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〈自然派ワインに恋して〉
シェフの料理とマリアージュするのは、自然派ワイン。そんなレストランが増えている。あの店ではどんなおいしい幸せ体験が待っているのだろう。ワインエキスパートの岡本のぞみさんが、自然派ワインに恋して生まれたお店のストーリーをひもといていく。
ナビゲーター

岡本のぞみ
ライター(verb所属)。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、日本地ビール協会認定ビアテイスター/『東京カレンダー』などのフードメディアで執筆するほか、『東京ワインショップガイド』の運営や『男の隠れ家デジタル』の連載「東京の地ビールで乾杯」を担当。身近な街角にある、食とお酒の楽しさを文章で届けている。
仲間とにぎやかに楽しめる人気店の2号店

2024年10月にオープンした東京・千歳船橋「ワインビストロ リコピン」は、経堂にある人気店「ワイン食堂リコピン」の2号店。ワインビストロ リコピンでは、自然派ワインとビストロごはんを軸にテーブル席も用意され、仲間で気軽に盛り上がれるようになっている。

メニューはアラカルトとコースが用意され、いずれもリーズナブル。ほとんどのメイン料理は2,000円台となっている。さらにコース料理は8品の料理と2.5時間の自然派ワイン飲み放題がついて6,500円と破格。それでいて具だくさんやボリュームたっぷりの料理が出されるのだからうれしい。

店長の西見和人さんは東京や地元の福岡などで腕を磨いた後「ワインビストロ リコピン」で現職に就任。もともと西見さんは1号店の「ワイン食堂リコピン」のオーナーシェフとはかつての修業先で先輩・後輩の間柄であったことから、2号店の開店にあたって店を任された。ワインは1号店のソムリエである大林泰生さんがアドバイスし、西見さんが料理に合わせてセレクトしている。
具だくさんサラダ✕道産オレンジワイン

前菜で人気なのが「具だくさんリコピンサラダ」。西見さんが「和食屋さんのサラダに着想を得た」という一皿には、ごろごろした野菜が10種類以上入っている。野菜は日替わりでときには西見さんの実家から届く無農薬野菜が入っていることも。たくさんの野菜の中にはフルーツトマトと季節のフルーツが必ず入っているのがリコピン流。すりおろしたニンジンにトマトソースを合わせたドレッシングで野菜の甘みがしっかり感じられるのが人気の理由だ。

リコピンサラダにおすすめなのは、北海道のオレンジワイン。「多田農園のオレンジワインは、酸がしっかりしていて野菜に合わせやすいですね」と西見さん。フランスのワインよりはミネラル感が少なく、やわらかな口当たりが野菜のおいしさを引き立てていた。
蛸焼きとフムス✕ロゼワイン

リコピンではインパクトのある魚介料理も食べられる。「蛸焼きとフムス」は、フムスの上に蛸を豪快にのせた、素材を活かした一皿。蛸のやわらか煮をイメージして和食の手法を採用。ワインと合うように赤ワインと野菜も蛸と一緒に炊いて、仕上げにクミンで香り付けして周りをカリッと焼き上げている。蛸はやわらかい中に適度に食感が残っていて、そのおいしさがふんわりしたフムスとともにいただける。

蛸焼きとフムスにおすすめなのは、フランス・ラングドック地方のロゼワイン。「こちらは軽いタイプのロゼワインです。蛸にスパイシーさがあるので、同じくスパイシーでミネラル感のある蛸と合わせました」と西見さんが解説してくれた。
仔羊のパイ包み焼き✕濃密スパイシー赤ワイン

メインのおすすめは仔羊を使ったスペシャルな新作。仔羊の背肉のラムラックをバラ肉とロースで分けて、ロースを鶏肉とほうれん草を巻いてパイ包み焼きにし、バラ肉はガリッと焼いたもの。ロースはレアに火を通してジューシーに、バラ肉は骨の周りのうまみのある部分を香ばしく味わえる絶品メニュー。ソースはバジルを利かせて爽やかに仕上げられている。

こちらに合わせたいのはフランス・ローヌ地方のシラーを使った赤ワイン。「仔羊にはローヌの赤ワインが定番です。濃密さがあるので、よく合います」と西見さん。コショウのスパイシーさもある風味が仔羊のパイ包み焼きを引き立てていた。
西見さんの「私が恋した自然派ワイン」

西見さんが恋したワインは、自然派ワインのおいしさを再発見させてくれた一本。
「こちらは10年くらい前に出会ったワインです。当時から自然派ワインは飲んでいましたが、不安定なものも多かったですね。でも、なんとなくそれで過ごしてきましたけど、パタポンを飲んで素直においしいと思えて、“やっぱり、ワインはこうでなくちゃ”と再認識させてくれました。お店でも出しているので、ぜひ味わってみてください」
フランスワインや日本ワインをラインアップ

ワインビストロ リコピンではフランスワインを中心にスペインや日本のワインなどが用意されている。個性が強めなワインというより、ビストロ料理に合うワインが中心。ボトルワインは30種類(4,900〜15,000円)用意されているが、そのほかにグラスワイン8種類(680〜1,250円)とデキャンタワイン5種類(2,800〜2,980円)もある。グラスワインとデキャンタワインは、バッグインボックスのリーズナブルなものが提供され、財布を気にせず自然派ワインが楽しめるのがうれしいところだ。
気のおけない仲間とビストロ料理を楽しむ

ワインビストロ リコピンは、野菜たっぷりのサラダやインパクトのある魚介料理、手の込んだスペシャルメニューなどがあり、どれもお腹いっぱい食べてほしいという気持ちが感じられる内容だった。コース料理も自家製シャルキュトリや豚肉のローストなど満足度の高いメニューが登場する。近くに住んでいたら、気のおけない友達を誘って訪れたくなる一軒だ。
※価格はすべて税込み
取材・文:岡本のぞみ(verb)
撮影:山田大輔