〈ニュースなランチ〉
毎日食べる「ランチ」にどれだけ情熱を注げるか。それが人生の幸福度を左右すると信じて疑わない、編集部員や食いしん坊ライターによるランチ連載。話題の新店から老舗の新メニューまで、おすすめのデイリーランチをご紹介!
「目白 旬香亭 丸の内店」
好きな洋食ランキングでは、必ずと言っていいほど上位3位内にランキングされる人気の“オムライス”。子供からお年寄りまで幅広い層から愛されている洋食界のアイドルでもある。
卵の黄色にトマトケチャップの赤。色彩のコントラストも、老若男女を惹きつける一因かもしれない。伊丹十三監督の名画「タンポポ」に由来するタンポポオムライス、天津飯のように大きめに焼いた卵焼きをのせたオープンオムライスなどなど、種類も多様化。それぞれに個性豊かなオムライスを提供しているが「オムライスのおいしさは、卵のトロトロ感と少し軟らかめのご飯が一体化したところにあると思うんです」と語るのは、目白「旬香亭」の古賀達彦シェフ。
そんな、古賀シェフ理想のオムライスに出合えるのが、今年の6月、二重橋スクエアに目白店の姉妹店としてオープンした「目白 旬香亭 丸の内店」だ。今年10月から、ランチに新しく加わったオムライスが、ちょっと見逃せない味なのだ。
艶々と輝く黄金色の卵にしなだれかかるソースは、ケチャップならぬトマトソース。洋食店の技をたっぷり詰め込んだこの逸品は、オムライスの中身にも一工夫。デミグラスソースで和えているのだ。
デミグラスソースといえば、いわば洋食屋の顔とも言える定番のソースであり、また、デミグラスソースの良し悪しで店の味と格がわかると言ってもいいだろう(と私は思っている)。和食で言う“だし”のような存在かもしれない。個人的には、デミグラスソースのおいしい洋食店に、どうしても惹かれてしまう傾向がある。
デミグラスソースの味わいは、各店各様ある中で「旬香亭」のそれは、デミグラスらしいほろ苦さとうまみを持ちつつも、味わいはマイルド。それでいて、柔らかな甘みと深みのあるコクが舌を覆う。さまざまなうまみのハーモニーがバランスよくまとまっている。
その作り方を古賀シェフに聞くと「まず、トマトペーストをじっくり炒めて酸味を飛ばし、フォンドボーを加えます。次に焼いた牛すじも入れ、さらに色付くまでよく炒めます。次に香味野菜も入れて5~6時間煮込んで漉す——という作業を2~3日繰り返します。色がブラウンに変わってコクが出てきたら、再度じっくり色付けしたルーを混ぜ、牛筋も入れて煮こむという一貫作業を2日繰り返して、ようやくデミグラスソースが出来上がります」とのことで、まさに気の遠くなるような手間と時間がかかっている。洋食店の矜持と言ってもいいだろう。
そのデミグラスソースとご飯をフライパンに入れ、手際よく混ぜ合わせながら古賀シェフが一言。「デミグラスソースを多めに入れて、ちょっとリゾットっぽく軟らかめにした方が、卵とよく馴染んでおいしいんです」
卵は、特別なものではないそうだが、焼き上がったオムレツは一点の焦げもなく、バターを纏ったその表面は、シルクのようなきめ細かさとしっとりした光沢を見せている。最後に円錐状に形を整え、自家製トマトソースをかければ出来上がりだ。
スプーンでひと匙掬って口に運べば、バターの香りと卵の風味、デミグラスの香気が渾然一体。品格のあるおいしさが口中に広がる。
このオムライスに、スープとサラダが付いて1,800円は、立地と手間を考えれば、今時うれしいお値段では?
また、お子様ランチ風にハンバーグや海老フライ、コロッケを盛り合わせた「ハンバーグ&フライ」1,600円も人気のメニュー。
その他「アジフライ&ポテトコロッケ」1,500円、女性を中心に人気の「小海老のマカロニグラタン」1,600円など11種類ほどがそろっている。いずれもサラダ、スープ、ライス付き(ご飯メニューにはライスは付かない)。わざわざ食べに行きたい一皿だ。
※価格はすべて税込