居心地の良い大人の中華店

日本橋たかせ 外観
和の趣を感じさせる落ち着いた店になっている。

老舗や高級店、昔ながらの町中華はあれど、しっとりと落ち着いた雰囲気で中華料理を楽しめる店がそれほど多くない人形町。そこに、広東料理一筋30年の経験を持つ高瀬健一シェフが店をオープンさせた。

しかも、コース料理は9品で13,200円と、近年の高級中華ブームに対してかなり気軽な価格帯。高級食材が中心ではないながらも旬の国産食材を使い、高瀬シェフならではのやさしい広東料理をふんだんに楽しめるメニュー構成だ。

今回は、7・8月のディナーメニューとして予定されている料理の中から、3品を紹介する。

日本の夏を彩る鱧を広東料理に

コクのあるスープと鱧、ミル貝の組み合わせが絶品。自家製ナッツ辣油がアクセント。

料理は、基本的には7月から2カ月ごとに替わる1コースのみ。その他にオプションメニューがあり、「銀座中華たかせ」などで楽しめた、シェフのスペシャリテでもある「伊勢海老のヘルシーマンゴーマヨネーズソース」や、「大フカヒレ尾の金華ハム上湯とろみスープ」などは予約をすれば追加料金で味わうことができる。

しかし、基本のコースで紹介される料理も高瀬シェフらしさ溢れる品ばかり。7・8月のディナーメニューで予定されている「鱧とミル貝と冬瓜 オリジナルナッツ辣油と煎り胡麻ソース」は、この時期ならではの鱧の上品な風味をふんだんに楽しめる一皿だ。鱧の骨を加えた魚出汁はしっかりと煮詰めていて、まるで白湯スープのようだ。その出汁でさっと茹でられた鱧とミル貝はやわらかく、自家製ナッツ辣油のカシューナッツとアーモンドの香ばしさがアクセントになっている。

料理はこの後、「鮎の春巻き」「金糸瓜と夏野菜入りコーンスープ」が続き、次はいよいよ高瀬シェフのスペシャリテとなる。

高瀬シェフのスペシャリテがコースに登場

日本橋たかせ 料理
外はパリッと。中はふんわりの鰻の香り煎り焼きは、高瀬シェフのスペシャリテ。

「鰻の香り煎り焼き 甘醤油ソース」は、オプションでなくとも楽しめる高瀬シェフのスペシャリテだ。

表面をパリッと煎り焼きした鰻は、ふんわりした食感にするため、身は開かずに丸のままの状態で中の骨を丁寧に除いている。そこに、豆鼓(トウチ)入りの甘くした醤油ソースがまろやかな風味を与えているのだが、この豆鼓、ただの豆鼓ではない。

豆鼓は広東料理でよく使われる調味料で、実は日本にも同じようなものがある。それが大徳寺納豆だ。中華の中にも和を融合させていく高瀬シェフは、広東料理に必要な調味料もできる限り日本の食材に置き換えていきたいと、日本人が好む鰻に昔からある大徳寺納豆を組み合わせた。

なお、こちらの料理は今回、夏のコースで提供されているが、秋以降のコースに入っていない場合はオプションで変更できるので安心してほしい。

夏らしい爽やかさのある豚肉のロースト

日本橋たかせ 料理
自家製豆板醤と上湯で作るソースが、豚肉の旨味を引き立ててくれる。

スペシャリテの後に「二種広東野菜のガーリック塩炒め」を挟み、肉料理として提供されたのは、「南の島豚ロース焼き、上湯と豆板醤ソース 苦瓜とトマトの卵炒め添え」。

しっかりした肉質が特徴の宮崎産ブランド肉・南の島豚のロース肉をグリルし、金華ハムで出汁をとった上湯を豆板醤と合わせてソースにしている。シンプルに豚肉の旨味を楽しめる一皿だ。

ソースに使用されている豆板醤は、高瀬シェフのオリジナル。一般的に豆板醤はそら豆で作られるが、同店では大豆をペーストにして使用しているため、豆の旨味が生きた豆板醤となっている。

サービスで、豆板醤のみを単品でいただくと、ほどよく抑えられた辛味と豆の旨味と甘みがじんわりと広がり、豆板醤だけでも食べることができるほどのおいしさだった。