二つ星を獲得した「明寂」の料理
二つ星を獲得した「明寂」の料理   写真:お店から

世界で一番ミシュランの星が多い都市はパリでもニューヨークでもなく、東京だ。先日発表された「ミシュランガイド東京2023」では実に200もの星が輝いた。そんな世界に誇る美食都市、東京がある日本に生まれたことを、一食いしん坊として誇りに思う。

「ミシュランガイド」の歴史は古く、1900年に「ミシュランガイドフランス」版が誕生。1926年から「おいしい料理」を示す星が登場し、1931年から有名な「匿名調査員制度」がスタート。

「ミシュランガイド東京2023」発表会

意外にもヨーロッパを飛び出し、大西洋を越えたのは2005年「ミシュランガイドニューヨーク」創刊時で、その2年後の2007年にアジア初となる「ミシュランガイド東京2008」が創刊された。

ミシュランガイドの評価は厳しいトレーニングを受けた匿名の調査員が独自の評価基準で評価を行う。

「素材の質」「料理技術の高さ」「味付けの完成度」「独創性」「常に安定した料理全体の一貫性」の5つが評価基準となり、調査員や編集長らの合議制で最終評価がされるため、評価のブレが少なく、入れ替わりは激しくない。

三つ星を受賞したスターシェフ達

「ミシュランガイド東京2023」の総掲載軒数は422軒。そのうち三つ星12軒、二つ星39軒、一つ星149軒、ビブグルマン222軒だ。

新たに星を獲得した店は二つ星が2軒、一つ星が16軒。今回初めて掲載されたビブグルマンは38軒だ。

全ての店舗ラインアップは公式サイトや書籍の「ミシュランガイド東京2023」でご確認いただくとして、この記事では新規店舗の中から過去「食べログマガジン」で紹介したお店をピックアップしよう。

二つ星:明寂

写真:お店から

今回のビッグトピックが日本料理「明寂」の新規二つ星獲得だろう。料理人経験の長い中村英利氏の料理は食材の持つ味わいを最大限に生かした、シンプルで奥深い味わいと評判だ。

「食べログマガジン」ではオープン時から注目し「New Open News」で紹介。

以下記事より抜粋──
「調和」「淡」「清らか」の言葉を胸に食材と真摯に向き合い、素材の持ち味「淡味」を生かすことを考えた日本料理店です。京都、徳島、東京と、それぞれ全く異なる空気と時間が流れる土地で修行を重ねた店主中村氏の、四季の旬菜を中心にした日本の自然を感じられるような瑞々しいお料理が楽しめます。

二つ星:SÉZANNE

写真:お店から

昨年の一つ星から二つ星に昇格したのが「フォーシーズンズホテル」にあるフランス料理の「SÉZANNE」。イギリス出身の若きシェフ、ダニエル・カルバートの繊細かつ独創的な料理の数々はオープン当初から食通をうならせてきた。今回の昇格も誰もが納得の結果だろう。

グルメ著名人の浜田岳文氏も「食べログマガジン」の記事内で「2022年に流行る店」として推薦していた。

以下記事より抜粋──
世界有数の若き才能と言っても過言ではないイギリス人シェフによるフレンチレストラン。フランス料理の古典に敬意を払いつつ、現代的に再解釈された料理は、シェフの美的センスが際立っている。
輝かしい修業歴はあるが、出身店を書くことが意味を成さないくらい、誰にも似ていないオリジナリティがある。

一つ星:一平飯店

写真:佐藤潮

麻布十番で本格的な中国料理が食べられる店として2022年3月にオープンした「一平飯店」。安達一平シェフの作る地味深い味わいのとりこになる食通が多数。

フードライターの森脇慶子さんも「現地で舌に叩き込んだベーシックな香港の味を、ときにストリートフード的な皿も交えつつ、味つけの細やかさや下ごしらえの丁寧さで品格あるテイストに仕上げている」と絶賛する。

以下記事より抜粋──
ワイルドさと力強さが持ち味の香港料理だが「一平飯店」では、日本料理ならではの季節感と食材を生かすアプローチをさりげなく加味。一歩引いた余韻のあるおいしさ。それが、安達シェフの目指すところなのかもしれない。

一つ星:NéMo

写真:松村宇洋

「カンテサンス」からの独立店ながらリーズナブルなランチ価格の設定で瞬く間に話題になったフレンチが「NéMo」。根本憲一シェフは食材の中でも特に魚に思い入れが強く、マカデミアナッツをまとった「穴子のベニエ」の印象は強く残った。

以下記事より抜粋──
穴子の食感を表現する際に「ふわっとした」やわらかさを示すことは多いが、同店の穴子はどちらかというとプリッとした海老に似た食感。根本シェフによると、新鮮な穴子は弾力があるのだという。魚を得意とし、鮮度にこだわる根本シェフだからこその仕上がりだ。

一つ星:TOKi

写真:松村宇洋

奈良のアンテナショップ「奈良まほろば館」の2階にある「TOKi」は、2018年「ゴ・エ・ミヨ」で「今年のシェフ賞」を受賞した、奈良のスペイン料理の名店「アコルドゥ」の店主、川島宙シェフが監修する店。店舗はアンテナショップの2階にあるとは思えないほど、ラグジュアリーな空間になっている。料理は奈良の食材を意識したモダンスパニッシュ。ランチはリーズナブルに味わえるのも人気の理由だ。

