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教えてくれる人

山本憲資
1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、Sumallyを起業、2023年10月末に代表を退任し顧問に就任。食だけでなく、アートやクラシック音楽への造詣も深い。

今年で13回目となる「アジアのベストレストラン50」の授賞式が、3月25日に韓国・ソウルのグランド ハイアット ソウルで開催、本年のベスト50のランキングが発表された。アジア各国から選出された影響力のあるフードジャーナリストやシェフら300人余りからなる「Asia’s 50 Best Restaurants Academy」の評議員の投票により、レストランのランキング、種々のアワード受賞者が選出される。
バンコクの「Gaggan」が頂点に返り咲き、日本からは11店舗がランクイン

シェフの名を冠したバンコクの「Gaggan」は、過去に4度もアジアトップの座を獲得した殿堂入りとも言える名店。2019年に現在の場所に移転し、新たな料理コンセプトを打ち出した。しばらくランキングからは離れていたが、2023年にリストに復帰して以来着実に順位を上げ、今年見事にトップに返り咲いた。
また昨年バンコクのルイ・ヴィトンのショップに併設されるかたちでオープンした「Gaggan at Louis Vuitton(ガガン・アット・ルイ・ヴィトン)」が31位に初登場。ガガンシェフのクリエイティビティとルイ・ヴィトンのラグジュアリーな世界観が見事に融合し、アジアのレストランシーンにおけるバンコクの存在感をさらなる高みにもっていくような立ち位置を確立。同店のパティシエ、デジ・ケウカチャ氏には「アジアのベスト・ペイストリー・シェフ賞」が贈られ、スターティングチームからの層の厚さを感じさせた。
日本勢は国あたりで最多11店舗のランクイン、ただし上位からはランクを落とす
昨年より2軒増え最多の11店舗がランクインした日本からは、昨年のNo.1「SÉZANNE」が4位に。昨年三つ星も獲得した「フォーシーズンズホテル丸の内 東京」のダイニングであるこちらのレストランが、日本のレストランの中では引き続き最高位を獲得した。

続いて都内では「NARISAWA」が12位、「Florilege」が17位、「傳」が22位と、ランキング常連のレストランが続いた。
注目すべきは「Crony」が30位で初のトップ50入りを果たした。さらに小澤一貴オーナーソムリエが「アジアのベスト・ソムリエ賞」とダブルで受賞という快挙。ソムリエがオーナーを務めているお店自体ランキングの中でも珍しいが、小澤さんに関してはクオリティの認知が着実に積み上がり、取るべくして取った賞という印象が強い。Cronyは、近年はアジアのさまざまな都市で著名レストランとのコラボレーションにも注力していて、春田シェフの繊細なエッセンスを重視したメニュー、そしてコースをさらなる高みに仕立てる圧巻で絶妙なワインペアリングが評価された。

先日のドジャースのパーティーへのケータリングでも話題になった鮨のレジェンドともいえる「鮨 さいとう」は33位でトップ50に返り咲き、「茶禅華」が34位にランクイン。
さらに「Maz」が43位、「明寂」が45位とCronyに加えて、初のトップ50入りを果たした。「Maz」は2023年に『World’s 50 Best Restaurants』の1位になったペルーにある「Central」の支店で、ヴィルヒリオ・マルティネスシェフが率いる。日本の食材を活かしつつ、ペルーが世界に誇るシグニチャーメニューを提供。「明寂」では中村英利料理長が、とことん水にこだわり、不必要な要素を削ぎ落として食材の魅力を引き出すシンプルな料理が高い評価を得ている。
東京以外からは、こちらもランキングの常連、大阪の「La Cime」が8位、福岡の「Goh」が36位にランクインした。万博で大阪を訪れて、あわせて「La Cime」に高田シェフの料理を食べにという海外の人も増えそうなので、来年はここからのランクアップにさらに期待。
日本のシーンのレベルの高さの象徴ともいえる高順位への期待感
50位までにランクインした軒数はアジアトップとはいえ、1位・2位を独占しベスト10に4軒が入った昨年に比べると、日本人としては全体の順位が少し物足りない結果だったというのが正直なところだろうか。とはいえ今年の結果も10位以内に2軒、ランキングの20%以上を日本のレストランが占めていることを思うと単純に去年の結果ができすぎていた、とも思えるし、少なくとも今回の結果に全体としては両手をあげて喜ぶ感じではなくなっていることが日本のレストランシーンのレベルの相当な高さを表しているともいえる。
ランキング常連の店も進化を続ける中、牙城を切り崩すハードルも高いが、さらに新しい店が出てくることも期待したい。来年はソウルから離れての開催が噂されている。東京のターンはさていつ回ってくるのだろうか、そちらも楽しみにしながら開催国の発表を待ちたい。
行き来が盛んになり、インターナショナルなレストランシーンの活気も戻ってきた昨年の様相の影響も少なからずある。往来がますます盛んになりそうな2025年、どのような新たな風が吹くのか今から楽しみでもある。また、東京での単独の授賞式は未だ開催されておらず、そちらが実現される日もまた今から楽しみにしている。
受賞店一覧

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文:山本憲資、食べログマガジン編集部