〈秘密の自腹寿司〉

高級寿司の価格は3~5万円が当たり前になり、以前にも増してハードルの高いものに。一方で、最近は高級店のカジュアルラインの立ち食い寿司が人気だったり、昔からの町寿司が見直され始めたりしている。本企画では、食通が行きつけにしている町寿司や普段使いしている立ち食い寿司など、カジュアルな寿司店を紹介してもらう。

教えてくれる人

山本憲資

Sumally Founder&CEO。1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、自ら起業、現在に至る。スマホ収納サービス『サマリーポケット』が好評。食だけでなく、アートやクラシック音楽への造詣も深い。

名店「秦野よしき」のディフュージョンラインが“となり”でスタート

階段を上ると美しい佇まいの表札が客を出迎える

「酸と脂」をテーマにした独創的な寿司でグルメを魅了する「麻布十番 秦野よしき」。その支店となるディフュージョンラインのお店「立喰 鮨となり」が2022年1月にオープンした。立ち食いスタイルで「秦野よしき」仕込みの寿司がサクッと食べられるとして好評だ。

「となり」の名前が表すように「秦野よしき」のすぐ隣、雑式通りに面したビルの2階に店を構えている。おいしいお店が連なるこの街で、高級店の味わいをリーズナブルに堪能できるのが特徴だ。

店舗の造りもスタイリッシュ。ダークな壁に間接照明が仕込まれたカウンターのコントラストが目をひく。タブレット端末が備えてあり、注文からお会計まで、すべてデジタルで完結できる。

予約はLINEから15分前まで受け付け。60分制でスピーディーに寿司を食べたいときにぴったりだ。

洗練された寿司店を演出する檜のカウンター

「おまかせ10貫」は〈並〉6,600円、〈上〉9,900円の2コース(いずれも税込)。特筆すべきは好きな寿司だけを選べる「おこのみ」があることだろう。コースで物足りなかったら「おこのみ」でプラスをしてもよい。コースを頼まずに「おこのみ」だけで楽しむのももちろんOK。

コンセプトは「一貫から感動を」

オーナーであり寿司職人でもある秦野さんは修業時代「あの名店のあの寿司が食べてみたい」と思いを巡らせていた。しかしながら、若手の金銭的な厳しさからなかなか叶うことがなかったそうだ。そんな「あの一貫だけをどうしても食べてみたい」という思いを実現できるようにしたのが「となり」のはじまりだ。

「極端な話、一貫だけつまみに来ていただくだけでもいいんです」とは、「となり」の店主・安藤聖(たかし)さんの談。

さすがに一貫だけの客はこれまでいなかったそうだが……。

「好きな寿司だけを連続して何貫も食べていくお客さんもいらっしゃいます。気楽にお好きなだけ召し上がっていただきたいですね」(安藤さん)

秦野さんの下で6年ほど修業をしたのち店主を任された安藤聖さん

肩ひじ張らずに、本店とはまた違った楽しみ方ができるのが「となり」だが、「秦野よしき」と同じ高いクオリティの寿司を食べられるのが注目ポイントだ。

「仕入れは秦野と一緒に行っています。同じ魚を使うことも多いですね。仕込みも一緒でほとんど変わりません。立ち食いといっても秦野よしき本店と遜色ないおいしさをご提供したいです」。安藤さんはそう言って胸を張る。

 

山本さん

知人のお店の近くで、話題なので寄ってみようとなったのが、最初に「鮨となり」を訪れたきっかけです。

名店と同じ仕入れの寿司をお手頃に食べられる。そんな「となり」の評判はあっという間に広まっていった。