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古き良き食文化を継ぐ老舗がある一方で、次々と時代に添った新店が生まれる京都。けれど、その根底にあるのは、「おいしいもので人を幸せにしたい、喜んでほしい」というお店の思いです。ビジネス街烏丸御池や四条からも近い便利なエリアに開業した、大人のイタリアン酒場を京都在住のライター・中井シノブさんが紹介します。
烏丸御池や四条からもすぐ。大人の空間でゆったりとお酒と料理を楽しめる

洗練されたレストランと居酒屋の間、和洋の料理とお酒を自由に楽しむことができるのが、2026年1月に烏丸蛸薬師に開業した「山三ツ輪」です。この店の魅力は、なんといっても日本酒派もワイン派も、自在に好みのお酒を選んで楽しめる自由度です。 料理はアラカルトですが、その日の気分やお腹具合に合わせ、コースのようにも組み立ててくれます。ワインだけ、日本酒だけはもちろん、和洋を織り交ぜる「ミックスペアリング」など、お酒好きにはたまらないオーダーメイドの体験が叶う、大人のための新しい酒場です。

店主の半田康二さんまみさん夫妻は、東京・神楽坂のイタリアンで出会い結婚。「生まれ育った京都で店を開きたい」という妻・まみさんの夢を共に追いかけることを決意し、京都へ移住しました。康二さんは、京都ではイタリアン「御所デリノ」や「アランチーノ京都ホテルオークラ」などでマネージャーを歴任。着実に準備を進め、念願かなって2人の店をオープンしました。
シェフの畠山大輝さんは、京都府宮津の生まれ。丸太町のイタリアン「クッチーナ・クラモチ」やホテルのレストランで腕を磨きました。「御所デリノ」に勤めていた際に出会ったのが半田夫妻。共に働くなかで深い信頼関係が生まれたそうです。その後、半田夫妻から「新しくオープンするお店で腕を振るってほしい」というオファーに応え、「山三ツ輪」のシェフに。

「料理の技法や味わいの作り方などベースはイタリアンですが、そこに出汁や調味料など和のテイストを織り込んでいます」という畠山シェフ。ロールキャベツなど洋の料理にも、和のお出汁を組み合わせ優しい味わいを生み出します。

ちょっとクラシカルな印象のある「山三ツ輪」という店名の由来は、まみさんの曾祖母が、神戸市中山手で営んでいた肉料理専門の料亭「山三ツ輪」の名を受け継いだもの。料亭「山三ツ輪」は大正10年の創業で、戦後は国内外の賓客を迎えた名店です。自身の店を開業する際、まみさんの頭にまず浮かんだのは、曾祖母が大切にしたこの店のことだったといいます。
酒肴から前菜、パスタ、肉料理まで、豊富なメニューにお酒も進む

和洋伊をとりまぜた30種類以上あるメニューには「ポテサラ カルボナーラ仕立て」や「ホタルイカのぬた」といった和洋の酒肴、「季節のフルーツとブッラータ カプレーゼ」や「ローストビーフ 和風仕立て」「京もち豚 洋風おでん」など温冷前菜、季節の食材を用いたパスタ、魚料理や肉料理もバランスよく並びます。酒肴と前菜をおともにお酒を楽しむこともできれば、パスタや肉料理も注文して、しっかり食べることもできるという使い勝手の良さが魅力です。料理やお酒の内容は仕入れや季節に応じて変わりますが、初めての方や会食におすすめのコース料理(シェフのお任せディナーコース8,800円)もあるので、相談してください。

メイン料理の一品、イタリア風のロールキャベツ「ランバシッチ」は、3〜4時間かけてじっくり炒めた玉ねぎの甘みとお肉のジューシーなうまみに、和の出汁を合わせた深い味わい。
合わせるお酒選びで迷ったら、ソムリエ資格を持つ半田夫妻に相談を。キリッとした辛口日本酒で味わいをふくらませるか、ピュアなうまみを持つ赤ワインで料理のうまみに寄り添うかと、選ぶ楽しみを教えてくれます。「お肉のジューシーなうまみとキャベツの自然な甘み、チーズのコクに、あえてキリッとした辛口の『城陽 大辛口』(京都・城陽酒造)を合わせます。ドライでキレのある要素を持ってくることで、料理のうまみをしっかりと支え、引き立てるペアリングです」と薦めてくださったのは、唎酒師の資格も持つまみさん。

「京鴨のタリアータ 〜白ネギの有馬山椒のソース〜」は、上品な肉質のブランド鴨を主役に、イタリアンの伝統技法と日本の伝統的な香辛料(薬味)が融合した一皿。塊のまま絶妙な温度でゆっくりと火入れをすることでしっとりと仕上げた京鴨に、ピリッとした有馬山椒のソースを添えました。鴨肉ならではの緻密な肉質と豊かな風味、赤身のしっかりしたうまみが感じられる一品です。

