〈遠くても食べたい味〉
年間の外食は1,500軒以上! 令和のグルメ王、浜崎龍がわざわざ旅をしてでも行く価値があるお店を紹介します。今回は、北海道にある「茶月斎」です。
茶月斎
30歳の若き料理人が挑戦する中国料理

札幌・南3条西8丁目の地下に、今年2月から新たな中華の火が灯っている。「茶月斎」。前店主が現場を離れたことを機に、30歳の若き料理人が店を引き継いだ。
化学調味料に頼らない、丁寧な味わい

北海道・留萌の出身。幼い頃から中華を一から手作りする家庭で育ち、食への興味を抱いて辻調理師専門学校へ進んだ。実習で最も心を掴まれたのが中華だったという。卒業後は大阪の「田中圭英」をはじめ3店舗で経験を重ね、福岡では「巴蜀」で腕を磨いた末に故郷の北海道へ戻ってきた。6席のカウンターを一人で切り盛りし、全11品のコースを11,000円で仕立てる。北海道の食材を主軸に据え、化学調味料には基本的に頼らない。仕入れは大手卸を介さず個人の生産者と直接つながり、丁寧に調達しているという。

コースは栗の渋皮揚げから始まる。シロップで炊いて冷ます工程を5日間繰り返し、芯まで甘さを含ませた一品に山椒の塩を添えて。続く厚岸産の無菌あさりの紹興酒漬けでは、浜名湖産の青のりもまた紹興酒に漬けてソースに仕立てる。北海道の貝の力を中華の技法で引き出した、静かに力のある皿だ。5日間熟成させたソイ、北海道産クワイのシュウマイ、月光百合根の天ぷらに黒酢ソースと続き、土地の食材への誠実さが一皿ごとに伝わってくる。

中でも印象深いのが麻婆豆腐だ。塩と砂糖のみで味を決め、味噌は一切使わない。それでいてしっかりとした奥行きがあり、毎回必ずコースに組み込むというこの一品に、彼の料理人としての矜持を見た。締めはからすみと蝦醤を合わせたそばで、中華の枠を軽やかに超えていく構成も楽しかった。
寿司やフレンチの印象が強い札幌の街の地下で、志のある若い中華がひっそりと息づいていた。



