〈秘密の自腹寿司〉

高級寿司の価格は3~5万円が当たり前になり、以前にも増してハードルの高いものに。一方で、最近は高級店のカジュアルラインの立ち食い寿司が人気だったり、昔からの町寿司が見直されはじめたりしている。本企画では、食通が行きつけにしている町寿司や普段使いしている立ち食い寿司など、カジュアルな寿司店を紹介してもらう。

寿司店が70軒ほどある激戦区・福島に降臨した「鮨 はま岡」

大阪の福島が“寿司屋激戦区”になっているって知っていましたか!? 食べログの地図で検索すると、福島・新福島エリアだけでも居酒屋を含め寿司を出すお店は70軒ほどあると表示されます。

お店の半径10mぐらいの中にも、2~3軒は寿司店があります

その激戦区に敢えて挑み出たのが「鮨 はま岡」。私なら「ライバル多いしやめとこ~!」となるのに、店主の濱岡雄太さんは「ライバル多いしここで勝負したろ~!」と乗り込んだそうです。度胸ありますねえ。

文字のない暖簾。めくれているのではなく「右上がり」です

それが2025年6月のこと。濱岡さんはもともと、天王寺の人気寿司酒場「sushi処まんま」で料理と寿司の腕を鍛え、12年ほど経験を積んだのちに独立しました。

基本的にワンオペ。コース一斉スタートではないので、時間差で料理を出すのが大変!

コース11,000円でMAX20品

驚くのが、おまかせコース11,000円というコスパの良さ。内容は季節やその日の仕入れによって変わりますが、料理が6〜8品程度と握りが10貫前後で、多い時で全20品ほど。

例えば夏~秋のコースをご紹介しますと、最初にもずくのジュレ掛けが登場。

なんとズワイガニが鎮座しています。ウニになる時も

そして私が「これスペシャリテにしたほうが良いですよ!」と勝手に推している「淡路和え」。タマネギをすりおろして弱火で白くなるまで20分ほど炒め、出汁と合わせてミキサーにかけて、濾してトロトロ状態にして……という手間のかかったソースを添えた一皿です。タマネギをいわゆる「飴色」にならない絶妙な火入れで甘みを出しているのが職人技です。

淡路和えが本当に美味! この日は二郎さん(後ほど説明します)の釣ったサワラ。甘めの醤油と合わせていただきます

「後半で『お寿司入らない!』ってならないように、握りとアテを交互に出すのがウチのコースです」とのこと。小食な人もいるんですねえ。私なら何がどれだけ出てきても胃に入りますが。

もちろんガリはお代わりOKです
 

猫田さん

ガリにも一工夫加えており、「鰹と昆布を混ぜ込んだガリ」と「セロリの梅酢ガリ」の2種が供されます! サラダ感覚でついパクパク食べちゃいますね。

シャリは赤と白の2種を使い分け!

福島で店を出したい!とずっと物件を探し、諦めかけていた時にこの建物に奇跡的に出合ったのだそう

驚くことに、握りのシャリは2種を使い分けているんです。白身魚系には白酢、赤身系には赤酢のシャリ。付け台もそれによって分けていて、作家さんが焼いた素敵な唐津焼にのせてくれます。

黒ムツは脂を前面に感じられるように炙りで

握りは仕入れによって変わりますが、高級魚の黒ムツ、白甘鯛も時期には入ります。ハタの中で最もおいしいと言われるチャイロマルハタなんて珍しい魚も。

仙鳳趾の牡蠣は火入れしても縮まないのが特徴

思わず「まっる〜〜!」と間抜けな感想を述べてしまったのは、牡蠣のポン酢ジュレがけ。北海道は仙鳳趾の牡蠣だそうで、驚くほどのぷりぷり感です。臭みも全くなく、クリーミー。とろんぷよんふにゅっといった食感です。

マスタードはクセの少ないタスマニア産。タスマニアってどこかと思ったら、オーストラリアの島なんですね

マグロは宮城の塩釜から。乾燥熟成を経てねっとり濃厚に味が凝縮しています。上にのせるのはワサビではなくマスタード! 確かにツンとしすぎないマイルドな辛みが、赤身肉のようにほのかな酸味のあるマグロとよく合っています。