〈自然派ワインに恋して〉

シェフの料理とマリアージュするのは、自然派ワイン。そんなレストランが増えている。あの店ではどんなおいしい幸せ体験が待っているのだろう。ワインエキスパートの岡本のぞみさんが、自然派ワインに恋して生まれたお店のストーリーをひもといていく。

ナビゲーター

岡本のぞみ

ライター(verb所属)。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、日本地ビール協会認定ビアテイスター/『東京カレンダー』などのフードメディアで執筆するほか、『東京ワインショップガイド』の運営や『男の隠れ家デジタル』の連載「東京の地ビールで乾杯」を担当。身近な街角にある、食とお酒の楽しさを文章で届けている。

“リトルパリ”神楽坂に誕生した、ベトナム料理のスタンディングバー

内観

神楽坂は石畳の路地がパリのモンマルトルに似ていることから“リトルパリ”と呼ばれている。「めくる莊」はフランス領だった歴史を持つ、ベトナム料理と自然派ワインの立ち飲みスペース主体のお店。神楽坂駅の出口すぐ、駅の隣の建物にある。この建物は元々、住宅として使われており、めくる莊は2階が店舗となっている。オープンから1年足らずだが、まるで街のみんなが自然に集まるアパートのような存在になっている。

店主の秋山友樹さんとスタッフの岸田蘭子さん

店主の秋山友樹さんは、2022年から亀戸で「ナチュラルワインと青空 めくる」を経営(2025年7月からは「台湾青空屋台 めくる」としてリニューアル)。神楽坂で現在の物件に巡り合ったことをきっかけに自然派ワインと相性の良いベトナム料理をテーマにした「めくる莊」を開店。「ベトナム料理はフレッシュなハーブを使って甘酸っぱい味付けにしたものが多く、酸のある自然派ワインと相性が良いんです」と秋山さん。

立ち飲みスペースとは雰囲気の異なる個室(個室料1室5,000円)

立ち飲みスペースは大テーブルを囲むスタイルで、メニューは1皿500円から用意されている。自然派ワインやベトナム料理の気さくさに引かれ、ゆるく集まれるような雰囲気になっているのだ。実は同じ2階には個室もあり、こちらは仲間内で集まれる隠れ家のようになっている。テラスルームのような空間もあり、ハイセンスな友人の別荘に訪れたような気分が味わえる。

ミニバインミー×スパークリングワイン

ワインミー(600円)

めくる莊で「とりあえず」注文したい気軽なメニューといえば「ワインミー」。ベトナムのサンドイッチ「バインミー」をワインのアテにアレンジしためくる莊の人気メニューだ。パンは手に持ちやすいサイズを特注し、具材には生ハム、レバーペースト、なますが入っている。フルーティーな甘酢で仕上げられており、ワインを誘う味付けだ。

アモス・バニェレス シン カヴァ チャレッロ(グラス1,000円、ボトル6,000円)

ワインミーに合わせて1杯目に飲みたいのはスペインのスパークリングワイン。「スパークリングワインは、1種類は用意してあるので、最初の一杯におすすめです。よりフレッシュ感が味わえると思います」と秋山さん。ワインミーにはレバーペーストや生ハムも入っているので、好みのワインで気軽に合わせられる。「オレンジワインでも赤ワインでも楽しめます」と教えてくれた。

たことオレンジのカルパッチョ×オレンジワイン

たことオレンジのカルパッチョ(900円)

めくる莊の一品料理はベトナムの調味料を生かした風味豊かな味わいが楽しめる。「たことオレンジのカルパッチョ」は揚げたたこにオレンジを合わせ、ヌクチャムというベトナムの調味料で味付けされたもの。甘み、酸味、辛みがあるヌクチャムが、オレンジのフルーティーさやたこのおいしさを引き立てていた。

シェーデル ブラッディ・マスカット2023(グラス1,550円、ボトル9,200円)

たことオレンジのカルパッチョには、オーストリアのオレンジワインがおすすめ。華やかで複雑な旨みを持つオレンジワインは、揚げたことで味わいに凝縮感が出たタコやオレンジと好相性。素材の味の強さと風味豊かな調味料に負けないオレンジワインだった。

ベトナム焼鳥ロゼワイン

ベトナム焼鳥(500円)

ベトナムには鳥料理がたくさんあり、焼鳥のような料理もある。めくる荘の「ベトナム焼鳥」は、こんがりと焼き目をつけたチキンにレモングラスやオイスターソース、チリソースなどを合わせたタレをからめたもの。レモングラスの清涼感のある香りと甘みと辛みが食欲を刺激する味わいだ。

ラバスコ ロザート ラ・サリータ2022(グラス1,300円、ボトル7,700円)

ベトナム焼鳥に合わせてもらったのは、イタリア・アブルッツォ州のロゼワイン。「こちらのロゼワインは、ベトナム焼鳥の鉄板としておすすめしています。ベトナム焼鳥は辛みもあって強めの味付けなんですが、このロゼワインはそれに負けない強さがあって、いいハーモニーです」と秋山さん。ぜひこの相性の良さを体験してほしい。

秋山さんの「私が恋した自然派ワイン」

ラバスコ ロザート サリータ2022(グラス1,300円、ボトル7,700円)

秋山さんが恋したワインは、ベトナム焼鳥に合わせたラバスコのロゼワイン。

「このロゼワインは飲んだ後、すぐに注文して『あと何ケースありますか?』と聞いたくらいお気に入りのワインです。それまでベトナムの辛みのある鳥料理にベストマッチだと思うワインが見つからなかったんですけど、これを飲んで合わせた瞬間に『これだ!』と思えました」と秋山さん。

サリータはモンテプルチャーノ・ダブルッツォから造られたロゼワイン。唐辛子の産地でもあるアブルッツォ州のワインはジューシーで柔らかなタンニンがあり、辛みのある料理とも相性が良い。めくる荘の焼鳥に合わせて飲んでみてほしい。

ベトナム料理に合うワインをラインアップ

めくる莊ではベトナム料理に合うワインが用意されている。「ベトナム料理がフルーツや発酵調味料、辛みのある調味料を使うので、そうした料理に合ういろいろな自然派ワインを試飲会で選んでいます」と秋山さん。フランスやイタリア、オーストリアなどヨーロッパを中心にワインが揃っていて、ラベルも個性的なものが多い。グラス(8種類)1,000〜1,550円、ボトル(100種類)6,000〜25,000円で、ボトルワインは9,000円までのものが中心となっている。

神楽坂を下りてすぐの心がゆるむ場所

1階の入口には、ベトナムの食品がディスプレイされている
外観

めくる莊の2階は立ち飲みという気安さもあって、いつも心がゆるむような時間が流れているという。大テーブルには知らない人同士でも会話が生まれる効果があり、ここが居場所になっている人も少なくない。ゆるりとした時間を過ごしたいと思ったら、めくる莊を訪れてみよう。

※価格は税込

取材・文:岡本のぞみ(verb)
撮影:山田大輔