本田直之グルメ密談―新時代のシェフたちが語る美食の未来図
食べロググルメ著名人として活躍し、グルメ情報に精通している本田直之さんが注目している「若手シェフ」にインタビューする連載。本田さん自身が店へ赴き、若手シェフの思いや展望を掘り下げていく。連載4回目は京都・福知山「NOMI RESTAURANT(ノーミ レストラン)」の山本遊士丸(ユウシマル)さん(23歳)、陽之進(ヨウノシン)さん(21歳)、凛志郎(リンシロウ)さん(18歳)の三兄弟シェフ。20代と10代という若さながら、3人そろって一流の研ぎ技を持ち、自ら食材を獲ってくるという異色のシェフたち。全国のグルマンたちが衝撃を受けたという唯一無二の“切れ味”をテーマにしたレストランを作った若手シェフたちが描く未来の展望とは?
幼き頃より培われた野生の味への感性
本田:今回は山本三兄弟。ダントツの若手シェフです。まだ「NOMI RESTAURANT」を知らない人たちもいるので、そういう人たちにも知ってもらいたいというところで、詳しく話を聞いていきたいと思います。子どもの頃はどんな感じの生活をしてたの?
山本遊士丸(以下、遊士丸):より自然の深いところに行きたいと福知山の山の中に移住しました。そのときは、僕が小学3年生で、陽之進が1年生、凛志郎が4歳。自然の中で魚を釣ったり、木の実を取ったり、木を取ってきておもちゃを作ったり。そういった中で遊びながら育ちました。
本田:猟はまだしてないと思うけど、山菜なんかを採ったりしてた?
遊士丸:地元の猟師さんからイノシシ獲れたから一緒に捌きに来るかみたいに誘われて、ちょっと捌かせてもらったりしました。おやつがなかったので、川魚を獲ったり、野生のキジをもらって食べたり。
本田:すごいおやつだな。都会のコンビニに行きたいとかなかったの?
遊士丸:あんまりなかったかもしれないですね。そういう都会というか騒音の多いところが、その頃は少し苦手だったので。でも、そば屋さんや焼鳥屋さんとかに、年に数回、連れて行ってもらうのはすごく好きでした。カウンター席からお店の奥で調理をしているのが見えるお店。
本田:料理に興味を持ったのは、子どものときから?
遊士丸:普段から自分たちで獲ってきた山菜や川魚を調理して食べていたんですけど、お店で食べた味と自分たちが作る味は全然違う。せっかく獲ったものをよりおいしく食べられるとうれしいので、最初はそういうところから料理に興味を持つようになりました。
本田:料理は本を読んだりして覚えたの? それともお父さんに教えてもらって?
遊士丸:魚の捌き方とかはYouTubeを見ながら、見よう見まねで。後は、お店に行ったときに聞いてみたりとか。窓ガラスにへばりつくように見ていたら、お店の人も「興味あるの?」みたいな感じで教えてくれました。それから料理の専門書を見て、自分たちでまねて料理したりもしました。
本田:何歳からそんな本読んだりしてるの?
遊士丸:実際に料理本を読みだしたのは、小学校高学年から中学生ぐらいです。
本田:マジで?
遊士丸:毎日、一つずつ何か作って、おいしいかおいしくないかみたいなのをやって。自分たちがおいしいものを作ってみたいっていうところから始めて、少しずつ料理の幅を広げていきました。
本田:それはもう3人とも共通の趣味なんだ。みんなで料理し合ってみたいな。
遊士丸:そのときから、兄弟それぞれ好みがあって。陽之進は卵とか、分量をきっちり量る料理が好きで、凛志郎はご飯を炊くのが好き。僕は炒めたり、焼いたり。その瞬間で料理するのが好きですね。
本田:だんだん3人の好みとか、担当も分かれて、その世界をそれぞれ突き詰めていってる感じなんだ。