〈秘密の自腹寿司〉

高級寿司の価格は3~5万円が当たり前になり、以前にも増してハードルの高いものに。一方で、最近は高級店のカジュアルラインの立ち食い寿司が人気だったり、昔からの町寿司が見直され始めたりしている。本企画では、食通が行きつけにしている町寿司や普段使いしている立ち食い寿司など、カジュアルな寿司店を紹介してもらう。

今回は、食べロググルメ著名人である山本憲資さんが15年以上通うという寿司店を紹介してもらった。

教えてくれる人

山本憲資

Sumally Founder&CEO。 1981年生まれ。一橋大学商学部でゲーム理論を専攻した後、大手広告代理店の電通に入社。その後、コンデナスト・ジャパン社に転職し、雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。2010年4月に独立し、Sumallyを設立。2020年から軽井沢に拠点を移す。

都心の一等地にありながら、温かな雰囲気で寿司を楽しめる

東京メトロ「表参道」駅B3出口からすぐ近くにある江戸前寿司の店「きどぐち」。国道246号から1本脇道に入った半地下のシチュエーションは、都心の一等地というロケーションにもかかわらず静かで、ちょっとした隠れ家といった趣もある。

 

山本さん

前職の職場からほど近く、もう15年以上前から通っています。

大将の木戸口さんが独立してこの場所で店を始めてから約30年。ネットの地図検索もない時代、お客さんから電話で場所を聞かれた時に、若い職人が一言で説明ができるようにと、地の利の良さにはこだわったという。

店内にはカウンターが二つ。以前は、奥のカウンターはテーブル席だったというが、改装して今の形に。奥のカウンターを任されているのが「きどぐち」開業時から働く職人の三枝さん。「きどぐち」で働く職人さんは、大将の木戸口さんを含めて5人。一番若手の八巻さんも働き始めて21年になる。

「もう家族だよね。ありがたいね。空間の空気って大事じゃないですか。接待に連れてきても、温かい空気で食べられて話ができる。それが一番大事だからね」(木戸口さん)。久しぶりに来たお客さんからも変わってなくて安心すると言われるのだとか。

店主の木戸口さんと職人の八巻さん
 

山本さん

和気あいあいとした職人さんたちの雰囲気、半地下のロケーションも好きです。

「きどぐち」のお客さんには、移住者や、ファッションブランドや航空会社の関係者も多く、創業時から海外のお客さんが多いという。職人の八巻さんは英語が話せるので、細かい要望にも応えられるからだ。「イカが苦手な場合は、白身をご提案したりと、食べられないものは違うものをお出しするようにしていますね」と八巻さん。とはいえ、今は30年前と違って、海外からの客もほとんどのネタを食べられるのだそう。評判は海外の口コミサイトなどでも広がり、ホテルのコンシェルジュからすすめられたと来店する人も。