〈食べログ3.5以下のうまい店〉

グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、トルティーヤ研究家の吉川さんが教えてくれた、新中野にある手作りタコスと蒸留酒の店を紹介。

気軽に立ち寄れるカフェバー風の店

香り高い手作りトルティーヤに季節ごとのさまざまな国産食材をオン

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

青梅街道沿い、ロゴが入ったネイビーの扉が目印

東京メトロ丸ノ内線で新宿まで約5分と、都心に近いながらも落ち着いた雰囲気の住宅街が広がる新中野。駅周辺には昔ながらの商店街があり、地域密着型の飲食店も多い。新中野駅から徒歩4分の場所にある、メキシコの蒸留酒“メスカル”とともに手作りタコスを楽しめる「HOBO TACOS(ホーボータコス)」(食べログの点数は2026年4月時点で3.09)も、ふらっと気軽に立ち寄れる店として地域の人々に親しまれている。

 

吉川さん

店主の星さんとは「HOBO TACOS」オープン前から知り合いでした。初めて訪れた時の感想は、星さんの人柄を表したような優しくおいしい料理の数々という印象を持ちました。

内装は横浜市の建築家集団「HandiHouse project」をはじめ、友人や知人に協力してもらって仕上げたそう

店内はカウンターとテーブルをあわせて全12席のコンパクトな空間ながら、ゆったりとくつろげる雰囲気。内装はいかにもなメキシコ風ではなく、白とベージュを基調としたナチュラルなインテリアの中に、アガベなどの植物が並ぶ棚、無造作に収納されたトルティーヤのプレス機など、さりげなくメキシコ要素が配されている。
今後は棚の部分をスタンドにして席数を増やすことも検討中だという。

バーカウンターにズラリと並ぶメスカルのラインアップは50種類以上。好みに合う銘柄やおすすめの飲み方など、迷ったら店主に気軽に相談を
 

吉川さん

メスカルがとても豊富に揃っています。また星さんはとても気さくで優しく料理経験も豊富なので、質問すれば料理に合うメスカルや飲み物を教えてくれると思います。

素焼きのコップ“カンタリート”がかわいいテキーラとグレープフルーツ&オレンジのカクテル「カンタリートス」1,200円は乾杯で気分を上げるのにぴったり

毎朝製粉から行う自家製トルティーヤを使用

店主の星穣さん

「うちのコンセプトは、“ちょうどよく使えるタコスとメスカルの店。予約なしでふらっと立ち寄れる。気合いを入れておしゃれしなくても、ダル着で来られる。それぐらいゆるい感じで、タコスが日常の一部であってほしいと思っているんです」
そう話すのは、店主の星穣(みのり)さん。

スーシェフ(副料理長)まで務めたフレンチは4年、イタリアンは25年にもわたるシェフ経験を経て、2017年に吉祥寺の「TACOS Shop」でメニュー開発&調理担当に。2024年2月に新中野にて自らの店をオープンした。

「もともと植物が好きで、自宅で育てていたアガベが原料の蒸留酒・メスカルに興味を持ったことと、未知の素材にワクワクできるタコス作りが楽しくて店を始めました。メキシコ料理にこだわっているわけではなく、ただおいしいものを作っているだけ(笑)」と軽い口調で話しながらも、食材選びや手間を惜しまない仕込みなど、仕事ぶりは常にプロフェッショナル。

レギュラーメニューのタコス10種をはじめ、季節ごとの食材を使って作る料理はどれも、豊富なシェフのキャリアと海外暮らしの経験、ダンサーと画家の両親から受け継いだ“表現者”のDNAを持つ星さんならではのセンスがうかがえる。

「モリーノ」と呼ばれるメキシコ製の製粉機は中に石臼がセットされており、ひいたとうもろこしが雪のように降り積もっていく

タコスに使用するトルティーヤは、北海道産のフリントコーンを石灰水で煮て、毎朝店内でひいて作る自家製。オーダーを受けてからプレスして焼き、常に焼きたてを提供している。
また、食材は可能な限り国産のものを使用。
「無駄なコストをかけず、近くにあるいいものを使いたいなと。それに料理はその場で育つものという基準があるので」と星さん。

こちらもメキシコから取り寄せたプレス機。鉄製など数台を経て、軽く使い勝手がいい木製タイプにたどり着いたそう
トルティーヤは押し付けるようにして焼き、膨らんだら手で返すのが本場の手法
 

吉川さん

自由気ままに生きる星さんらしく、レギュラーメニューの他、多くのメニューはその時々で変わります。その時にしか食べられない味を楽しんでほしいです。タコスを包むトルティーヤは国産トウモロコシ粒から作る手作りトルティーヤなのでどれも格別です。

焼き上がったトルティーヤはコーンの豊かな香りと風味が広がり、具材の味をひきたてる

まずはコレ! 多彩な具材を楽しめる「おまかせタコス3種」

「おまかせタコス3種」1,400円。苦手なものは事前に確認してくれるので安心

「おまかせタコス3種」は、その日の食材の入荷状況に合わせて具材が変わるが、基本的には肉、魚介、野菜をバランスよく組み合わせている。
初めての来店時や、いろいろなタコスを楽しみたい人におすすめだ。

この日の具材は写真奥から時計回りに、唐辛子やスパイスが主材の「アドボソース」でマリネし、燻製した唐辛子のうまみが際立つ「チポトレマヨネーズ」をかけた海老。
高温でソテーし、細かく刻んだハバネロや玉ねぎ、トマトなどが入ったメキシコの代表的なソース「サルサ・メヒカーナ」で和えたしいたけ。
ラードとともにホロホロに煮込んだ豚肉に、トマティーヨの代わりにきゅうりを使用した「サルサ・ヴェルデ」をかけたカルニータスの3種。

しいたけのタコスは野菜の食感が際立ち、サルサ・メヒカーナの酸味と甘みでさっぱりした味わい
 

吉川さん

その時々でタコスが変わるので、まずはこちらを頼んでいただければ間違いないです。 もし1品だけ選ぶとしたら「マッシュルーム(しいたけ)のタコス」。いずれにしても3種類の具材バランスがよく盛られています。 私が頼んだ時は「カルニータス、卵としらす、マッシュルーム(しいたけ)のソテー」でした。やはりタコスに合うメキシコのクラフトビールやメスカルの炭酸割りと合わせると最高です。