扉の隣に描かれているのは、シェフである遠山氏をモチーフにした絵画

〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー! 食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。

点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、まだまだ知られていないとっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回はSumally Founder & CEO、食通として知られる山本憲資さんが、大人が楽しめる洋食店「洋食ビストロTŌYAMA」をご紹介。

教えてくれる人

山本憲資

Sumally Founder&CEO。1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、自ら起業、現在に至る。スマホ収納サービス『サマリーポケット』が好評。食だけでなく、アートやクラシック音楽への造詣も深い。

フレンチのエッセンスを取り入れた、ハイクラスな洋食はアラカルトかコースで楽しむ

西麻布の裏路地に2020年11月にオープンした、「洋食ビストロTŌYAMA」が最近お気に入りだという山本憲資さん。オシャレな外観とミシュランビブグルマンをオープン1年目にして獲得した確かな料理は期待値を裏切らないであろう。食べログの点数は3.12だが、飲食店があまりない場所に存在するからかもしれない。あまりみんなに教えたくない、とっておきの隠れ家のようなお店に、入店前からワクワクする。

※点数は2022年11月時点のものです。

カウンターとテーブル席が2つ。隠れ家的な佇まいはゆっくりと食事を楽しむのにちょうど良い

料理の過程を見て楽しんでもらいたいというコンセプトのもと、ライブ感をダイレクトに演出できるカウンターをメインに内装のデザインをしたという。席数が限られているので前もって電話で問い合わせるか、2~7日前に予約していくことをおすすめする。

 

山本さん

落ち着いて、ガッツリと食べるのも良し! カウンターで軽く飲みながらでも良しと使い勝手が良いところが好きです。

アラカルトは約80種類ほど常時、提供している

アラカルトメニューがずらりと書かれている店の奥にある手書きの看板。旬の物をメインにしたメニューなので、内容が季節ごとに変わり、行くたびに楽しむことができる。見てみると熊本県産の食材を使った料理が多く、コロッケやソテー、グラタンなど洋食の王道料理のほかにラーメンやカレーなどがラインアップしている。

 

山本さん

定番メニューから少し工夫を加えたメニューまで、どれもクオリティが高く、トップレベルの洋食だと思います。

料理は食べるのも作るのも好きで、プライベートでは町中華や和食なども好んでよく行くそう

シェフの遠山氏の出身は熊本県。10代前半の時に、既に料理人として生きていくことを決めて腕を磨いてきた。洋食歴が一番長いが、それ以外の料理の経験もしてきたので、幅広い知見があり、お店のメニューに活かされている。「お酒に合うような料理を基本としています。またお客様の注文する内容によって味付けを微妙に変えていますよ」という仕事ぶりには圧巻。また故郷である熊本のおいしい食材や地酒を仕入れているのも、遠山氏のこだわりの一つだ。

 

山本さん

オーナーが働かれていたという京都の「洋食おがた」も好きなお店で、うかがっていました。こちらもクオリティの高い洋食という印象でとてもおいしかったです。

山本さんがアラカルトでいつも注文する、お酒との相性もGoodな4品

オールシーズン定番人気のオニオングラタンスープ

オーブンで焼きたてがすぐ出てくる。チーズがたっぷりとのっている

できたてが運ばれてくるとグツグツと煮立った状態で湯気が出ている「洋食屋さんのオニオングラタンスープ」(1,300円)は年間を通してとても人気のあるメニューなのだとか。真夏の暑い日にも注文する常連もいるほど。

チーズがとろりとのびて食欲をそそる

チーズの下にはたっぷりの玉ねぎとパンがぎっしりと入っている。一口食べてみると、一般的なオニオングラタンスープよりとても濃厚で、かつ玉ねぎそのものの甘みや風味が壮大に口の中に広がる。そこにチーズのクリーミーさとうまみがたっぷりと詰まったブイヨンのコクが合わさり、食べ応え満点の“食べるスープ”に昇華しているので驚いた。

 

山本さん

熱々の状態が最高! やけどするかも?と思いつつ、毎回熱々のまま食べてしまいます。

このスープについて特徴を聞いたら「ワインに合わせて食べる、ということを念頭に置いて作っているので、やや塩味を強調し具材も大きめにしています」と遠山氏は話してくれた。