魅せられ、のめり込んだ“切れ味”の世界

“切れ味”という言葉は「刃物が切れる」と「味」という2つの言葉が合わさっている
“切れ味”という言葉は「刃物が切れる」と「味」という2つの言葉が合わさっている   写真:お店から

本田:包丁研ぎは何歳ぐらいからやり始めたの?

遊士丸:始めは遊びからです。川で石と石をすり合わせて、誰が一番鋭くできるかっていう遊びを小さい頃にしてました。そこから何かを研ぐということに、すごくわくわくするものを感じるようになって。中学生ぐらいのときに藤原 将志さん(※)に出会って、刃物の切れ味というものを教えてもらいました。それまではどうやったらこんな風に切れるかとかあんまり考えたこともなかったんです。藤原さんによく切れることと、味がおいしく切れることは違うんだということを丁寧に教えてもらいました。研いで切れるようになると、おいしくなるっていうのがかなり衝撃的で。そこからさらにのめりこみました。

(※)藤原 将志さん:包丁を鉄鋼、砥石、食材の違いなどからさまざまな角度から研究し、研ぎ方と味の違いについて追及。トップシェフ達が教えを請う、日本を代表する研ぎ師。
1984年生まれ、三重県松阪市出身。月山義高刃物店3代目。

包丁などのさまざまな刃物を研ぎ込み、最高の切れ味で素材のおいしさを引き出す
包丁などのさまざまな刃物を研ぎ込み、最高の切れ味で素材のおいしさを引き出す   写真:お店から

本田:普通は藤原さんのことを知らないでしょ。何で知ってたの?

遊士丸:本です。僕らにとっては憧れの人だったんですよ。父は、僕たちが興味があると、いろいろ本を買ってきてくれるんですけど、研ぎの本も10冊ぐらい買ってくれました。大体、同じようなことしか書いてないんですが、藤原さんが書かれた本だけは違っていて、「え?」となって。この人、どんな人なんだろう、すごいなとずっと思ってました。たまたま知り合いが行っていた砥石屋さんが、藤原さんと一緒に商売をされていたんです。その方に包丁のことを尋ねていたら、いい人を紹介してあげると言って紹介していただいたのが、まさしく藤原さんで。あの人に会えるの?みたいな感じでした。

本田:うれしかったんだ。で、藤原さんの講習を受けて。

遊士丸:僕らも講習を受けるまでは、自信満々で結構よく切れるぞと思っていたんです。けど、いざ受けてみると上には上がいて。その上の上もいるようなすごい世界。講習の後、押し掛けのような形で、お正月とか、お店が暇なときに教えてもらいに行きました。帰り際にまた来てもいいですかって言ったら、仕事を手伝ってくれるんだったら、来ていいよって言ってくださって。それから3、4年の間、毎月1回、3人で行くようになりました。朝4時に起きて藤原さんの所まで行って、それから泊まり込みで3日間。仕事を手伝いながら、いろいろ教えてもらいました。藤原さんが他と違うのはきちんと理論があって、こう切ったときにこうなるからおいしいっていうのが、僕らもすっと理解できる。研ぐことにのめりこんで、今に繋がるという感じです。

食材によって刃先の仕上げを変えるという
食材によって刃先の仕上げを変えるという   写真:お店から

本田:そこで切れ味がテーマになってきている。その辺が形になったのって何年前ぐらい?

遊士丸:最初に誰かに料理を出す経験をしたのは中学生ぐらいのときです。近くの神社のお祭りで地域の人たちに料理をふるまいました。そこから両親のカフェを手伝うようになって、さらにレストランで料理を出し始めたのが5年前ぐらいです。

本田:「NOMI RESTAURANT」の前身みたいな感じ?

遊士丸:切れ味を意識しだしたのもその辺からです。2年前ぐらいからコース料理を出すようになって、そうなるとやっぱり表現が大切。それで僕たちができることは何だろうとなったときに、自分たちで獲ってきた福知山にある食材を切れ味と掛け合わせて表現してみようと考えました。藤原さんからは、いくら切れ味が良くても材料が良くなければいけないということを学びました。そこから食材を獲るときにも味というのを意識しています。