新型コロナウイルスによって大打撃を受けた2020年、2021年の外食業界。2022年は徐々に回復の兆しを見せ、外食する喜び、仲間との楽しい時間を噛みしめた人も多いのでは。グルメ雑誌でもこぞって酒場特集が組まれるなど、お酒も楽しめる空気が戻ってきた。

外食機会の増えた2022年、グルメ界隈で生まれたヒットの数々を記事本数や店舗数などを参考に、独断と偏見でランキング形式にてご紹介!

2022年 トレンドグルメ

10位:Instagramで盛り上がる「リールグルメ」

写真:グルメな旅人Mさん

Instagramのリール(短尺動画)利用者が急激に伸びたことでグルメ動画を撮影する人が急増した2022年。お店への集客にも大きな影響を与え、シズル感あふれるムービージェニックなメニューのあるお店に人が集まった。「泳ぐ稚鮎」「炭の煙があがる土鍋ご飯」「雪のように降る白トリュフ」など、おいしそうな動画にグルメ心を刺激された人も多いのでは?

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「アン ファス」のお料理   出典:palogさん

その影響で今年オープンではなくても、リールをきっかけに人気にますます火がつくお店も。特にボリュームたっぷりのビストロ料理「アン ファス」や「TROMPETTE」などはさらに予約困難店に。

食べログマガジンでもグルメインスタグラマーとのコラボ企画「最高のインスタグルメ」をスタート。Instagram発信のグルメブームは今後も加速しそうだ。

9位:人気集中!「サラブレッド系寿司」

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「寿司健」の握り   出典:サプレマシーさん

名だたる名店、人気店からの独立やのれん分けが多かったのが寿司業界。4月に銀座に開店した「寿司健」は「鮨あらい」「鮨龍次郎」「すが弥」といった今をときめく大人気店で修行した渡辺健氏のお店。銀座のど真ん中でピンのネタと大将の軽快なトークが楽しめるとあってオープン時から予約困難に。

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「鮨美幸」の握り   出典:buskaさん

移転した「鮨はしもと」の二番手だった紺野隆氏が新富町の跡地を任されているのが「鮨美幸」。確かな技術と反比例した良心的な価格設定で6月のオープン以降リピート客が絶えない。同じく移転の「くろ﨑」跡地を継いだのは個室を担当していた仲野雄太氏。店名を「仲野」に改め渋谷にオープンした。

乃木坂の「鮨 山口」は山口康広氏が青山の名店「匠 進吾」から独立。12月には「鮨あらい」から独立した「鮨 よね山」が新橋に登場し早くも話題だ。

8位:絶景もごちそう「ヌン活」

「DINING & BAR TABLE 9 TOKYO」の冬のアフタヌーンティー スイーツコース「Pure White Sweets Fromage」 写真:お店から

SNSの影響で火がついたのが「アフタヌーンティー」。ホテルのラウンジなどで昔からある形式だが、華やかなプティフール(小さな甘いお菓子)やセイボリー(塩味のある食べ物)がたくさんのるスタイルが写真や動画に映えるとあって、SNSに載せるために訪れる人が急増。いつしか「アフタヌーンティー」を楽しむことが「ヌン活」と呼ばれるようになった。

それに伴い提供側も和風や中華風などジャンルを変えたものや、セイボリー多めでお酒を楽しむもの、人気ブランドとのコラボレーションなどオリジナリティあふれるメニューが充実。お料理だけではなく店内の雰囲気や景色も重視され、フォーシーズンズホテル東京大手町「THE LOUNGE」やザ・リッツ・カールトン東京 「ザ・ロビーラウンジ」、品川プリンスホテルの「DINING & BAR TABLE 9 TOKYO」など高層階にあるお店は連日満席。

7位:優越感に浸る「紹介制・会員制」

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「No Code」のお料理   出典:sakura007さん

今年は紹介制や会員制のお店が何かと話題だった。何でも簡単に手に入る時代だからこそ、訪問ハードルの高い、制限があるお店に惹かれるのかもしれない。

様々なコラボでも引っ張りだこの人気シェフ、米澤文雄シェフが「The Burn」を卒業した後、オープンした自身のお店「No Code」は西麻布にある紹介制レストランでなかなか予約できないとフーディたちが熱視線。株式会社アイランズが展開する「新進気鋭」「他言無用」「自由奔放」など印象的なネーミングの会員制焼肉店や焼鳥店も人気を集めた。「土鍋入り魯肉飯」がSNSで話題の中華料理「好好」は名物店主のいる紹介制のお店。他にも住所非公開で紹介制のイタリアンやクラウドファンディング系のお店など、多数のお店が人気を集めた。

