食通が見いだした、今月の新店

新しいお店がどんどん出店し、ますますの盛り上がりを見せる飲食業界。「気になる店が多すぎてどこの店に行ったらいいかわからない!」という人も多いのではないでしょうか。

そこで、グルメ情報に精通している方々に、最近訪れた新店に関するアンケートを実施。特に注目している「今月の新店」について教えていただきました。

今回は、フードパブリシストの高橋綾子さんにお答えいただきます。

教えてくれる人

高橋 綾子
フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人生そのものに。その間に培った食のデータと人脈を武器に“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ日々。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。

今月のベストワン

Q. 直近で行った新店の中で、特におすすめしたいお店を教えてください

A. 「白寧」です

写真:お店から

10月1日にオープンしたばかりでプレオープンという状態なのに、すでに完成度の高さがすごい。アミューズの軍鶏出汁に松茸を浮かべたスープから始まった12皿はすべてがスペシャリテレベルなのに、まったく食べ疲れすることがありません。

ボタンエビ 雲丹
ボタンエビ 雲丹   写真:お店から

例えば「ボタンエビ 雲丹」という皿、雲丹とボタンエビの下から出てきたのはなんとヒジキ! 散々イノベーティブ料理も食べてきましたが、ヒジキを使ったフランス料理は初めてです。この意表を突く組み合わせが柑橘や醤油で調和させることで最強のマッチングと思わせるのです。どの皿も至って見た目はシンプルですが、見えないところにどれだけの時間と手間をかけているかは口の中で広がる何層もの味わいが証明します。これらの斬新なアイデアが詰まった料理は最初から最後まで流れるように展開し、五感も大満足!

写真:高橋綾子

シェフは「フロリレージュ」「マルゴット・エ・バッチャーレ」で研鑽を詰んだ林 大さん。時間があれば日本料理店で食べ歩きしているとのことで、和の食材を巧みに使いながら見事にフランス料理に着地させているのが素晴らしい。まだ26歳というからどこまで羽ばたくのか楽しみで仕方がありません。それにいつもならフルコースディナーを食べると翌日は1〜2kg増える体重がちょっとだけ減っていたという事実。おいしくて体の負担も少ないなんて、私には欠かせないレストランになりました。

Q. 「白寧」でおすすめしたいメニューを教えてください

A. 「秋刀魚 大根」(24,200円のおまかせコース内)です

秋刀魚 大根 写真:高橋綾子

本当にどの皿も素晴らしかったのですが、中でも秋刀魚を丸ごと茶碗蒸しにしたこの皿は圧巻でした。あまりにおいしくて作り方を聞いてみたら、秋刀魚の頭と骨と身を昆布水と合わせてミキサーで攪拌し、さらに生姜を混ぜてから火にかけ、ゆっくり温度を上げて秋刀魚の旨みと香りを抽出したコンソメスープを作り、溶き卵と合わせて茶碗蒸しの卵液にしているそう。器の底に煮切りの味醂と白味噌で味付けしたちょっぴり甘い肝ソースを敷いて蒸しあげ、上から大根おろしを裏漉しした搾り汁を煮詰めたソースをかけています。仕上げにかいわれ大根の葉を散らし、柑橘の皮を削り香り付けします。見た目に秋刀魚はどこにもいないのですが、食べると本当に秋刀魚の塩焼きと大根おろしを食べているかのよう。感動で心が震えました。

※価格は税込・サービス料別。

※アンケート内容をもとに、料理名・金額を掲載しています。最新の情報はお店にご確認ください。

文:高橋綾子、食べログマガジン編集部