を初台方面に進み、1本入った六号通り商店街に、小関さんが「食通が占う、2025流行る店」で〈2025年にブレイクしそうな飲食店〉にピックアップし、注目している「焼肉たぬき」がある。2024年10月オープンの新店ながら、食べログの点数は2025年2月の時点で3.36、質の高いホルモンや正肉を居酒屋感覚で気軽に味わえる“大衆焼肉酒場”として、着々とファンを増やしている。

店内はコンクリート打ちっぱなしの壁やトタンの天井など、古いビルの趣を活かしつつ、キレイな木製のテーブルと椅子が並び、カジュアル居酒屋のような雰囲気。席はテーブル9卓の全36席
 

小関さん

何といっても入店のしやすさが魅力で、幡ケ谷駅からも徒歩3分と近い!「焼肉酒場」「焼肉居酒屋」「居酒屋焼肉」など、今年流行しそうなキーワードが当てはまる焼肉店です。お酒のメニューも豊富で、居酒屋感覚で使えるお店。

店主の田中隆太さんは、居酒屋や高級和食店など、さまざまな飲食店勤務を経て、東京・六本木の高級焼肉店「みやび 六本木店」の創立メンバーとして焼肉業界入り。2年間ホールスタッフとして働く中で、肉を切る役目も担うように。
その後、自身がホルモン好きだったことから、系列店でホルモンメインの大衆焼肉店に移動。さらに「質のいい肉を、自分がよりおいしいと思う形で提供したい」と新たにスタートを切り、2024年10月、同じ場所で「焼肉たぬき」のオープンに至った。

店主の田中隆太さん

終始穏やかなトーンで話す田中さんだが、もともと料理が趣味で健康オタクだったということもあり、食への探究心が強くアグレッシブ。
3年ほど前から休日には1日3軒の焼肉店を巡り、勉強を続けてきたという。中でも、素晴らしい味わいながら老夫婦の経営で後継者がいない店には、片道2時間半かかる遠方まで何度も通い、タレのレシピを教わったことも。
「この味は絶対に残しておきたいと思ったので。最初はヒントだけもらって自分で作り、試食してもらってを半年ほど繰り返し教えてもらった感じです」(田中さん)
そんな努力の成果もあり「焼肉たぬき」では種類豊富な自家製タレがラインアップし、好評を得ている。

仕入れと仕込みの成果で特に内臓の質はピカイチ

和牛のタンは月1回ほど入荷。−1℃の専用冷蔵庫で数日乾かし、味を凝縮させてから提供する

内臓の仕入れは、東京中央卸売市場から仕入れる新鮮な内臓に定評がある「芝浦嵯峨正造商店」から。
「2年前、コロナ禍で取引枠が空いたタイミングでたまたま縁を持つことができたんです。まだ経験の浅い自分にとっては奇跡的なことでした。おかげで自分好みのいい肉を提供できています」(田中さん)

 

小関さん

このハイクオリティで渋谷区幡ケ谷という立地を考えればリーズナブル。キレイな居酒屋のようなお店で、ハードルも高くなく気軽に入店できます。それでいて、東京中央卸売市場の名門「芝浦嵯峨正造商店」からの内臓を仕入れるというこだわりがあり、もちろん正肉のクオリティも高い! とにかく、まずは内臓を食べてほしいですね。居酒屋利用の人にも焼肉店利用の人にもおすすめです。居酒屋メニューのような「アボカドキムチ」「梅葱サラダ」もいい。

小関さんのイチ推し!「ハツ刺し」からスタート

鮮やかな色と角の立ち具合に新鮮さが一目でわかる「ハツ刺し」900円
 

小関さん

同店のスターターはこの「ハツ刺し」から。新鮮さを物語るエッジの利いたフォルムにサクッとした歯切れの良い歯ごたえ。甘めのタレに浸かったハツに、添えられたネギとカラシをたっぷりめに付けて食べましょう! 内臓の仕入れ力を思う存分味わうことができます。

食べログでも絶賛する口コミが多く、すでに看板商品となりつつあるのが、この「ハツ刺し」。ハツ(心臓)は臭みが少なく淡白な味わいで、ホルモンが得意でない人にも食べやすい部位として知られるが、この弾けるようなサクサク食感はやはり新鮮だからこそ。九州産甘醤油のタレがハツのさっぱりした味にコクとうまみを加えてくれ、カラシとネギがアクセントに。

ピリ辛の「青唐辛子醤油ダレ」150円は、本来ツラミなどに付けることが多いそう
 

小関さん

別注の「青唐辛子醤油ダレ」に付けて味変を。カラシとはまた違うインパクトがあります。

小関さんがおすすめの食べ方として教えてくれたのが、肉のお供のオプションとしてオーダーできるタレを付けるアレンジ。韓国産青唐辛子を素揚げし、熱したタレに漬けてミキサーにかけた「青唐辛子醤油ダレ」は、口に入れるとピリッと強めな刺激を感じるものの、辛さが後を引かずスッと収まる。ハツの味わいも堪能しながら通常のカラシより刺激をアップできるので、辛いもの好きの人はぜひお試しを。