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滑らかなのどごし、スープのうまみが詰まった珠玉の一杯
初めて「稲中」を食べた時は、敢えて缶詰のなめこ(秋田産)をスープに加え、とろみをつけることで麺に絡みやすくしていたが、現在のバージョンになめこはなし。鶏から出る濃厚なうまみ、キリッとエッジの立った醤油、みりんのまろやかさからなるスープはシャープな味わいで、ツルリとした麺にしっかり絡むようさらに進化している。そして、のどごしにばかり気がいく麺もかむほどに小麦が香り、甘さがじんわり。生麺では味わえないおいしさだ。
武智さん
長めに切ったねぎは麺との食感の違いを演出し、細切りのメンマも心地よいアクセントになっています。チャーシューの甘みも、このスープと相性が抜群。そしてシャープな印象のスープ。どれも他の生麺タイプのラーメンに使ってもおいしいはず。しかし乾麺である「稲庭中華そば」に合わせることを前提に考えられたもの。やはり、この完成系は他では味わえないおいしさになっています。
心惑わされるメニューがそろう「キッチン きらく」
ここのカレーファンは多い! 絶対食べたくなる「カレー中華そば」
稲庭中華そばの上に、阪田さんの自信作である黄色いカレーをかけたものもぜひ一度味わってみてほしい。カレーは自家製ラードで作ったルウに多めのターメリックとさらに酢を加えることで、より黄色くなるように調理。具材にはたっぷりの玉ねぎと豚肉を加えて仕上げた、どこか懐かしくやさしいスパイス感のカレーだ。このやさしいカレーが、稲中スープをほのかにスパイス感のあるマイルドな味わいに変化させる。もちろん麺との相性も抜群だ。
武智さん
カレーも醤油スープも渾身の作で、控えめながら主張ははっきりしています。なのに2つが混ぜ合わせられると、どちらが主でもない新しい味わいになっているから不思議。スパイスが加わるのに、マイルドな味わいに仕上がっています。カレー好きもラーメン好きも、どちらも大いに納得するおいしさ!
あったらうれしい、台湾料理の定番「ルーロー飯」
「八角を使い、本場の味を作りたかった」ということで生まれたメニュー。紹興酒に醤油にフライドエシャロット、八角、台湾料理によく使われる調味料・ルーパウなどを加えたタレで煮込んだ細切り豚肉をご飯の上にたっぷりと。日本の丼飯に似た印象だが、香りはやはり異国のそれ。これが食欲を刺激してやまないのだ。
武智さん
ルーロー飯が好きで、見かけては「ふむふむ」と食べています。五香粉を控えめにしたり、豚肉を大きくカットしたりとアレンジする店も多い中、こちらのルーロー飯は見た目、香りとも本場の味そのもの。醤油スープのキリッとした味わいを、さらにグッと引き立ててくれます。また量的にラーメンのサイドメニュー的な注文をしそうですが、大盛り、あるいは2杯という楽しみ方も良さそうです。ご飯ではあるのですが、個人的には紹興酒をロックで飲みつつ、つまみとして食べてもきっとおいしいはず!
「おいしい」を求めて進化していく
どの料理に関しても、阪田さんは使っている食材、調理方法、おいしく作る上でのポイントまで丁寧に教えてくれる。大らかな人柄ということもあるだろうが、きっと、同じ食材を使っても、調理法を伝えても、同じようなおいしさにはできっこないという料理人としての自信があるからだろう。それでいてそのレシピ、その味に固執することなく、さらに進化させることへの余念もない。
乾麺「稲庭中華そば」をここまでのクオリティに仕上げることができたのも、単体でおいしく稲庭中華そばにトッピングしてもおいしいカレーを作り出したのも、阪田さんだからできたこと。いつも、ただただ「おいしいです」と食べているが、ではなぜおいしいのか?となると、阪田さんが作るから、に行き着いてしまうのである。
進化し続ける阪田さんの、現時点での美味を楽しみに出かけてみてはどうだろう?