生地だけでなく、具材にも丹精込めたパン作りを「MONICA」

「MONICA」。“唯一無二”を意味するギリシア神話にちなんだ店名のベーカリーショップが、今年7月22日表参道にオープンした。あのジビエ料理の名店で「The Tabelog Award 2022」Silver 受賞の「ラチュレ」の室田拓人シェフが、隣接するビルの半地下で始めた新機軸だ。

撮影:外山温子

「元々パンが大好きで、学生時代にはパン屋さんでアルバイトをしていたこともあるんですよ(笑)」と室田シェフ。日頃からパンを愛食する中で、常々考えていたのがパンの具。パン生地にはこだわっていてもソーセージなどパンの具材は市販品で済ますパン屋も多い中「もっと具材に力を入れたパンがあってもいいのでは?」と考えたのが、そもそものきっかけだったそう。加えて、レストランで使いきれない端肉や野菜を有効活用する手段としてもうってつけだったことが後押しに。室田シェフ曰く「いわば、サステナブルブレッドです」。

撮影:外山温子

白いレンガの壁に焦茶の扉が上品な温もりを感じさせる店構えに惹かれて中に入れば、棚には、一つ一つ存在感のあるパンが並ぶ。

フィユタージュの層も見事なクロワッサンはきつね色の焼き色も香ばしく、旬のフルーツで彩られた「モニカデニッシュ」はフルーツ自体の質が高く見た目も艶やか。下に忍ばせたクレーム・パティシエールには、カスタードクリームにホワイトチョコレートと生クリームを加えて甘みの余韻に膨らみを持たせるなどケーキを食べたかのような満足感が印象的だ。

いずれも“レストランのパン”としてのクオリティを感じさせるものばかり。中でも、ジビエ料理が自慢の「ラチュレ」の面目躍如たる銘品といえば、ジビエを用いた料理性の高い調理パンだろう。

まるでレストランの一品料理。ジビエを使用した唯一無二の調理パン

「ソーセージパン」

まず目を引くのは、ソーセージが堂々と一本丸ごと鎮座する「ソーセージパン」750円だ。ソーセージはもちろん自家製。それも、猪の肩肉と首肉に豚肉少々を混ぜ合わせた粗挽きの猪ソーセージだ。その噛みごたえのあるソーセージに合わせ「生地もしっかりと歯応えのあるチャバタ生地にしました」と、パン担当のパティシェの橋本さん。

かぶりつけば、プチッと弾ける豚腸から滲み出る肉汁と粗挽きならではの肉肉しさに思わず頰が緩む。ローズマリーの仄かな風味が旨味を引き立て、スパイスを利かせたトマトケチャップはいわば味の中継ぎ役。全体を上手くまとめあげている。

「パテ・ド・カンパーニュバーガー」

また、鴨パテをバンズで挟んだ「パテ・ド・カンパーニュバーガー」850円も、同店ならではの逸品として外せない。鴨胸肉をベースに豚肉と鳥レバーをブレンドして作るパテ・カンは、バンズに合わせて微調整。レバーを減らし、鴨肉と豚肉を増やすことで、より肉感を前面に押し出している。

「レストランの前菜で出す一皿分は充分ありますよ」との室田シェフの言葉通り、厚さにして1cm余りと肉厚カットした鴨パテは食べ応えもたっぷり。一方、バンズは肉の旨味をしっかり受け止められるよう全粒粉と石臼挽きの国産小麦粉で作ったリーンなタイプにするなど、パン生地と具とのバランスの取リ方も見事だ。

「クロック・マダム」

自家製ロースハムに、卵は卵黄にコクのある千葉県豊和養鶏場の「とよんちのたまご」と素材を吟味した「クロック・マダム」950円も、あれば、ぜひ試してみたい味。

小麦粉からしっかりと作るベシャメルソースの滑らかにしてコクのある味わいと、バターや卵をたっぷり用いたリッチなブリオッシュ生地との一体感も上々。食べた感も満点だ。

もちろんスイーツ系のパンも。早めに行ってお目当ての一品を手に入れたい!

「農園野菜のフォカッチャ」
「モンブランデニッシュ」

その他、自家菜園で取れた旬の野菜が満載の「農園野菜のフォカッチャ」650円や特大海老フライを丸ごと一本サンドした「海老フライのヴィエノワ」1,400円、スイーツ系ならば「モンブランデニッシュ」800円、「MONICAデニッシュ」650円など、常時20種ほどのパンが並ぶ。が、量産できぬゆえ売り切れ必至。

「MONICAデニッシュ」

ちなみに営業時間は、レストランのアイドルタイムの15時30分~17時30分のわずか2時間。早めの来店が望ましい。

※価格はすべて税込

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

取材・文:森脇慶子

写真:お店から