〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!

食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

熟成肉&自然派ワイン

京都市営地下鉄烏丸線・四条駅近くにある「メッシタ パーネ エ ヴィーノ」は、黒毛和牛の熟成肉と自然派ワインがいただける一軒。滋賀の精肉店「サカエヤ」の新保吉伸さんが独自の手法で手当てした牛肉が常時数種類揃うとあって、肉好きには垂涎ものだ。

店はカウンター席、テーブル席併せて16席
黄色い看板と緑の扉が目印

シェフは滋賀県彦根出身の藤原順さん。元々車などイタリア好きで、それに関する仕事がしたいと思っており、サラリーマンを経てイタリア料理店で働くことに。その後フィレンツェでも経験を積む。その後も京都の飲食店で活躍し、2015年に独立。「滋賀県で働いていた時に『サカエヤ』の新保さんの肉に出合いました。当時はサービスだったのですが、『独立したら肉を使いたい』とお願いしたらOKをいただいたんです」

巧みに肉を焼く、シェフの藤原順さん

扱う肉は「サカエヤ」からのもののみ。「もう他のお肉は食べません。サシの入った肉にも興味がないです。『サカエヤ』さんの肉は深みが他とはまったく違う。塩だけでもおいしいです」。最初は肉を溶岩焼きにしようと考えていたが、とある飲食店で炭火焼きのおいしさを実感し、備長炭で炭火焼きすることに決めたという。

新保さんが手当てした、黒毛和牛のリブロース

塊肉を網にのせて、焼いたり、休ませたりを繰り返す。焼きあがるまでは30~40分かかるそう。「休ませているときも50℃はありますが、ゆっくり火入れしている状態です」。肉を焼くポイントは、最後に強めに焼くこと。「最初に強く焼くよりもコントロールがしやすいんです」。そして、焼き上がりの判断は、音と香り、色。そして「1.3倍くらいには膨らんできますよ」。

時間をかけてゆっくりと肉が焼きあがっていく
 

門上さん

「サカエヤ」の新保さんのおすすめで訪問。「肉を焼かせると、ここしかない」とのことでした。小さい店内なので、アットホームな雰囲気も素敵です。

おすすめの料理はこちら!

アラカルトもあるが、8割以上がコースを選択。コースは肉の量で2種類(7,000円~)あり、前菜、肉の食べ比べ、パン、アイスの構成。「足りない場合はパスタなどもご用意できますよ」と藤原さん。

まずはコースの1皿目、前菜の盛り合わせ。実家から送られる滋賀県産の有機野菜がふんだんに使われている。菜の花のカシューナッツソース、玉ねぎの炭火焼き、フルーツトマトと水牛モッツァレラなど盛りだくさん。自然派ワインといただきながら、肉が焼きあがるのを待つ時間も楽しい。

前菜の盛り合わせ
 

門上さん

藤原さんの“思い”が入っていますよ。

熟成肉の炭火焼き300g(2人で)、おまかせ2部位食べ比べ。どちらも「サカエヤ」の新保さんが手当てした「ストーリー性のある」牛肉だ。今回は、北海道で完全放牧された野生牛・ジビーフのフランクと黒毛和牛の経産牛のランプ。ジビーフはいわゆる霜降り牛肉とはまったく異なった噛み応えのある肉質で、噛めば噛むほど味わい深い。経産牛は比較的あっさりとした味わい。フランスの藻塩で。

ジビーフの「フランク」と黒毛和牛の経産牛のランプ
おまかせ2部位食べ比べ
 

門上さん

A5ランクの牛肉だけが牛肉ではないと感じます。

ワインは自然派ワインがスタンバイ。「食事に寄り添うワインを選んでいます。気軽に飲めるように手ごろな値段のものが揃っていますよ」

数百本のストックがある自然派ワイン

開店して11年。今は地元京都の方のみでなく、全国から藤原さんが焼いた肉を求めてやってくるそう。「最近では北欧の方が“アメージング!”と喜んでくださることが多いですね」と藤原さんは話す。そして、今後の展開を尋ねると「特にこの先どうしたいという目標はないんですよね……ただ、お客様が喜んでくださったらそれで充分ですよ!」と穏やかな笑顔を見せた。

店内にある肉専用の熟成庫
 

門上さん

牛肉の新たな世界が広がります!

教えてくれた人

門上 武司

1952年大阪生まれ。関西中のフランス料理店を片っ端から食べ歩くももの足らず、毎年のようにフランスを旅する。39歳で独立し「株式会社ジオード」設立後はフードコラムニストというポジションにとどまらず、編集者、プロデューサー、コーディネーターとマルチに活躍。関西の食雑誌「あまから手帖」編集顧問であり、全日本・食学会副理事長、関西食文化研究会コアメンバー。著書には「食べる仕事 門上武司」「門上武司の僕を呼ぶ料理店」(クリエテ関西)、「京料理、おあがりやす」(廣済堂出版)、「スローフードな宿1・2」(木楽舎)、など。年間外食は1,000食に及ぶ。

※価格は税込。

文:木佐貫久代
撮影:福森公博