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【噂の新店】Da YUGE
イタリアンの旗手が、満を持して京都で独立

2026年4月3日、京都・烏丸御池に一軒のイタリアンレストランがオープンした。 店名は「Da YUGE」。オーナーシェフの弓削啓太氏は「サローネグループ」の本店「サローネ2007」で料理長を務め、YouTube登録者数は20万人超(https://www.youtube.com/@yugetube2020)。さらに「パスタ・ワールド・チャンピオンシップ2019」で世界一に輝いた実力派として、その名を知る人も多いだろう。

石畳のアプローチを進むと、通りの喧騒から切り離された静謐な空間が広がる。店内はカウンター13席のみ。京都を代表する造園「植彌(うえや)加藤造園」による日本庭園を望む、贅沢な設えだ。 築100年近い建物の柱を活かした空間には、凛とした緊張感とやわらかな余白が同居する。


京都で挑む、“京イタリアン”という新しい文脈
「Da YUGE」が掲げるのは、京都という土地で紡ぐ【京イタリアン】という新たな表現だ。
なぜ京都なのか? 弓削シェフは静かに語る。
「京都は日本が誇る世界的な街。その中でイタリア料理をやる意味を考えたとき、日本らしさをどう表現するかが鍵になると思ったんです。料理だけでなく、文化や生活も含めて」

転機となったのは「祇園さゝ木」での研修経験だという。和食の技法や精神性に触れたことで、自身の料理観は大きく更新された。「和食、フレンチ、イタリアンという序列のようなものを、横並びにできないか。和食と同等の食材を使いながら、それをどうイタリアンに落とし込むか。それが自分の挑戦です」
目指すのは単なる融合ではない。 イタリア料理の軸をぶらさず、日本というフィルターを通して再構築すること。そこに、この店ならではの価値がある。
“地産地消”ではない。思想としての京イタリアン
ディナーコースは22,000円(全10品、サービス料5%別)。その中からおすすめの3品を紹介していく。
序盤を彩るのは「タイとピゼッリ」。
淡路の鯛に、春らしい青みをたたえたピゼッリ(グリーンピース)のピュレを合わせた一皿だ。特徴的なのは、キャビアを昆布締めにするという発想。鯛はあえて締めず、噛むごとに素材の旨みと昆布の余韻が時間差で広がる。
イタリアのクラシックな組み合わせ“卵とピゼッリ”の卵を、キャビアで再解釈。 そこに昆布という日本の要素を重ねることで、料理は一気に多層的な表情を帯びる。

続く「太刀魚とトマト」も印象的だ。
揚げた太刀魚を炭火で焼き上げ、香ばしさをまとわせる。下に忍ばせるのは魚介の旨みを凝縮した澄んだスープ。いわば“ズッパ・ディ・ペッシェ”を再構築した一皿。
香ばしさ、だしの奥行き、そして軽やかさ。 和食の“だし文化”を軸に据えながらも、表現はあくまでイタリアン。そのバランス感覚に、シェフの現在地がにじむ。

パスタは、真っ向から「旨い」を取りにいく
コース中盤、満を持して登場するパスタに、シェフはこう言い切る。
「ここは、ど真ん中の“うまいもん”で勝負です」

この時期のプリモ・ピアットは2皿構成。「イワシとサフラン」と「カチョ・エ・ペペ」。なかでも「カチョ・エ・ペペ」は、シンプルゆえに素材の力が問われる一皿だ。旨みの強いパルミジャーノと、塩分を抑えたペコリーノをたっぷりと使用。そこにナポリの乾麺を合わせ、チーズのコクと余韻をストレートに引き出す。

奇をてらわない。だが、強い。そんな“王道の説得力”が、この店のパスタにはある。
その後は経産和牛のメインへ。さらに希望すれば、シンプルなトマトソースのパスタを追加で提供することもあるという。客との対話から生まれる一皿も、京都の割烹を思わせるカウンターならではの醍醐味だ。
京都でしか成立しない、イタリアンのかたち

「日本でしか味わえないイタリアンをつくりたい」。弓削シェフはそう語る。
イタリア文化への敬意をベースに、日本人としての感性を重ねる。削ぎ落とし、そして必要なものだけを残す。その積み重ねが、いまの「Da YUGE」の料理を形づくっている。
フルフラットのオープンキッチン、ゆったりと配置された13席のカウンター。庭を望む静かな空間の中で、料理は“できたて”の瞬間を迎える。シェフとの対話もまた、この店の魅力の一つだろう。 京都という地で、新たな文脈を描こうとする一軒。いま、確かに注目しておきたい存在だ。


