〈自然派ワインに恋して〉

シェフの料理とマリアージュするのは、自然派ワイン。そんなレストランが増えている。あの店ではどんなおいしい幸せ体験が待っているのだろう。ワインエキスパートの岡本のぞみさんが、自然派ワインに恋して生まれたお店のストーリーをひもといていく。

ナビゲーター

岡本のぞみ

ライター(verb所属)。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、日本地ビール協会認定ビアテイスター/『東京カレンダー』などのフードメディアで執筆するほか、『東京ワインショップガイド』の運営や『男の隠れ家デジタル』の連載「東京の地ビールで乾杯」を担当。身近な街角にある、食とお酒の楽しさを文章で届けている。

東日本橋の古民家を利用したワインバー&ワインショップ

2階ワインバー内観

2025年7月にオープンした「Enolan」は東日本橋駅からすぐそばの2階建ての古民家を活用した店舗。1階はワインショップと角打ちスペース、2階はワインバーというユニークな構造となっている。2階を訪れてみると、アンティーク調の家具やスタッフ作の油絵が飾られた落ち着いた空間。往年の映画がプロジェクターで投影され、別荘に招かれたようなくつろぎの時間が過ごせそうだ。

店主の菊地修史さん

実はEnolanは、日本橋浜町の人気店「L’Angolo(ランゴロ)」の2号店。店主を務めるのは2つの飲食店のオーナーソムリエである菊地修史さん。ランゴロを人気店にしたオーナー自らがEnolanで腕を振るい、ワインを注いでいる。ここでも自然派ワインが扱われ、ワインショップの200種類のボトルが2階で注文OK。店内提供価格にてリーズナブルに味わうことができる。

黒板には前菜メニューがずらり

黒板にびっしりと書かれたメニューを見ると、ワインを誘う前菜のおつまみメニューが充実。たっぷりのボリューム感と、発酵バターやチーズを使った絶妙な味わいの一皿が揃っている。ランゴロは人気店となり当日予約はむずかしいことも多いが、Enolanならふらりと訪れることができるので、いまのうちにチェックしておきたい。

生ハムの盛り合わせ×ピュアな白ワイン

生ハム(大)と本日のパン、ピクルス、発酵バターの盛り合わせ(1人1,300円、写真は2人前)

Enolanでは、コペルトとして2種類のメニューが用意されている。2人以上で訪れる時にお得なのは「生ハム(大)と本日のパン、ピクルス、発酵バターの盛り合わせ」。運ばれてきた瞬間、そのボリューム感がうれしくなるほど。生ハムは脂がしっかり入ったフランス産のジャンボン・ド・バイヨンヌ、パンは浜町「ブーランジェリー・ジャンゴ」のカンパーニュとバゲット。発酵バターには甘美で濃厚な隠し味が忍ばせてあり、口どけの良い生ハムとパンと一緒に食べると至福の瞬間が訪れる。

マルクス・アルテンブルガー フォム・カルク シャルドネ2023(ボトル6,880円)

生ハムの盛り合わせのコペルトに合わせたいのは、オーストリアのシャルドネ。「シャルドネといっても自然派ワインなのでボディや樽の香りで圧倒するタイプではなく、柑橘の香りがして繊細さがあるタイプです」と菊地さん。果実のピュアなうまみと塩味があり、生ハムと発酵バターをのせたパンをしつこくせずに引き立てていた。

甘海老と発酵バターのブルスケッタ×オレンジワイン

甘海老と発酵バターのブルスケッタ からすみがけ(1P 990円)

Enolanで必食なのは看板メニューの「甘海老と発酵バターのブルスケッタ からすみがけ」。姉妹店のランゴロで大人気の「イクラと発酵バターのブルスケッタ」の最新版ともいえる一皿。こちらはブルスケッタの上に下味をつけたマッシュルームと甘海老をのせ、発酵バターをプラス。さらに自家製のカラスミとカラスミパウダーがのった贅沢なおつまみ。口に運ぼうとすると、甘海老がこぼれそうになるくらいボリュームたっぷりだ。

セイエル ノウメス セレクシオ 3r カルトゥシャ ベルメイ2023(ボトル6,500円)

甘海老と発酵バターのブルスケッタにおすすめなのは、出汁っぽさのあるスペインのオレンジワイン。「甘海老とカラスミにワインを合わせると生臭くなりがちですが、オレンジワインは魚介類にも合います。特に発酵バターがつなぎ役になって、出汁っぽさのあるオレンジワインとの相性は抜群ですね」と菊地さん。カラスミの塩気も利いて、大人の贅沢なマリアージュが口の中で完成した。

牡蠣とゴルゴンゾーラグラタン×赤ワイン

牡蠣とゴルゴンゾーラグラタン(1,800円)
チーズがとろける!

この季節、メインにはあつあつのオーブン料理を食べたくなる。Enolanのオーブン料理は「牡蠣とゴルゴンゾーラグラタン」という、まるでワインと合わせるためといわんばかりの組み合わせがうれしい。掘り出せばごろっと出てくるたくさんの牡蠣とピリッとした辛みのあるゴルゴンゾーラチーズ、そしてチーズがたっぷりからんだホワイトソースが合わさると、これぞ冬の王道という味覚が味わえる。

小布施ワイナリー オーディネール メルロー樽熟成2023(ボトル7,450円)

牡蠣とゴルゴンゾーラのグラタンには、長野のメルローを合わせて。「ゴルゴンゾーラを利かせているので、樽熟成したふくよかな赤ワインがおすすめです。優れたタンニンと果実味のバランスが良く、グラタンによく合います」と菊地さん。あつあつのグラタンの後にしっとりとした赤ワインが落ち着きを与えてくれた。

菊地さんの「私が恋した自然派ワイン」

グッチョーネ マチャド2020(ボトル6,380円)

菊地さんが恋した自然派ワインはイタリア・シチリア州のロゼワイン。

「長く勤めていたシチリア料理店で働いていた時に出会ったワインです。初めて飲んだ時に”これぞナチュール”という体にしみわたるような感覚があり、ロゼワインが大好きになりました。

ベリー系の華やかな香りときれいな酸。溢れる果実が魅力的で満足感が高い味わいです。ロゼ推しの私がイチオシするワインなので、ぜひ体験を共有していただきたいと思います」

カジュアルな価格帯の自然派ワインをラインアップ

Enolanでは、カジュアルな価格帯で楽しめる世界の自然派ワインをラインアップ。ワインの値上がりが著しい海外のワインはできるだけ価格と味わいのバランスが良いワインをセレクトし、イタリアやフランス、ポルトガル、オーストリアなどのワインが用意されている。また、日本ワインが多めに仕入れられているのも特徴だ。グラス10種類(900〜1,300円)、ボトル200種類(5,200〜20,000円)。

ワインショップに立ち寄るのもおすすめ

1Fワインショップ
角打ちスペース

Enolanの1階はワインショップになっており、ワインバー利用時に家飲み用のワインを買って帰るのにも便利。また、隣には角打ちスペースがあり、2階で提供中のグラスワインをチャージ料金なしで飲めるため、待ち合わせや0次会に利用することもできる。ぜひ1階と2階をフルで活用してみてほしい。

外観

Enolanの外観は古民家を改装したモダンでシックな建物だが、中に入ってみると、1階と2階で異色の楽しさがある。ぜひそのおもしろい構造の中を探検してみよう。

※価格は税込


取材・文:岡本のぞみ(verb)
撮影:木村雅章