〈New Open News〉

毎日、たくさんの新しいお店が登録されている「食べログ」。そんな「食べログ」のデータベースの中でも、オープン早々、高い評価の口コミがあったり、多くの「保存」をされたりしている『注目のお店』を食いしん坊ライターが紹介します。早くもお店に訪問した食べログレビュアーのコメントも掲載!

酉囃子(東京・麻布十番)

辣油は飲み物
手羽先   出典:辣油は飲み物さん

2025年2月、麻布十番駅から徒歩3分ほどの場所に、繊細な仕事が光る絶品焼き鳥を堪能できる「酉囃子」がオープンしました。店主の林 裕太氏は学生時代に焼き鳥チェーン店でのアルバイトで焼き鳥に目覚め、20代に高単価の飲食店のサービスを学ぶため、フレンチレストランやイタリアンレストランにてサービスの基本を習得。より専門的な知識を得るために、ワインバーでソムリエとしてワインを学び、30歳で焼き鳥業界に戻り「焼鳥茜」を開業。神楽坂で2016年にオープンしてから9年間、夫婦二人三脚で営んできた「焼鳥茜」は、多くの美食家たちに愛されてきました。これまで紹介制という形をとり、限られた人に向けて焼き鳥の世界を追求してきましたが、さらに多くの方々にこの文化を届けたいという思いが強くなり、今回名前も新たに移転オープンすることに。「酉」は、酒や酢、醤油など日本の伝統的な食文化を象徴する文字。そこに歌舞伎や能、祭りなど幅広い日本の伝統芸能に用いられ、華やかに盛り上げる「囃子」を組み合わせた「酉囃子」という店名には、世界の方々に焼き鳥の魅力を伝えたいという願いが込められています。

誰よりも美味しい物が好き
ねぎま   出典:誰よりも美味しい物が好きさん

焼き鳥は日本の食文化の中でも特に奥深く、繊細な技術と哲学が詰まった料理。この魅力を世界中の人々に伝えるためには、誰もが公平にアクセスできる形での営業が不可欠だと考えたそう。そのため、これまでのクローズドな形を改め、より多くの方に門戸を開きながらも、焼き鳥の本質を守り続ける新しいスタイルへと進化させる決意をし、今回のオープンに至ったとのことです。

表札のロゴもお洒落 写真:お店から

新店舗は、外国人居住者や観光客が多く、国内外からのゲストを迎えやすい環境が整っている国際的な立地の麻布十番に。世界中の人々に焼き鳥文化を広めるために最適な場所であり、高級飲食店が集まっていて、食に対する意識が高いお客様が多いことから、焼き鳥の新しい価値を提案しやすいと考えたそうです。
また、都心に位置し、交通の利便性が高いため、国内外のゲストが訪れやすいのもこの場所に決めた理由の一つ。
伝統と革新が共存する街である麻布十番は、これまでの紹介制から、より多くの人に開かれたスタイルへと進化するのにふさわしい環境で、新たな挑戦の場としての魅力を備えています。

kevche1
カウンター席では臨場感を楽しめます   出典:kevche1さん

店内は炭火と薪火の熾火を操る職人の技を間近で楽しめるよう、カウンターを中心に設計。焼き場の臨場感や香り、音を五感で感じられる空間になっています。
内装は、木、石、土といった自然素材を活かし、温もりのある上質な雰囲気。日本の美意識を反映し、洗練されたシンプルさの中に奥行きを感じる造りです。また、照明はやわらかく計算された間接照明を採用し、焼き場を際立たせることで、焼き鳥が主役となる空間づくりを実現しています。
伝統的な和の要素を取り入れつつ、現代的なデザインと調和させることで、上質でありながら肩肘張らずに楽しめる空間は、国内外のゲストが心地よく過ごせる設え。
店内のディテールには、日本の食文化や美意識を感じられる工夫を凝らし、ただ食事をするだけでなく、焼き鳥という文化を体験できる場として設計されています。焼き鳥の魅力を最大限に引き出すためにデザインされた空間で、職人の技と火の躍動を感じながら、唯一無二の食体験を楽しめることでしょう。客席は臨場感を味わえる白木のカウンターに8席で、エアカーテンを取り入れているため煙も気になりません。

辣油は飲み物
手羽の瞬間南蛮漬け   出典:辣油は飲み物さん

メニューは乾いた熱を持つ炭火と、水分を含んだ薪火の熾火を使い分け、串ごとに最適な焼き加減を追求した「おまかせコース」13,000円のみ。高原比内地鶏など産地・品種にこだわった鶏肉を使用し、部位ごとの個性を最大限に引き出します。さらに、旬の野菜や特選の食材を組み合わせ、一串ごとに味の奥行きを演出。
単なる焼き鳥の提供ではなく、味の流れや香りの変化を計算し、一皿ごとに驚きと発見を感じられる構成になっているので、前菜から焼き鳥、締めに至るまで、緩急のある展開で楽しめます。
コースは17時~と20時~の2部制で、一斉スタートになります。完全予約制で、予約はOMAKASEから可能。既に予約困難になりつつありますが、毎日2席分は電話予約用に空けていて、毎週月曜に1週間分を受け付けるそうです(受け付けの曜日は変更になる可能性があります)。

