定食王が今日も行く!Vol.41

タモリに北野武も夢中になった絶品ロールキャベツ

昭和38年ラーメン店として創業

2回の東京五輪を見守る老舗洋食店

 

前々回、春キャベツを味わう定食として「えぞ松」の回鍋肉を紹介したが、毎年この季節になると食べに行くのが「アカシア」のロールキャベツだ。FBやインスタグラムでも4月になると、どんどんフィードに上がってくる。有名店すぎて紹介するのをためらっていたが、1年ぶりに食べたら、その独特な味わいに引き込まれてしまい、改めてその魅力について語りたくなった。

創業は昭和38年、東京五輪が開催される1年前のこと。もともとはラーメン屋だったにもかかわらず、「独特料理」としてロールキャベツを提供したところ、大人気を博して洋食店へと転身することになったそうだ。創業者の母親が、家庭で出していたレシピをアレンジして提供したという。なんともハイカラなお袋の味だ。

自分がこのロールキャベツのことを知ったのは「笑っていいとも!」でタモリさんが紹介していたのを見たのがきっかけで、大学進学で上京した時にこの店を訪れたことを覚えている。

鶏ガラスープで煮込んだ

とろとろのキャベツに包まれたい

 

北野武さんが若い頃、新宿のジャズ喫茶「びざーる」でアルバイトをしていた時、このロールキャベツを食べるのが何よりもごちそうだったという話を聞いたことがある。ロールキャベツ2貫にライスがついてくる、ロールキャベツ定食は850円だ。

もちろんカキフライやコロッケなど、他のメニューとロールキャベツとの組み合わせも可能だ。

ロールキャベツは注文するとすぐに提供されるので時間がない時にもオススメだ。一緒に提供されるスプーンでするっと二つに切れる柔らかさ。

一見とってもシンプルな見た目なので、脳にガツーンとくる大味を想像するのだが、クリーミーだけれど和風のようなさっぱり感があり、コクや旨味が見え隠れする。断面を見るとわかるが、中の餡よりキャベツの分量が多いのだ。このとろとろのキャベツにスープがたっぷり染み込んでいて、クセになる。

 

ロールキャベツ自体を鶏ガラスープで3〜4時間かけて煮込み、その後煮汁でシチューのルーを伸ばしホワイトソースを作っているという。この二つのスープがキャベツの中に染み込み、そして上から被さることで口の中で交わり、絶妙な味を作り上げているのだ。

ご飯に合う!ホワイトソースの秘密と

懐かしい固め玉子のオムライス

 

ロールキャベツを食べ終わった後も、ぜひソースを白飯にかけて食べるのを忘れずに! 刻んだベーコンと鶏ガラスープ、そしてキャベツの出汁が混ざり合い、水炊き鍋のシメに食べるオジヤのような一杯になるのだ! 武さんもご飯にぶっかけて食べていたという話を昔聞いたことがある。二度美味しい、アカシアのロールキャベツの味わい方だ。

もう一つ、個人的なお気に入りは硬めの玉子に包まれたオムライスだ。最近ではとろとろ、ふわふわがオムライス業界の主流になってきているが、懐かしのケチャップライスとソースを味わうのには、この硬めの薄焼き玉子焼がやはりベストマッチだと思う。昭和の味を代々引き継いで残しているこの店ならではのメニューなのだ。

 

昭和38年の東京五輪前年から始まったアカシア。三代目の店主が2020年の五輪に向けて、ロールキャベツのグローバル化を進めているという。豚や牛が食べられない人にもアカシアの味を体験してもらえるような、新型ロールキャベツを開発という噂を耳にした。進化し続ける老舗のロールキャベツ、来年の春も楽しみにしたい。