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【噂の新店】TACUBO白金台
いち早く薪焼きを取り入れ超人気店となった「TACUBO」の新店は食べたいものを自由に選ぶアラカルトスタイル。イタリアの洞窟レストランをイメージしたスタイリッシュな空間で美味なる時間を堪能できます。
“レストランへ行くこと”を楽しめる店が白金台にオープン!
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もはや日常になってしまった感のある“レストランへ行く”こと。東京には素晴らしい店が多く、ちょっとやそっとではワクワクしなくなってしまいましたが、階段を下りるところから高揚する「TACUBO白金台」が港区白金のプラチナ通りにオープンしました。
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イタリアの洞窟レストランをイメージした店内はアーチ形の天井とテラコッタカラー、中心に存在する24席の大きなテーブルが印象的。テーブル席やカウンターに分ける店が多い中、大きなテーブルを1つにしたのはみんなでワイワイ楽しむ店でありたいという思いから。テーブルの中央にはアーティスティックなドライフラワーが飾られ、さりげなく向かい側を遮る配慮もさすがです。
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カウンター越しの厨房では「TACUBO」の代名詞とも言える薪が炎をあげています。こちらでは炭も導入し、食材によって使い分けているそう。それにしても薪のゆらゆらとした炎はずっと見ていられるほど魅力的です。
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総料理長はオーナーシェフの田窪大祐さんと共に「アロマフレスカ」で修業し、独立後は「フェリチェリーナ」を超人気店にした濵本直希さん。こちらでは下ごしらえを若手が行い、調理は料理長がするピラミッド型ではなく、前菜、パスタ、メインとセクションごとに若手が専任で調理し、濵本さんは総括という立場ですべてを見る言わばチーム制。担当するセクションは定期的に変え、いつでも独立できるように若手育成も兼ねています。若手といっても代官山本店で“TACUBOイズム”を継承し、研鑽を積んだ精鋭ばかり。「TACUBO」の味を守りながら新しいメニュー作りにも取り組んでいます。本日は濵本さんおすすめの4品をご紹介します。
食材をリスペクトしたその日その時間のベストな料理に大興奮!
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前菜からはソテーした芹の根を敷き、同じくソテーした白子にアンチョビバターソースをかけて芹の葉を飾りつけた一皿です。フレッシュな芹は香りも食感も味も群を抜き、噛むとプチッと弾けるミルキーな白子とケッパーの酸味が心地よいソースが一体となれば頬も緩みます。
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前菜は伊藤竣亮さんが担当します。TACUBOイズムの一つである、ツーオーダー(作り置きせずにオーダーが入ってから調理すること)なので、待たせることなく出せるように調理工程のシミュレーションは怠りません。
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千葉・銚子の「一山いけす」から仕入れている蛤とクタクタに煮たブロッコリーを手打ちのオレキエッテに和えた一皿です。イタリア・プーリア州の郷土料理である「チーマディラーパのオレキエッテ」をイメージし、チーマディラーパの代わりにブロッコリーを使っています。
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小粒で可愛らしいオレキエッテは蛤とブロッコリーの出汁を吸い、それだけでも味わい深い。蛤はプックプクの食感で、新鮮なブロッコリーはクタクタになっても濃厚です。「パスタは熱々が一番おいしいので盛り付けに時間をかけないようにしています」と吉田さん。ほぼ調味料を加えず食材からのうまみで作るパスタはいつまでも食べ続けていたくなる優しい味わいです。
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焼きもの担当は菅原瑞希さん。しっかり火を入れたい豚肉や鶏肉は炭で、中心部をレアで仕上げたい牛肉は薪を使うことが多いそう。アラカルトなので常に薪を掴んだ時にゴロゴロッと崩れる良い熾火を、水分のあるオレンジ色の状態にキープしておかなければならず、その管理はなかなか骨が折れるそうです。
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こちらの店は食材にこだわり、スタッフ全員が産地を訪問して生産者の思いを聞き、自分の目と舌でとれたての味や食感を確かめ、どう調理すれば良いかを考えメニューを作っています。本日焼いた肉は脂身が甘く、赤身はさっぱりとした味わいが特徴の、千葉県旭市の椎名牧場「椎名牛」。レアで仕上げる薪料理に最適の牛です。
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「何度も焼いて肉の厚さと焼き時間のデータを取っています。これが一番という厚さと焼き時間をベースにして、最後に火の入り具合を手の感覚で確かめます」と、表面に“おいしいエキス”がうっすらと現れた最高の焼き上がり。程よくサシが入った椎名牛のサーロインは、噛み締めるたびに甘さとうまみが広がります。
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しっかりとしながらもなめらかなテクスチャーに仕上げたプリンは食すと何やらプチプチした食感があります。その正体は通常の2倍ほど入れたバニラビーンズ。カラメルも生地の下に入れるものは甘めに、仕上げにかける“追いカラメル”は苦めにする技を使うなど、やみつき確定のプリンです。
最強コンテンツはイタリア料理のアラカルト×フランスワイン
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「料理、器、空間、サービス、音楽……、そこに存在するすべてのものからなる世界観に魅了されます。だからこだわりのないものは一つもありません」と話すのはオーナーシェフの田窪さん。50坪という広さだからできることは何かを考えていたら大きなダイニングテーブルが閃き、そこから壁と床とテーブルは京都の左官職人の手塗りで、ワインセラーが見えてと、どんどんイメージができあがったそう。食器は裏に「TACUBO」の刻印が入った「KODAMA TOKI」製作のオリジナル。ところどころに混ぜた土の黒い斑点が見られ、しっとりとした手触りが特徴の器はシンプルに素材を活かした料理という「TACUBO」のコンセプトにピッタリです。
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「料理人が作るコース料理にしかできない表現を代官山本店で、白金台ではイタリア料理のアラカルト×フランスワインという今、僕が考える最強コンテンツをそれぞれの店で楽しんでもらいたい」と話す田窪さんと濵本さんとマネージャーの田島隆雄さんは元同僚で、他のスタッフは代官山本店から異動した、“同じ釜の飯を食った仲間”が志を同じくして集結しているのも良い空気感を作っています。高揚感のある空間でおいしい料理とワインを食し、心地よい時間を過ごすことができる、そんな“レストランに行く楽しさ”を味わえる店の誕生は東京のレストランシーンを大きく変えることでしょう。
食べログマガジンで紹介したお店を動画で配信中!
https://www.instagram.com/tabelog/
※価格は税込
※コペルト代3,000円
文:高橋綾子
写真:八木竜馬