辣油は飲み物
親子丼も絶品   出典:辣油は飲み物さん


炭と薪が生み出す香り、焼き上がる音、職人の手さばき、そして焼き鳥の味わいが一体となるライブ感のあるカウンター体験。目の前で仕上げられる一本一本を、五感で堪能できる「酉囃子」だからこその火と素材の調和が生み出す極上のおまかせコースを味わいに訪れてみてはいかがでしょう。

食べログレビュアーのコメント

辣油は飲み物
ねぎま   出典:辣油は飲み物さん

『2025年1月にお伺いした際に頂いたものです。
鳥は高原比内地鶏と愛知鴨に加えて、みやざき地頭鶏、ホロホロ鳥を使用されていました。

笹身の湯引き
付け合せは梅と山葵のソース、薬味は芽葱。山葵の香りと梅の酸味がふんわりと漂い、軽い甘味によって優しい気持ちになる爽快な先付けだ。笹身はしっとりしつつ柔らかい。筋肉の反発感が無い、しっとりした食感の笹身なのでソースの軽やかな味わいと調和する。

葉玉ねぎ
訪問の30分ほど前から遠火でゆっくりと火入れして酢味噌を添えている。食感はトロトロで、葉玉ねぎの最大化された甘味と酢味噌の甘味が合致して感動へと導く!そして、玉ねぎの香りが芳醇に広がる。食材並びに炭という熱源の魅力を伝えてくれる一品だ。

最初にご提案頂いたお酒は日々醸造のフラッグシップモデル【日日】。爽快感と確かな旨味だけでなく、甘味ある酢味噌和えにモダン生酛は実に合う。第4酒造期の【日日】は苦味がやや強めだ。

胸肉のタタキ
提供方法が魅力的で、手前が高原比内地鶏で、奥がみやざき地頭鶏。炭火の後に柔らかな火の薪で火入れを軽めにしつつ薫香を加える仕上げを行っていた。一瞥して脂と繊維質の違いがわかる面白さ!いざ頂いてみると、高原比内地鶏はしっとりした繊維質にスッキリした酸味が広がり脂が滲む。みやざき地頭鶏はみっちりしていて旨味と香りに野趣があり、繊維質もやや強めか。心地良い酸味は良質な鶏胸肉の共通点と感じた。

砂肝の筋の柔らか煮
地鶏の砂肝の筋だけを柔らかく煮ている。ほろほろの食感に仕上げ、砂肝らしい香りも楽しませる。食材のロス無く良い試みだ。味付けも強すぎず味わい深い。

ねぎま
ホロホロ鳥。皮は短くサクっと弾けて、身はしっとりほろっとしているので一体感が高い。串の下の方は皮にむちりとした食感もあり、脂が滲む。上下のパーツで異なる味わいを楽しめる。

手羽先
林親方のスペシャリテ的な調理法で、手羽先をバラして柚子を射込んでいる。むちむち食感と脂の濃密な味わいを楽しめ、これぞ手羽先の魅力!柚子の香りが華やかに漂い魅力的。昨今少し流行っている揚げではなく、焼きの仕事を選択肢、この調理法を選び、コースの冒頭に出す点が粋である。この串を頂いて、やはり素晴らしい職人さんだと実感した。

次の日本酒は山本酒造店の【山本ピュアブラック純米吟醸】。味が濃い辛口タイプで、ラムネ香がある原酒。味わいの方向性的に冷酒でも脂を切りつつ、旨味できっちりと協奏する。

揚げ立て薩摩揚げ
移転前から名物となっていた薩摩揚げ。頂く前から香りが良い。野菜、クミンとチーズ。「新店で出そうかどうか迷った」との談であるが、鳥料理の合間に良いアクセントになるのではないだろうか。また、以前のお店を知るお客さんとの心の交流にもなるはず…と言うのは感傷的に過ぎるか。

あやめ蕪
これも葉玉ねぎと同様にじっくりと焼いている。口に運ぶ際の香りが良く、凝縮されているため内から広がる。いざ頂くと多層的なテクスチャーに踊ろ置く。そして、多層故の味わいの変化が面白く、周辺部のホロトロから中心部の軽いコリッと感に変わってゆく。

砂肝
筋を完全に剥がし取った砂肝。筋は言わずもがな先程の柔らか煮だ。ジャクッとしたタフな食感の後に、繊維がほどけてシャクシャクと気持ち良い食感の中で肉汁がジューシィに溢れ出る。そして、砂肝の香りが広がり、後から中に射込んだぶどう山椒の香りが広がり、山椒の痺れが後味を引き締める。それでいて砂肝のコクが残る点が心ニクい設計だ。

愛知鴨
金柑の皮を噛ませている。鴨肉は柔らかくしっとり、ほろりとほどけてジューシィ。金柑の香りとほのかな甘味が上品に合致して、鴨の脂の甘味を引き立てる。香りは穏やかながら血の香りがじんわり、ふわりと広がる。合鴨でもある程度の香りが無ければ面白みに欠けるものだ。