以下記事より抜粋──
メニューには具体的な言葉を添えたりはしない。訪れる人が、料理や店の雰囲気、スタッフの接客から奈良を感じてくれればいいという。そこに正解はない。ただ心地よい空間で、奈良の食材がたっぷり入ったランチを楽しむだけ。「TOKi」とはそんな場所であり、店なのだ。

ビブグルマン:浅草ひら山

写真:玉川博之

「浅草ひら山」の店主、平山周氏は両国にあるそばの名店「ほそ川」で修業後、日本料理の名店「銀座 小十」で研鑽を積んでいる。そばのおいしさはもちろん、一品料理にも定評があり、昼時には行列ができることもある人気店だ。2021年11月にオープン。

以下記事より抜粋──
そばもさることながら秀逸なのが、つけつゆだ。ほのかに椎茸の香りが香る、上品な味わい。基本はかつおと昆布の出汁だが、かつおはそば屋で多く使われる厚削りではなく、薄削りを使っている。そこに、香りづけの椎茸を入れているため、そばつゆでありながらも和食のお出汁の味わいに似た仕上がりになっているのだろう。

ビブグルマン:立喰 鮨となり

写真:伊藤晴世

独創的な寿司で人気の「麻布十番 秦野よしき」。2022年1月、その支店となるディフュージョンラインのお店「立喰 鮨となり」がオープン。「秦野よしき」仕込みの寿司が立ち食いスタイルでサクッと食べられるとして好評だ。

以下記事より抜粋──
オーナーであり寿司職人でもある秦野さんは修業時代「あの名店のあの寿司が食べてみたい」と思いを巡らせていた。しかしながら、若手の金銭的な厳しさからなかなか叶うことがなかったそうだ。そんな「あの一貫だけをどうしても食べてみたい」という思いを実現できるようにしたのが「となり」のはじまりだ。

ビブグルマン:麻布 勇

写真:玉川博之

東京・白金にあるミシュラン一つ星「私厨房 勇」の姉妹店として2022年の5月にオープンした「麻布 勇」。食通から「こんなお店が欲しかった!」と支持される理由は、アラカルトOKで気軽に使えるのに味わいは本格派だから。スペシャリティの「活鮑のリゾット風炒飯」は「私厨房 勇」でも人気のメニュー。鮑の肝の味わいがお酒を誘う、極上炒飯だ。

以下記事より抜粋──
食感はリゾットだが、味は間違いなくチャーハン。 肝ソースにはしっかりアワビの身も入っているので活アワビのコリコリした食感も心地よく、ご飯メューだがアルコールが欲しくなる。そう、これはもう立派な酒のパートナーと言える料理である。

ビブグルマン:乃木坂結

写真:松村宇洋

2021年2月20日、乃木坂にオープンした「乃木坂結yui」。店主の増山剛氏は「赤坂四川飯店」で修業をした後、「広尾 はしづめ」で腕を振るっていた。増山氏は旬を大切にしており、食材の持ち味を最大限に引き出すよう、油は控えめで仕上がりは軽やかだ。人気メニューはチキンスープと和風だしのWスープでつくる「担々麺」。

以下記事より抜粋──
「乃木坂結yui」の担々麺は、スープまですべて飲み干せてしまうと評判。ひと口目からガツンとくるようなテイストではなく、口に運ぶたびに身体に染み入るようにおいしさが増していく。

その理由は、スープに干しエビ、フライドエシャロット、芽菜(ヤーサイ)、松の実、そしてゴマといった多彩な具材が入っているから。さまざまな具からあふれだす旨みが複雑に絡み合い、味に奥行きが生まれる。辛みはひかえめで、流行の痺れる系担々麺とは一線を画す同店ならではの仕上がりだ。

ビブグルマン:入鹿TOKYO

俊太朗
出典:俊太朗さん

「食べログ ラーメン TOKYO 百名店」にも選ばれた東久留米の人気店「イルカ トウキョウ」が、2021年10月六本木にオープンした2号店。いつも行列しているが、今回のビブグルマン選出でますます人気になりそうだ。味が良いのはもちろん、接客もとても良いと評判。

ラーメン王の小林孝充さんも「今食べたいラーメン3選 2022(東京編)」でピックアップ。

以下記事より抜粋──
スープは鶏、豚、海老、貝からそれぞれ別々に取り、提供前に合わせるというカルテットスープ。重層的な旨味の波を演出しています。私がおすすめしたい「ポルチーニ醤油らぁ麺」は表面にポルチーニの香りの油が浮き、キノコから作ったペーストがのってきて香りも豊か。

ビブグルマン:ぎんざ かつかみ

写真:大谷次郎

2018年8月に銀座にオープンした「ぎんざ かつかみ」は、コース仕立てのとんかつが人気で「食べログ とんかつ 百名店」選出店でもある。トリュフバターをのせた肩ロースなど、今までのとんかつの概念を覆す提供方法で、とんかつの新たな魅力を教えてくれる。

以下記事より抜粋──
これまで“ごちそう定食”感覚が強かったとんかつをコースで提供するという斬新さでオープン間もなくしてたちまち話題に。とんかつはロースかヒレを炊きたてのご飯や山盛りキャベツとともに、という多くの日本人にすりこまれたイメージを打ち砕くコロンブスの卵的な発想もさることながら、実際にコースでさまざまな部位を食べ比べると、はっきり異なる味の個性に驚嘆する。

文:食べログマガジン編集部