6位:ハイクオリティな「レストランベーカリー」

「MONICA」のパン
「MONICA」のパン   写真:お店から

2022年はレストランが手がけるグルメベーカリーも豊作。表参道「MONICA」は「ラチュレ」が今年7月にオープン、営業時間は金曜・土曜・日曜・月曜の内の3日間で売り切れ次第終了と狭き門ながら、クオリティの高いパンの虜になる人続出。

神泉にある「PANEVIA」は「チニャーレ・エノテカ」がプロデュース。オープンは2021年だが「フランツ」が手がける白金の「ブーランジェリー フランツ」も人気。

レストランにとっては新たな売り上げに、消費者にとっては憧れのレストランの味を気軽に味わえるハッピーな構図。この流れは2023年も続きそう。

5位:トークもスパイス「ライブレストラン」

日本料理の「銀座しのはら」、イノべーティブの西麻布「蒼」、フレンチの銀座「大石」など大将やシェフの巧みなトークとオープンキッチンのライブ感を楽しむスタイルが近年支持を集めている。撮影OKのお店も多いので、動きのある臨場感あふれる動画が撮れるのもグルメインスタグラマーには人気だ。

「銀座きた川」の店内 撮影:中込涼(UP SPICE)

2022年にもそのスタイルを踏襲するお店が新規オープン。「銀座しのはら」の弟子たちによる「銀座きた川」は、オープンに際し「大石」でも修行したというライブレストランのサラブレッド。若いメンバーの勢いを感じる次世代の日本料理だ。

「いんぼすこ」のカウンター 撮影:大鶴倫宣(UP SPICE)

神宮前の「いんぼすこ」もキッチンを見渡す8席だけの贅沢な空間で、既に予約困難店となっている。神田の「naoto.K」は元「ランベリー」の岸本直人シェフが新天地でオープンしたフレンチレストランでベテランシェフの安定感ある料理が光る。

4位:少数精鋭「静岡グルメ」

「勢麟」長谷部 敦成氏 撮影:鈴木拓也

今、Foodieが美食を求めて向かうのは京都でも金沢でも福岡でもなく、静岡だ。天ぷらの「成生」、うなぎの「」「」、日本料理の「温石」「勢麟」「日本料理FUJI 」、イノべーティブの「シンプルズ」など有名店が粒揃い。

これらのお店の多くで使用するのが焼津で創業60年の老舗魚屋「サスエ前田魚店」の魚。今年6月にオープンしたフレンチの「馳走西健一」の西健一シェフはサスエ前田魚店の魚に惚れ込み、サスエ前田魚店から徒歩5分の場所へ広島から移転した。

12月には超予約困難店「勢麟」が「麟」に続く3店舗目として「焼き鳥 幸羽」をオープンし話題となっている。「瞬」は来年いっぱいお店をクローズして日本料理の修行に入るという。ますます静岡グルメの進化から目が離せなくなりそうだ。

3位:巨匠が輝く「中国料理」

「港式料理 鴻禧」のトミーシェフ 撮影:大鶴倫宣(UP SPICE)

2022年のグルメシーンでハイレベルな店が多く開店したのが「中国料理」。中国料理の重鎮、高瀬健一シェフの独立店「Ino Cantonese 日本橋 たかせ」、熱烈なファンを持つトミーシェフが腕を振るう虎ノ門の「港式料理 鴻禧」、オープンした年にミシュラン一つ星に輝いた安達一平シェフの「一平飯店」など豪快なラインアップだ。

「一平飯店」の安達一平シェフ 撮影:佐藤潮

香港料理も熱い。12月には2月末に閉店の「家全七福酒家 丸ビル店」が 「第一ホテル東京」の2階に「家全七福酒家 東京新橋店」として再開。2023年には中国ミシュラン三つ星の「新栄記」が赤坂にオープン予定。中国料理人気はまだまだ続きそう。

2位:そうそう、この味!「骨太フレンチ&イタリアン」

「渡辺料理店」の「和牛ホホ肉の赤ワイン煮込み」 撮影:松園多聞

原点回帰というべき、オーソドックスで骨太なレストランも珠玉のラインアップで登場した。昨年末、大阪から二子玉川に移転した前芝平氏の「前芝料理店」、元「銀座レカン」の料理長、渡邉幸司氏が7月に門前仲町にオープンしたビストロ「渡辺料理店」の“2大料理店”がフレンチ好きを沸かせた。

