江戸前の仕事が光るおまかせランチ
山本さん
奇をてらわないシンプルなランチの握りのコースは飽きがくることがなく、僕が圧倒的に1番の回数を食べている寿司のにぎりのおまかせだと思います。良質な素材に丁寧な仕事がされていて、日々に味わう寿司としてとてもいいバランスです。
夜はおまかせで20,000円から。それとは別に、平日限定でお得なランチを実施している。
きどぐちのランチは、2,000円、3,000円、5,000円のおまかせ3種類。3,000円のおまかせは、握り10貫と、巻物、卵、味噌汁という構成になっている。
仕入れは豊洲から、ネタは時期によって変化する。ネタは1貫ずつ提供される。
巻物は3種。やまごぼうと赤身ときゅうり。きゅうりは細く切られ、シャリもふんわり巻かれて丁寧な仕事が光る。
添えられた皮つきのべったらは歯ごたえがあり、食感にアクセントが加わる。
山本さん
終盤に玉子とあわせて供されるべったらも意外とクセになります。
そして、シメで出てくるのが焼き物のにぎり。
山本さん
終盤に、タイミングを見て準備された焼きたてのネタが手渡しで出てきます。旨味が口内に広がります。
海外からの客が多かった「きどぐち」。寿司店で炙りネタが一般的になる前から、焼き物の寿司を出していた。今と比べて生食が海外の人にとっては珍しいものだった時代、火を通したネタなら食べられるという人が結構いたからだ。
皿にのせずに手渡しするのは、焼き物だとネタがシャリからこぼれてしまうという理由のほか、インパクトもある。終盤に印象的な提供の仕方をすることで、その食事の経験が記憶に残るものとなる。
「いくら技術があっても、お客さんが来てこその商売だから。お客さんのニーズに100%応えられるような仕事がしたいね」と木戸口さん。ランチも本来のおまかせは、何度も通ううちに好みのものを覚えて、好みを理解してくれたから、おまかせでお願いするね、というもの。
最近は「コース料理」と同じ意味合いで使われているが、客とお店の信頼関係の積み重ねで「おまかせ」はできあがる。何度も足を運んで、本当の「おまかせ」を出してもらえるようになるのは食通の憧れだ。「きどぐち」でお寿司の楽しみ方を改めて教えてもらった。