ブルゴーニュのワインにこだわったワインバー

港区三田にオープンしたブルゴーニュワインが飲めるワインバー。 写真:お店から

麻布十番駅から歩いて5分ほどの場所にある「élevé」(エルヴェ)。ワイン好きの間で有名な「ル・ブルギニオン」でソムリエとして働いていた松田慧さんがオープンしたこの店は、ブルゴーニュワインにこだわったワインバーだ。シェフを務めるのは、同じく「ル・ブルギニオン」で研鑽を積んだ川面貴昭シェフ。この2人で切り盛りする「élevé」は、ブルゴーニュワインと、フランス料理が堪能できる大人の隠れ家的ワインバーとして早くも注目されている。

大人の隠れ家「élevé」(エルヴェ)

コース料理(13,200円)もあるが、ゲストの多くはアラカルトで料理を選び、それに合ったワインで食事を楽しむ。そのスタイルにならい、今回はアラカルトから前菜とメイン、そして松田さんおすすめのワインを選択してみた。

さっぱりと、爽やかな前菜

鮑がまるごと1個、贅沢にのっているのは、パスタではなく素麺。

前菜は「鮑とレモン素麺 すだち 肝のソース」(2,750円)をチョイス。レモンを練りこんだ素麺のまわりには輪切りにしたすだちがあしらわれ、見た目にも涼しい一皿だ。鮑の貝殻の中には、鮑の肝をオーブンで1時間半から2時間ほど焼いて細かく刻んだものを、バルサミコ酢やエシャロットで和えたソースが入っている。

まずは素麺とすだちであっさりと。すだちが柑橘系でさっぱりしているので、のど越しよく食べやすい。その後、鮑の肝のソースを麺にからませて、鮑と一緒に口に運ぶと、今度は磯の香りのする甘酸っぱいソースがアクセントとなって、食べ応えのある前菜になる。

すだちがたっぷりの、さっぱりとした前菜だ。

この料理に合うワインを松田さんに聞くと「2016 Maranges 1er Cru La Fussiére」(ボトル10,920円)を選んでくれた。ブルゴーニュの若いつくり手のワインは、ミネラル感があって、酸味もあり、爽やかな味。香りも華やかで、鮑の肝のソースとも相性がいい。

紅茶の香りがほんのりついた鴨肉のロースト

添えてある粉末は紅茶のパウダー。お好みで「追い紅茶」をして、味のアクセントに。

メインは「シャラン鴨のロースト 紅茶の香り」(4,510円)をオーダー。質の良さで知られるシャラン鴨肉の胸肉の半身をローストし、皮の部分にダージリンの紅茶パウダーを振りかけて焼く。熱によって紅茶の香りが引き立つだけでなく、シャリシャリした食感も味わえる。

断面も美しいシャラン鴨。ソースをたっぷりつけて食そう。

ソースは、パリパリに焼いた鳥ガラを6時間かけて煮込んだもの。滴り落ちるほどに肉と合わせて贅沢に食したい。最近はソースが少ないフランス料理も多いが、同店は「たっぷりつけて、リッチに食べてもらいたい」というシェフの思いから、ソースは惜しげもなく添えられている。

この料理におすすめのワインは1988年の赤の「Pommard」(ボトル20,810円)。30年以上熟成されたワインは、繊細な優しさと、上品な甘さを兼ね備えた味で、鴨肉の旨味をさらに引き立たせてくれる。2万円のワインは決して安くはないが、88年のブルゴーニュなら、この値段はリーズナブル。ソムリエの松田さんが長い年月をかけて、営々とブルゴーニュのワインを買い求めてきたからこそ、この値段で提供できるのだ。