〈秘密の自腹寿司〉

高級寿司の価格は3~5万円が当たり前になり、以前にも増してハードルの高いものに。一方で、最近は高級店のカジュアルラインの立ち食い寿司が人気だったり、昔からの町寿司が見直され始めたりしている。本企画では、食通が行きつけにしている町寿司や普段使いしている立ち食い寿司など、カジュアルな寿司店を紹介してもらう。

教えてくれる人

武智 新平

1970年生まれ。食雑誌をメインにフリーの編集&ライターとして活動中。食事では寿司、そば、カレー、洋食全般など、お酒は特に日本酒が好きで、仕事でもそれらを担当することが多い。一見でも心地よく、かつリーズナブルに楽しめる店を中心に紹介していきたい。

恵比寿駅からほど近い、隠れ家寿司店

白木のカウンターと個室が大人の雰囲気を演出

恵比寿駅からほど近い、飲食店がいくつも入ったビルの4階。エレベーターを降りると、そこには、ゆったりとした白木のカウンター席が伸び、2〜10名の個室がいくつも並ぶ、“ザ・寿司店”な空間が広がる。

大将の仕事ぶりが目前で楽しめるカウンターは8席。個室は2名、4名、6名、8名、10名〜と5室用意。また個室のみのコースも用意している

しかしながら、ランチはおまかせコース6,800円〜、夜は12,800円〜とちょっとだけ贅沢して自腹で楽しめる店となっている。女性だけでの来店や若いビジネスマンのカジュアルな接待にも利用されているそうだ。

 

武智さん

清潔感と高級感のある空間で価格はお手頃、個室も多い。となれば、ひとりでも家族でも、デートにもカジュアルな接待にもと幅広く利用可能です。しかもグルメ激戦区の恵比寿。その味はもちろんですが、立地や使い勝手の良さも加わって、ぜひスマホに登録しておきたいお店です。

美食都市・東京を意識した伝統と新しさを備えた江戸前

高校を卒業後、地元・千葉の寿司店で職人への道を歩み始めた大将の伊藤さん。その後、築地などの店でさらに腕を磨き、昨年、ここ「鮨 おぎ乃」の店長に。

毎日豊洲に通い、産地にこだわらず、厳選して旬の食材を購入。ササニシキを硬めに炊いたシャリには赤酢を使い、光りものや〆もの、寝かせるといった昔ながらの江戸前の仕事・味に力を入れている。

伊藤佳布(よしのり)さん

昔ながらの江戸前に力を入れつつも、ネタとのバランスを考えシャリをほんの少し甘くしたり、客のヘルシー志向に合わせ塩を控えたり、時代に合わせた握りを心がけている。さらに、世界から美味が集まる東京の寿司という意識もあり、特別な塩分濃度で仕上げてもらったキャビアを軍艦にして提供も。伝統と新しさを意識した江戸前握りを楽しませてくれる。

旨みを引き出しつつ、シャリとの相性を高めるため数日寝かせた白身
 

武智さん

赤酢を使いつつも酸味を抑えたシャリは、白身、光りもの、マグロとどのネタとも相性がよく、食べ飽きすることがありません。価格は少し贅沢かもしれませんが、恵比寿でこの内容を考えるとお手頃。月に一度、自身へのご褒美として通いたいお店です。