〈これが推し麺!〉

ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き! そんな麺類の中から、「これぞ!」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。

今回訪れたのは、グルメライター武智新平さんがおすすめする神保町の「キッチン きらく」。「食べログ ラーメン TOKYO 百名店」にも選出された、自称「Mr.食材ヲタク」の料理人が作る、こだわりが詰まった稲庭中華そばをご紹介。

教えてくれる人

武智 新平

1970年生まれ。食雑誌をメインにフリーの編集&ライターとして活動中。食事では寿司、そば、カレー、洋食全般など、お酒は特に日本酒が好きで、仕事でもそれらを担当することが多い。一見でも心地よく、かつリーズナブルに楽しめる店を中心に紹介していきたい。

百名店選出店の料理人が作る、艶やかな中華そば

もう何年も前のこと。都立家政駅近くにある「食堂七彩」が、まだリニューアル前で「麺や 七彩」として営業していた頃に出合ったのが最初(現在「麺や 七彩」は八丁堀で絶賛営業中)。スープによく絡むもちもち感ある手打ちちぢれ麺を使った喜多方ラーメンを目当てに伺うと、「稲庭うどんを作っている人たちが作った乾麺を使った中華そばもありますよ」と言われ、おいしそうよりも面白そうと頼んでみたのだった。

 

武智さん

全粒粉を練り込んだ中華麺をすすればズズズッではなくシュルルンという感じで、稲庭うどん同様のなめらかなのどごし。飲み込んだ後にふんわり残る小麦の余韻。これおいしい。好きだ。たちまち「稲庭中華そば」のファンになりました。

すずらん通りの裏路地にある、かわいらしい佇まいの店

有名喫茶店「さぼうる」などがある路地の先にあり、黄色いのぼりが目印。かわいらしい雰囲気の店頭は、素通りできません

神保町裏路地にある「キッチン きらく」は「食堂七彩」店主の阪田さんがカレーライスやチキンライス、大判焼きに似たきらく焼き、さらには期間限定でルーロー飯など気になるメニューを試作、提供するというお店。カレーライスと並んで店の名物となっているのが、今回紹介する稲庭中華そばだ。

常時数種類揃う「きらく焼き」 写真:お店から

店頭ではつぶあん、カスタード、ひよこ豆のキーマカレーなど10種近くの味を揃えた「きらく焼き」(250円〜)の販売も。

木を基調とした温かみのあるイートインスペース

店内1階は販売とキッチンスペース、2階はイートインスペースになっている。広くはないが、清潔な空間。ところどころに配されたかわいらしいオブジェも、温かく居心地のいい雰囲気を演出している。

“食材のヲタク”のこだわりと愛されスイーツにファン多し!

左)店主の阪田 博昭さん、右)店長の月舘 志乃ぶさん

醤油やみりん、塩、小麦などの食材にこだわった無化調のラーメン作り、モモと肩ロース2種のチャーシューをのせるといったことを早くから手がけ、注文が入ってから麺を打つ店を出したかと思えば、最近ではチャーシューに煮豚ではなくコンフィを使うなどなど。店主・阪田さんはアイデアあふれる調理人でもある。
昨年の1月に開店したこちらは、そんな阪田さんの思い描く、次の逸品を生み出すための実験室でもあるのだ。店主・阪田さんの思うさまざまな「おいしい!」を日夜試作しているその姿は、まさに“食材のヲタク”である。

 

武智さん

主役はラーメンでもカレーでもない。この店で楽しめるどれもが主役。だから「食堂」。 食材、調理法にこだわった定番をいただくのもいいのですが、遊び心や野心が詰まった期間限定メニューに驚き、舌鼓を打つのも面白いです。

それだけではなく「きらく焼き」も始めたのは興味があったこともあるが、「プレートを手に入れることができたんですよ(笑)」と阪田さん。そんなノリも大切にしている。
ラーメンやカレー、はたまたスイーツなどが美味だからなのはもちろんのこと、阪田さん自身、また、そのアイデアにもファンがついている印象だ。