〈自然派ワインに恋して〉

シェフの料理とマリアージュするのは、自然派ワイン。そんなレストランが増えている。あの店ではどんなおいしい幸せ体験が待っているのだろう。ワインエキスパートの岡本のぞみさんが、自然派ワインに恋して生まれたお店のストーリーをひもといていく。

ナビゲーター

岡本のぞみ

ライター(verb所属)。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、日本地ビール協会認定ビアテイスター/『東京カレンダー』などのフードメディアで執筆するほか、『東京ワインショップガイド』の運営や『男の隠れ家デジタル』の連載「東京の地ビールで乾杯」を担当。身近な街角にある、食とお酒の楽しさを文章で届けている。

神楽坂の深夜族がくつろぐ溜まり場

内観

2025年8月にオープンした「LAURA(ラウラ)」は、大分出身の山添恭可さんがカウンターに立つ自然派ワインや焼酎が楽しめるバー。店内では大分名物の唐揚げなどの気軽なおつまみが提供されている。オープンして半年ほどだが、神楽坂の深夜族の支持率は高く、連日遅い時間までにぎわいを見せる。

店主の山添恭可さん

店の中心に笑顔を届ける店主の山添恭可さんは常連さんに“きょうかちゃん”と呼ばれ、親しまれている。山添さんは20代のうちに自身の店を持ちたいと、料理人としてイタリアで修業。帰国後は「ドンブラボー」「CRAZY BRAVO」でサービスを担当。当時から人懐っこいもてなしが評判を呼んでいた。

テーブル席

店内には大きめのテーブル席もあり、深夜になってカウンターが満席になると、ここも相席で盛り上がるほど。出版業界の人や近くに住む人など、神楽坂を溜まり場にする大人たちががやがやしながらくつろぐ空間となっている。

クミンシュウマイ×しっかりオレンジワイン

クミンシュウマイ(3ケ 900円)

1品目におすすめなのは看板料理の一つ「クミンシュウマイ」。「自然派ワインに合わせた一品として、パンチの利いたものを作りたくて考えました」と山添さん。実際、具は粗挽き肉だけ。そこへたっぷりのクミンとコショウパウダーを練り込まれており、テーブルに置かれた瞬間にクミンのスパイシーな香りがふわっと立ち込めた。

リゴア&ウィムジー バイフロスト2021(グラス1,700円)

クミンシュウマイに合わせたいのは、カナダのオレンジワイン。「個人的に果実味も渋みもしっかりとしたオレンジワインが好み。久しぶりにヒットしたのがこちらのワインです。華やかな香りがクミンのスパイシーさにとてもよく合っています。トロピカルになりがちなオレンジワインですが、渋みもしっかりしているので肉肉しいシュウマイにぴったりです」とおすすめしてくれた。

大分からあげ×フレッシュロゼワイン

大分からあげ(2 ケ 700円)

もう一つのラウラの看板メニューが山添さんの出身地の大分からあげ。大分からあげは、宇佐流と中津流があるが、ラウラの大分からあげは宇佐をベースにラウラ流に仕上げたもの。「醤油、ニンニク、生姜を漬け込むのは宇佐からあげと同じですが、食べ応えを出したくて特大サイズにしています」と山添さん。実際に見ると半身からあげくらい大きく、1人1個注文する人がほとんどだそう。

 フライエ ケルパー クルトューア ロゼ2021/2022(グラス1,100円)

大分からあげにおすすめなのは、ドイツのロゼワイン。「少しさっぱりしたワインが良いので、フレッシュなロゼワインとどうぞ」と山添さん。大分からあげは、しっかりと味は染み込んでいるが、パリッと薄い衣で上品でジューシーな味わい。ロゼワインの軽いフルーティーさがちょうどいいバランスの組み合わせだった。

キツネ肉うどん×出汁系赤ワイン

キツネ肉うどん(1,100円)

〆として人気なのが、キツネ肉うどん。常連さんの間では“締まらないうどん”と呼ばれている。「〆として注文されますが、出汁や肉の旨味があるので、ワインを誘うようで、もう一杯と頼んでしまう方が多いですね」と山添さんもにっこり。

テスタロンガ ミーリー・マジェンタ2023(グラス1,200円)

そんな“締まらないうどん”にぴったりなのが、南アフリカの赤ワイン。「うま味が強い赤ワインなので、肉や醤油の味がしみた出汁と合わせるイメージです。本当にグイグイいってしまいますよ」と山添さん。冷たい白ワインだと口の中がリセットされてしまうが、うま味の強い赤ワインだと温かなうどんを包み込むようなマリアージュに。心地よくグラスが空になってしまうというわけだ。

山添さんの「私が恋した自然派ワイン」

グラヴネル リボッラ2014(ボトル29,000円)

山添さんの恋したワインはドンブラボーで働いていた頃に出会ったオレンジワイン。

「初めて飲んだときにこんなに濃厚なオレンジワインがあるのかと衝撃を受けました。当時は、サービスをやり始めたばかりでしたがイタリア人のお客様が来店され、イタリア語が話せたため、私がサービスを担当しました。そこですすめたワインがこのグラヴネル。するとボトルで注文してくださって、初めてボトルワインのオーダーを取ったワインにもなりました。

お客様も同じようにしっかりと果実味とタンニンが詰まったオレンジワインが好みだったようで、そのことを伝えてオーダーをいただきました。とても思い出深いワインです」

心地よくきれいな自然派ワインをラインアップ

ラウラではどんなときに飲んでも心地よく飲めるような自然派ワインを提供中。「私自身がきれいなワインが好きなので、飲みにくく濃すぎるようなワインは置いていません」と山添さん。酸味が強すぎるワインなども扱っておらず、素直においしいと思えるうま味や果実味がのったワインが多い。産地にもこだわらず、イタリアやフランス、南アフリカなど各国のワインが提供されている。グラスワイン5〜6種類(1,100〜2,000円)、ボトルワイン150種類(7,000〜30,000円)。

階段を上って、くつろぎのカウンターへ

外観
店は交差点のすぐそば

ラウラがあるのは、神楽坂のメインストリートとは駅を挟んで反対の牛込天神町の交差点のすぐそば。少し落ち着いたエリアに大人の溜まり場がある。気軽なおつまみと若き女将がつくるほんわかした雰囲気を楽しみに階段を上ってみよう。

※価格は税込

文:岡本のぞみ(verb)
撮影:山田大輔