伝えたい“切れ味”から生まれる日本の食文化

「人参 切れ味」。ニンジンとは思えない艶やかな表面
「人参 切れ味」。ニンジンとは思えない艶やかな表面   写真:お店から

本田:料理をレベルアップするときに、どういうことやってんの?

遊士丸:本場の職場というか、飲食のトップレベルがどういった場所かを一度見てきてもいいんじゃないかというので、藤原さんに紹介していただいて「恵比寿えんどう」さんに1カ月ほど研修という形で行ってきました。お皿洗いからと思っていたら、せっかく来たなら、誰でもできる仕事じゃなくて、もっと料理を、楽しいところをやりなさいと言って、いろいろさせていただきました。

本田:それは勉強になるよね。

遊士丸:僕らがそこを目指せるかどうかは別として、そういう世界がある、そういう表現の仕方があることを学んで、意識の一つとして持たなきゃと思っています。

本田:リアルなレストランの現場を見ておいたほうが、やっぱプラスになるよね。ただ、そういった経験がないから、逆に面白いことができることもある。彼らがやっていることが正しいと思う必要は全くなくて、こういうやり方もあるということをオプションとして知っておくことはプラスになる。山本三兄弟ならではの哲学はあるはずだからね。

遊士丸:東京に行って、僕たちにできることを意識し始めました。高級店の料理を僕たちの場所でやっても、東京から来ていただく意味は生まれない。トップレベルの仕事を見せていただいた上で、僕たちがするべきことは何かっていうのをすごく考えさせられました。

炊きたてご飯。米は自分たちで栽培。炊く釜も土鍋、鉄釜など季節によって使い分けている
炊きたてご飯。米は自分たちで栽培。炊く釜も土鍋、鉄釜など季節によって使い分けている   写真:お店から

本田:そこでしかできないこと、そこだとできないことがあるしね。両方だよ。他に何か勉強してる?

遊士丸:藤原さんの繋がりで、切れ味を使って料理をされてる方、愛媛県「しの田」の篠田 悠介さんや、同じく愛媛県「くるますし」の高平 康司さんとはいろいろ情報を交換しています。切れ味は新しい切り口だと思うので情報交換しながら、料理について考えています。

本田:他のレストランとかに食べに行ったりしてる? どういうとこに行ってんの?

遊士丸:料理人さんに僕たちのレストランに来ていただくことが多いので、僕たちも神戸の「料理屋 植むら」さんとかに行かせてもらったりしています。表現にこだわっているレストランにはすごく興味があります。

本田:すごいね。その辺のレストランに、その年齢で行っていること自体、ほぼないと思う。でも行ったらすごい勉強になるよ。今、一番学びたいことって、どういうこと? 気になるレストランとか。

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わずか3ミクロンの厚さのカツオ節   出典:ribbon914さん

遊士丸:海外のレストランの表現の仕方にも興味があります。

本田:世界のレストランランキングでOAD(Opinionated About Dining)っていうのがあって、このランキングでヨーロッパ、北米、アジアとエリア別なんだけど、日本だけは日本のランキングになっている。ここでは、俺みたいな、世界中食べ歩いている人間が投票しているのね。リアルに食べ歩いている人たちから見ると、やっぱり日本は別だよねっていう。レベルが高すぎるから。こういうところに「NOMI RESTAURANT」も入ったりしたら面白いんじゃないかな。世界中の人が食べに来る。

遊士丸:僕たちは切れ味というものを英語にできたら面白いなと思っていて。良い刃付けには細かい砥石が必要で、そういった砥石は、今のところ日本でしか産出されない。だから、日本には日本刀や和包丁という刃物の文化が生まれ、その上に日本の食文化があると思うんです。お刺身や寿司とかは切れ味を前提としています。焼肉も日本は肉を薄く切ってやわらかくして食べる。これはやっぱ日本の文化だと思うので、切れ味を通してそういう食文化を表現して、知っていただけたらというのがあります。

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次男、陽之進さんが作る「出汁巻」   出典:eb2002621さん

本田:そもそも包丁のレベルが全然違うからさ。世界中のシェフたちが日本の包丁、取り合いしてるわけじゃん。シェフだけじゃなくて、日本の包丁ってとんでもなく海外で売れている。でも、研いだことで、どんだけ味が変わるっていうことをまだ理解してないのが、世界だと思うんだよね。そこに何かオリジナリティを出したら、非常に面白いよね。そんなこと言ってるやつ、日本でもいないから。世界ではオリジナリティがないレストランはトップになれない。単においしいものは作ろうと思えば作れるし、おいしいってのは感じ方が人によって違うじゃない。誰もやってないオリジナリティを持つことが評価される。特に海外ではね。だから海外のシェフとかが来るようになると面白いんじゃないかな。

遊士丸:刃物と切れ味というのを、藤原さんにいろいろ教えていただいた上で、それを自分たちの中で消化して、ジビエと地元の食材を繋げて、僕たちの切れ味というのを作れたらと思っています。

本田:浜田 岳文(トップフーディで食べログ グルメ著名人の一人)と辻芳樹さんと俺の3人で「Destination Restaurants(デスティネーションレストラン)」というのをジャパンタイムズとやっていて。どういうものかというと、わざわざ行くべき政令指定都市以外の地方のレストランを紹介するガイド。このガイドに載っているレストランもやっぱりオリジナリティがなかったら、皆、わざわざ行かない。そこでしかできない何かっていうのを作っているから、皆、行く。ここら辺りも参考にしたら、何か面白いアイディアとか、こういうふうに振り切っちゃっていいんだみたいなことを感じてもらえるんじゃないかな。まだ20代で伸びしろ、ありまくりだろうから。