江戸前の可能性をさらに堪能させてくれる夜のコース

夜のコースは「上おまかせコース」12,800円、「特上おまかせコース」15,800円、「特選おまかせ握りコース」19,800円の3種に、「個室限定お試しおまかせコース」9,800円と4種を用意。上おまかせでも前菜、焼物、蒸物、デザートなど22品が登場とかなりの食べ応えだ。寿司に合わせた塩分濃度に仕上げたキャビアにとどまらず「世界から集まるおいしい食材を寿司として握っていきたいですね」と伊藤さん。また、客のリクエストに応える形で始めた採算度外視の「うにの食べ比べ」なども用意している。

右から塩水うに、むらさきうに、ばふんうに。風味や口の中での溶け具合などの違いを楽しみたい。19,800円のコースに含まれているが、アラカルトの一品(5,500円)として頼むことも可能

「のどぐろ」は、15,800円のコースからの1貫。この日は島根県から取り寄せた脂のりの良いのどぐろを使用。炙ることで余計な脂を落としつつ、香ばしさを加えた。上品で香り豊かな脂をシャリの酸味がグッと引き立てる。

絶妙に火入れされたのどぐろ。かつての江戸前にはなかった魚介。こののどぐろのように新しい江戸前となるネタを探しているそうだ

いくら、とびっこ、子持ち昆布など寿司ネタになっている魚卵はいくつかある。ならばこちらも行けるのでは!? という発想から生まれた「キャビア」の握り。普通のキャビアは塩分が濃いため、特別に寿司用に塩分を抑えて仕上げてもらったものを使用。

上に金箔をあしらい高級感ある握りに。キャビア独特の風味、コク、食感はシャリや海苔とも相性が良く、早く気軽に食べられる食材になってほしいと願うばかり
 

武智さん

「お客さんの笑顔のために握ってます」と胸を張る大将の意気がうれしいですよね。なので、できればカウンター席に陣取りたい。そしてそんな大将の仕事っぷりも楽しみながら、繰り出される旬の握りと、少し人見知りな伊藤さんとの会話を楽しみたいお店。またいろんな使い方ができるお店ですが、「お寿司をもっと知りたいと思っている若い人たちにこそ来てほしいんです」とも。伝統に縛られすぎない同店で江戸前寿司を覚えることができれば、これからの寿司人生が充実すること必至です。

汎用性が高く、重宝する寿司店

使用するネタは同じ魚体からだが、ランチでは味わえない高級なネタ……キャビア、のどぐろ、クエ、うになどが揃うのが夜のコース(時期により内容は変わる)。コースも前菜に加え焼き魚に蒸し物なども入る豪華な内容で、特別な記念日といったハレの日の利用ならば夜のコースがぴったり。シャリは小ぶりなので、お酒も味わいつつ、前菜や握りから最後の甘味までじっくりと堪能してほしい。

※価格は税込です。

撮影:長尾真志
取材、文:武智新平、食べログマガジン