【噂の新店】照今(しょうこん)

若手料理人のアイデアが光る

神宮丸太町駅から徒歩10分ほど。今は料亭として高野川の畔に移転した「研野」があった場所に、今年3月、割烹「照今」がオープンした。特筆すべきはそのスタイル。「研野」で研鑽を積んだ若手料理人が3カ月ごとに1名選ばれ、料理長とともに、アイデア溢れるコースを組み立てている。

店名の「照今」は古事記の「稽古照今」に由来。過去の経験から学んだことを、ただ受け取るだけではなく現在に活かそう、との意味
店内はカウンター8席のみ。店内に流れるBGMは「研野」の大将である酒井研野さんのセレクト

新しいスタイルに挑む料理長は、田淵加奈子さん。兵庫県・三木市出身で、高校で料理を学び、飲食の世界へ。温泉旅館や居酒屋に勤める中、ボクシングに興味を持ち、プロライセンスを取ったという異色の経歴の持ち主だ。ボクシング引退後、職人気質な和食料理人が自分に合っていると思い、「研野」の門を叩いたという。京都に来て3年目という異例のスピードで料理長の話があったときは「うれしいと同時に店の看板に泥を塗ってはいけない、と気が引き締まりました」と話す。

料理の田淵加奈子さん。江戸文字が描かれた法被も素敵

6月まで、田淵料理長とタッグを組む若手料理人は髙橋歩さん。髙橋さんの実家が居酒屋「燕楽」であることもあり、コース料理のテーマは「居酒屋文化の再構築」。7月からは中川雄貴さんが担当し、テーマは未定だが「肉?」「ナチュラルワイン?」など熱い議論が交わされているそう。

 

笹岡さん

「研野」のお弟子さんのお店がオープンすると伺い、早速訪問しました。お店のBGMは変わらず酒井研野さんが担当。春らしい音楽とともに、春のお料理を堪能しました。

いただけるお料理はこちら!

お料理は16,500円のコース1本で、17時、20時(火曜日は18時のみ)からの一斉スタート。今回は、田淵料理長と髙橋さんが腕を振るう、5月のコースの中から4品を紹介する。

華やかな八寸。鯛のちまき寿司、稚鮎の唐揚げ、小松菜と油揚げとつぶ貝のてっぱい、酢蛸、新生姜のガリ。今回の“居酒屋”というテーマに準じ、京都のおばんざいとして親しみのある郷土料理「てっぱい」を盛り込んだ。

八寸
 

笹岡さん

季節の食材たちが盛り込まれ、続くお料理への期待が高まります。

椀物。椀種は、鯛のすり身の真薯、つぶ貝、大根、蕗、木の芽、蕨。春らしい素材の中に、今回のテーマを反映し、大ぶりの大根は、おでんをイメージして煮含めている。

椀物
 

笹岡さん

和食は、椀に始まり椀に終わります。しっかりと、春の香りを味わいたいです。

鯵の酢〆、フルーツトマト、グリーンとホワイトのアスパラ、蛇腹に切ったキュウリに土佐酢のジュレをかけ、パセリと穂紫蘇を添えた爽やかな一品。器の底には黄身酢がひかれ、味の変化も楽しめる。

酢の物
 

笹岡さん

春色が目にうれしいです。

コースの〆で供されるそばは、田淵料理長が毎朝打っている。店のオープンに先駆け、そば打ちを学んだそう。北海道産のそば粉を使ったしなやかな二八そばは冷かけで、刻んだ蕨とワサビをトッピング。かけ出汁は鰹、いりこを使った深みのある味わい。

そば
 

笹岡さん

料理長のスペシャリテです!

リーズナブルなので若い人もぜひ!

「大将の、料理人は何より自分たちで“考える”ことが大切だとの教えや後進を育てたいという思いを聞き、それらを守っていかないといけないと感じています」と話す田淵料理長。「価格もリーズナブルな設定ですし、これまでのお客様はもちろん、若い方々にもぜひ一度訪れていただきたいです!」

笑顔の田淵料理長。「大将から学んだ細やかな気配りでお客様に寄り添っていきたいです」
 

笹岡さん

王道の日本料理を気軽にいただけます。「研野」の若手料理人が3カ月ごとに1名選ばれて、料理長・田淵加奈子さんと共に1つのコースを組み立てるという新しい挑戦にも注目したいです。

教えてくれた人

笹岡 隆甫

1974年京都生まれ。京都大学工学部建築学科卒業。舞台芸術としてのいけばなの可能性を追求し、日本-スイス 国交樹立150周年記念式典をはじめ、海外での公式行事でも、いけばなパフォーマンスを披露。2016年には、G7伊勢志摩サミットの会場装花を担当した。主著に『いけばな―知性で愛でる日本の美―』(新潮新書)。

※価格は税込。

文:木佐貫久代
撮影:福森公博