綺麗な酸味と優しい味わいのイタリアの土着品種「スキオペッティーノ」を合わせて
「淡泊で上品な風味を持つ鴨肉は、渋みのしっかりした重いワインよりも、しなやかなで綺麗な酸味が感じられる優しい味わいのワインと合わせていただくと、よりバランスのとれた中和と一体感を感じられます」と、康二さんがセレクトしたのはイタリア、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の土着品種スキオペッティーノから造られたワイン。ベリーの濃密な香りが鴨の風味を一層引き立て、白胡椒やクローブなどを思わせるスパイスのニュアンスが有馬山椒のソースと重なり合い心地よい調和が感じられます。

「赤海老と青梗菜のユッケ」は、醤油やごま油ベースにした一般的なユッケとは異なり、甘辛い辛味噌で味付けしたもの。まろやかな卵黄を混ぜて味わうと、より濃厚に。調味は和風ですが、ディルをトッピングし、爽快なハーブの香りをまとわせて洋のニュアンスをプラスします。

後味に余韻がある辛味噌と爽やかなディルの組み合わせだから、お酒のペアリングも和洋自在。「日本酒なら 伏見の『松本酒造の洗朱』のように、最初は滑らかで最後にジワッと広がるコクを感じるお酒を合わせ、辛味噌の余韻と綺麗にシンクロさせます」とまみさん。
一方で、ワインを合わせるならば、ディルの香りに合わせて、爽やかなハーブ香を持つ白ワイン(ソーヴィニヨン・ブラン)。お互いのフレーバーを引き立て合い、綺麗な酸味が濃厚な味を中和してくれます。「なかでもイタリア・ピエモンテ州の著名な生産者『マッテオ・コレッジア』が手がける、日本限定の白ワインが好相性」と康二さん。
カウンターで店主夫妻と酒談義を楽しむか、テーブルでじっくりマリアージュを楽しむか

「洗練されたレストランと心地よい居酒屋の間」という、大人が一番欲しかった絶妙な酒場。1人ずつのスペースを贅沢に広く設計した上質なカウンターやテーブル席で、周囲を気にせずゆったりとお酒と食事を楽しめます。

ボトルは手頃なもので5,500円〜。出番の多いボリュームゾーンも8,000〜10,000円前後と非常に良心的。グラスワインは900円〜2,000円。個性の豊かさが魅力のイタリアワインを中心に、誰もが好みのワインに出会えるよう幅広いラインナップを揃えます。産地に偏ることなくイタリア20州、その他スペインのリオハやカタルーニャ、ビエルソ、リアスバイシャスなどのワインが揃います。
一方で、日本酒は京都産が中心。京都以外のお酒は、まみさんが料理に合わせて入手したもの。「私自身が実際に自分の舌で味わい、酒蔵の方々とお話しさせていただき仕入れたもの。他府県のお酒もあるのですが、”この味わいなら、うちのお料理に絶対に合う”と確信を持てた銘柄です」と言います。お酒セット(各70ml)。日本酒・ワインセット3杯2,700円、5杯4,200円。日本酒セットは3杯2,200円、5杯3,400円。ワインセット3杯3,200円、5杯5,000円。

30歳まで金融関係にいた康二さん。以前から憧れを持っていた飲食業界へ一念発起して飛びこみました。東京のスペイン料理店やイタリア料理店でソムリエとしてのキャリアを積み、京都で自店を開業。豊富な経験を活かし、良心的で上質なワインをセレクトします。

この店のもう一つの顔が、レストラン手前に設けられた角打ちスペース。京都の地酒をメインに、常に新しい銘柄を入れ替えるスタイルです。30ml 、60ml 、100mlの3つのサイズから選んで飲み比べできるから、購入の指針になります。「本日の日本酒3種飲み比べ」800円(30ml)、1,600円(60ml)。「本日のお酒」200~1,200円(30~100ml)。「本日のウイスキー」1,000円~(30ml)など。
「同じ酒蔵でも、銘柄によってそれぞれ味わいは違います。お客様が日本酒に一歩踏み込んで興味を持っていただけるような、背景やストーリー、明確な個性があるものをセレクトしご説明します」とまみさん。「炙りからすみじゃがバター」600円など小さめポーションのおつまみも用意されているから、1〜2杯をサクッと味わう立ち飲み店としても利用できます。

洗練されているのに気さくな雰囲気。ゆったりと料理とお酒を楽しみたい人に、ぜひとも訪ねてほしい京都の新星です。
教えてくれた人

中井シノブ
京都在住ライター。京都を中心に関西の飲食店を取材紹介する。取材店は1.5万軒以上。趣味は外飯、外酒、猫とまったり。「本願寺新報」でコラム記事を連載中。「あまから手手帖」「GOETHE」などでも多彩な記事を執筆している。