続いてのお酒は、【上川大雪 純米吟醸酒 彗星】。甘味を上げて鴨&金柑に合わせる。後味は苦味がキリリと広がる。

レバー
秀逸。表面の薄皮は凝縮して軽くぱつりと弾け、周辺部は細かくほろりとほどけつつ、中はとろりとペースト状になっている。そして、藁の薫香が味を盛り上げる。レバーの甘味と血の良い香りを活かす調理法だ。レア方向ではなく火入れしたレバーの魅力を問い直す意欲的な一品である。

手羽の瞬間南蛮漬け
手羽の各パーツを炭の近火で焼いた瞬間南蛮漬け。甘酢の塩梅と野菜のシャキッとした食感に清涼感を感じ、スッキリした味付けの中に鶏の味や香りも活きる。

ハラミ(腹膜)の炙り焼きと小ご飯
ハラミの脂、食感、香ばしさとお米のテクスチャーと甘味の融合が魅力だ。ハラミに食感があるので自然と咀嚼回数が増えて、誰もが口中で味を融合させる設計で考えられている。

続いてのお酒は【根知男山】。新潟らしい五百万石の淡麗感を感じさせ、流れ的に重たくない方向性でチョイスされているのが分かる。究極的に「酒の好み」というものはこだわりすぎるものではなく、「いかに料理と合うか」あるいは「料理の構成に合う味わいか」の方が大切である。

菜の花
藁でじーっくりと焼き上げているので、香りが素晴らしい!薫香とマッチする。軸は燻製の苦味や香ばしさをまといつつジューシィで味わい深い。生と燻製を両方楽しめる調理法で、これは素晴らしい表現だ。完全に、野菜で酒が飲める!しかも日本酒の相性が抜群でマリアージュを感じた。甘味が菜の花の味覚を補足しつつ、苦味が調和し、香ばしさも合う。

もも肉
高原比内地鶏のうわもも。熱源を変えることによる皮と身のコントラストが素晴らしい。口に横溢する肉汁は甘美の一言。火入れによって繊維質がほろりと気持ち良くほどけ自然に一体化する。

つくね、キンカン
キンカンをタレに漬けながら何回もじっくりと焼くことで、街の焼鳥屋さん的なノスタルジックな香りとメイラード反応を生み出し、卵の甘味を引き出して自然に合わせる設計だ。あえて生卵を選ばない選択。つくねも美味しいけれど、提供方法が意識的で素晴らしい。

最後のお酒は【根知男山】の燗酒であった。これは見事!燗酒で甘味を広げつつ五百万石のキリッとした苦味でダレさせない。良いぬる燗の使い方である。

鶏出汁の素麺、香の物
素麺は熊本のゆきやぎ。18秒で茹で上がる素麺で、六本木の会員制の某名店でも使用されている。出汁が秀逸で、鶏のコンソメに鶏節を用いた合わせ出汁。鶏の旨味、ゼラチン質、香りがたっぷりと溶け込み、ネガティブな臭いゼロのスープである。繊細な出汁なので極細素麺が繊細に馴染む。これは、上品に、それでいて強烈な鶏の凝縮感を楽しませてくれる麺料理である。

親子丼
あくまでも鶏を食べさせる親子丼だ。ご飯の量が少なく、鶏の焼き方を串と変えている!親子丼仕様に焼き込んで表面はカリッとしつつ香ばしい。しかも、ツユに薫香が滲んでいる。ツユは鶏ベースのようで、とろりとしたテクスチャーで、ゼラチン質もたっぷりと感じる。甘味も塩味も程良い。葱も香ばしさと甘味を両方持ち、シャキシャキした食感もリズムとなる。全ての構成要素に配慮がある秀逸な親子丼だ。

レアチーズケーキ
柑橘はレモンではなくカラマンシーで、ビスキュイには竹炭を使用されている。乳脂肪分が高くないけれどコクを楽しめるレアチーズケーキ。甘味も軽やか。ビスキュイは細かい竹炭がサクサク食感を加えていて、香ばしい。

以上、デザートまでコースのバランスが実に良いです。
また、完食時点でトータル2時間10分ほどで、テンポも抜群です』(辣油は飲み物さん)

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せせり 高原比内地鶏   出典:Inner_circleさん

『使っている鶏は、高原比内地鶏、淡海地鶏、大作地鶏、ホロホロ鳥など。大作地鶏は、卸が鹿児島県霧島にある「とり肉大作」です。きさ輝地鶏や黒さつま鶏を生産してますね。大作地鶏は、きさ輝地鶏と血統は同じで、ロードアイランドレッドとニューハンプシャーの交配。餌等飼育方法を変えているそうだ。

炭と薪を使い分けています。薪は火持ちの良いならの木等の広葉樹です。

鳩とかジビエも仕入れがあれはやりたいと言ってました。今後どうなるのかも楽しみですね! 』(Inner_circleさん)

※価格は税込。

食べログマガジンで紹介したお店を動画で配信中!
https://www.instagram.com/tabelog/

文:佐藤明日香