「シェ・イノ」の「仔羊のパイ包み焼きマリアカラス風」 撮影:溝口智彦

往年のフレンチファンを喜ばせたのが2014年に閉店した「ラミ・デュ・ヴァン・エノ」の復活と「シェ・イノ」へのカリスマシェフ移籍のニュース。ジビエフレンチの巨匠、榎本実氏が西麻布に「ラミ デュ ヴァン エノ エヌ」をオープン。10月に和歌山の一つ星フレンチ「オテル・ド・ヨシノ」の手島純也氏が「シェ・イノ」に移籍。ベテランシェフの古賀純二氏と二人体制になり、新生「シェ・イノ」が誕生した。

「カイユ」の「サカエヤの肉のグリル」 撮影:松村宇洋(UP SPICE)

11月には「ASAHINA Gastronome」出身の安達晃一氏によるマルシェフレンチ「カイユ」が西小山に開店。肉好きなら知らない人はいない肉卸「サカエヤ」の牛肉がアラカルトで食べられる貴重な店だ。

「ピアット ミツ」の「オッソ・ブーコ」 撮影:佐藤潮

イタリアンではコロナ禍に福岡でお店をオープンした岡村光晃氏が東京に戻り「ピアット ミツ」を開店。ベテランシェフのワンオペとあって、ハイレベルな味わい。ダイナミックかつ繊細なイタリア料理はまさにオンリーワン。イタリア料理好きが歓喜したのが用賀にあった「スポルカチョーネ」の復活。明大前にある新店舗は「シェフの家で食べているみたい!」と評判で連日大賑わい。

1位:令和の甘い誘惑「ドーナツ」

看板メニューであり、一番人気の「I’m donut ?」 撮影:三好宣弘(RELATION)

2021年の大ヒット「マリトッツォ」を仕掛けた福岡の「アマムダコタン」が今年もブームを巻き起こした。系列店のドーナツ専門店「I’m donut?」を中目黒に3月オープンするやいなや5月には渋谷店をオープン。どちらも連日長蛇の列で大人気に。その後も数々のドーナツ専門店が各地で開店。

「I’m donut?」の「lemon」 撮影:三好宣弘(RELATION)

また、「I’m donut?」の影響もありクリーム入りドーナツがメジャーになると同スタイルのイタリアの伝統菓子「ボンボローニ」も人気に。新富町のイタリア菓子専門店「Litus(リートゥス)」や永福町のイタリアパンとお菓子のお店「PANIFICIO VIVIANI」などで本格的な「ボンボローニ」を購入する人も。さらに人気は過熱し、ファミリーマートやローソンでも発売されるまでに。

Hottest spot 2022:熱いぜ「麻布十番」

「膳処末富」で薪火を扱う末富信氏 撮影:佐藤潮

2022年のグルメシーンで一番盛り上がったエリアは文句なしに「麻布十番」。三田一丁目には日本料理の「鈴田式」、焼鳥の「薪鳥新神戸」に続き日本料理の「麻布室井」、薪火料理の「膳処末富」がオープン。予約困難なヒット店を次々と生み出す令和の名プロデューサー、末富信氏の躍進が目立った。

麻布十番らしいワインバー「élevé」の「鴨肉のロースト」 撮影:玉川博之(UP SPICE)

他にも食べログマガジンで紹介した麻布十番のお店はまだまだある。ノルディックフレンチの「ACiD brianza」、マグロの仲卸「やま幸」が手がけるそば屋の「蕎庵 三たて」、元「ル・ブルギニオン」ソムリエによるワインバー「élevé」、焼肉店の「KABUN-AZABUJUBAN」、無添加中華の「真皿」、焼鳥とワインを楽しむ「麻布さとり」など、いずれも実力店揃い。超有名ハンバーガー店「アルデバラン」も移転。前述の「一平飯店」とその別業態の「夜香港」、「ピアット ミツ」なども同エリアだ。


また寿司店も続々オープン。銀座の「はっこく」から独立した「東麻布 さいこう」、「麻布十番 秦野よしき」のディフュージョンラインのお店「立喰 鮨となり」は既に人気店に。12月には老舗和食割烹「ぎんざ山路」プロデュースの「寿司海路」もオープン。