中国・上海の人気店が海外初出店「CANTON8/喜粤8号」

中国上海で7年連続ミシュランガイド二つ星に輝く、“世界一リーズナブルな価格で楽しめるミシュラン二つ星レストラン”がこの夏、海外初出店&日本初上陸を果たした。2022年8月17日に東京銀座のコリドー街にグランドオープンした香港料理レストラン「CANTON8/喜粤8号」(以下、カントン・エイト)だ。

本店の“二つ星”クオリティの香港料理を銀座で再現した「カントン・エイト」

中国・上海で創業した「カントン・エイト」は2016年以降7年連続でミシュラン二つ星を獲得しているレストランで、現在は香港料理店の他にも、北京ダック専門店、点心専門店を上海やマカオに展開。「カントン・エイト」は庶民的な価格で本場の香港料理を味わえるとして、中国国内外から人気を博す。今回「本場の香港料理を高級店に行かなくてもリーズナブルに楽しんでほしい」という思いから、日本に初上陸した。

日本初出店となる同店では、上海本店の総料理長・カンケイメイ氏と、ミシュラン三つ星店で総料理長を務めた経験を持ち、グループ全体を統括する総料理長の麦协富(MAK KIP FU)氏が料理を監修。今回残念ながらコロナ禍で来日は叶わなかったが、オンラインを通じて銀座店の料理人たちにレシピや「カントン・エイト」のスピリットを伝授した。

料理長の稲葉恵揚氏(写真中央)
料理長の稲葉恵揚氏(写真中央)   写真:お店から

銀座店で料理長を務めるのは、30年以上にわたり香港料理店で腕を振るい、上海本店での経験も持つ香港人の稲葉恵揚氏。このほか20年以上日本で働く香港人の点心師、焼師が調理場に立つ。

日本産の中華野菜や肉を使った、作り立てのモチモチ点心

同店のモットーの一つが、リーズナブルにおいしい香港料理を提供すること。日本の一般的な飲食店の原価率は約30%と言われているが、同店では原価率約40%をかけ、コストパフォーマンスの高い香港料理で客をもてなす。

写真:お店から

もう一つのこだわりが、作り立ての料理を提供することだ。同店の看板料理の一つの点心は、毎日皮から手作りして注文を受けてから手のべして具材を包むなど、作り置きや冷凍は一切しない。「のばしたて、蒸したてのモチモチ感、食材のフレッシュさを点心で味わってもらいたい」という思いが強く、本店と同じ味わいを実現するために相当な回数の試作と試食を繰り返したという。

「野菜の蒸餃子」

翠玉のような美しい見た目をした「野菜の蒸餃子」は、生地にほうれん草を練り込んでいる。具材は豆苗と椎茸のみだが、椎茸のハツラツとしたうま味とシャキシャキとした食感で青さの残る豆苗のリズムが鮮やかな食後感を残す。

ちなみに同店で使用しているのは、パクチーや青梗菜、空芯菜などの中華野菜に定評がある静岡県・木野とみこさんの野菜だ。

「海老蒸餃子」

本店一番人気の「海老蒸餃子」のえびも国産にこだわり、こちらも「野菜の蒸餃子」同様、生地に白玉粉を入れることでモチモチとした食感に仕上げている。

提供直前に焼き上げるチャーシューや、本店で人気の「悪魔のチャーハン」も見逃せない

焼き上げるのに時間がかかる「釜焼きチャーシュー」も、作りたてに強いこだわりがある。ランチ用のチャーシューは午前に、ディナー用は午後に仕込むのだ。豚1頭から6人分しか取れないテンダーロインを使用したチャーシューは、自家製の窯を使い低温でゆっくりと火入れする。

「釜焼きチャーシュー」

特製のつけダレはキャラメル入りで、焼き上げることでチャーシューの表面に艶やかな照りと朱色を生み出す。舌に触れる皮の脂は官能的で、噛むほどに表面の皮の脂の甘さがじんわりと広がり、かぐわしい八角などのスパイスと豚肉のうま味が混ざり合う。クラシカルなチャーシューであり、バランスの取れた端正な味わいだ。

「豚バラ肉の焼き物」

沖縄産もしくは鹿児島産、福岡産の皮付きの豚バラを使ったチャーシューも見逃せない。醤油をベースにしたオリジナルのタレに漬け込んだ皮付きの豚バラは、皮部分を高温&短時間でカリカリに焼き上げるが、内側は蒸し豚のように白く、しっとりとやわらかい。皮目は薄焼せんべいのようにカリッカリで香ばしく、これだけでお酒が進みそうだ。お好みで砂糖とカラシをつけて味わうことで、豚バラの脂身がスッと体に馴染みやすくなる。今後チャーシューは豚のトロやホホなど、部位も増やして提供していく予定だという。

「悪魔のチャーハン」

上海本店で人気を誇る「魔鬼炒飯」こと「悪魔のチャーハン」も必食だ。メニュー名は、料理を考案した本店総料理長のカン氏が普段から厳しく「悪魔」と呼ばれていることに由来する。そんなカン氏に、中国のグルメライターが「いままで食べたことがないチャーハンが食べたい」とリクエストし生まれたのが「悪魔のチャーハン」。カン氏はその場にあったスパイシーソースやオイスターソース、XO醬などを配合したオリジナルソースと、余っていた食材でチャーハンを作り上げた。

黒い見た目をしたチャーハンは、タイ米を使うことでパラパラに仕上げ、唐辛子入りでほんのりスパイシーな味わい。えび、チャーシュー、卵、ねぎ、パプリカ2種、トーチ、フライドオニオンなど8種類ほどの具材が入っており、多様な食材のハーモニーも楽しい一皿だ。ちなみに秋以降、真っ白な見た目をした「白い天使のチャーハン」も登場予定だという。

アラカルトは9月からスタート予定で、現在は一人3,000円〜のランチコースなどを提供している「カントン・エイト」。銀座店の開店を皮切りに、点心専門店や焼物専門店などセグメント業態を展開する予定もあるということで、今後の動向にも注目したいところだ。

※価格は税込

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

撮影:外山温子

取材・文:中森りほ