新橋駅から約200m。中央通り沿いの、新橋と銀座の境に位置する奈良のブランドショップ「奈良まほろば館」。その2階にあるレストラン「TOKi」は、奈良のスペイン料理の名店「アコルドゥ」の川島宙シェフが監修する店だ。「アコルドゥ」は「The Tabelog Award」を3年連続受賞し、2021年2022年にはSilverに輝いている。予約なしで気軽にランチが楽しめるバルと、完全予約制のレストラン。2つの業態で奈良の味覚が楽しめる。
奈良の食材をふんだんに使い、奈良の魅力を発信
「TOKi」は、スペイン・バスク地方の言葉で「場所」という意味。そして「アコルドゥ」は、「記憶」。同店の料理は奈良の食材を8割以上使い、奈良の赤膚焼の器などに盛って提供される。店内のインテリアや、椅子、テーブルなどは奈良にゆかりのあるものばかり。この店は奈良の魅力をアピールする場所でもある。
厨房で腕を振るう長谷川豊シェフの料理は、創作の新味の奥に、遠い「記憶」へ誘う懐かしみがある。誰もが共感できる故郷の味。監修を務めた川島シェフは、新橋でそんな場所を作りたかったのかもしれない。
バルのランチは1,980円の1コースのみ
バルのランチは1,980円の1コースのみ。予約なしで入れるので、フラッと立ち寄れるのがうれしい。メニューは2、3週間ごとに替わり、コースはスープ、前菜、メインで構成されている。献立は奈良から送られてきた食材を見て、長谷川シェフが考えてカタチにしていく。
最初に出てきたスープは「奈良のいろいろ豆とキャベツと生ハムのスープ」。奈良の大鉄砲大豆、宇陀の黒大豆などが入ったスープは、バスク料理のガルビュール仕立てになっている。キャベツの甘味と生ハムの出汁がスープに溶け込んで、体を温めてくれる。
前菜は「倭鴨とヤマトポークのテリーナと奈良の蕪のサラダ」。繊細な盛り付けは長谷川シェフの真骨頂だ。鴨のパテには、蜂蜜と黒胡椒であえた奈良の赤蕪、赤らっきょうや人参のピクルスが添えられている。伝統葉物野菜の大和まなは、今の時期は小松菜よりえぐみが少なく爽やかなので、テリーナと相性がいい。寒さが厳しくなると甘味が増し、夏は反対にピリッと辛くなるといい、その時期ならではの奈良の食材を堪能できる。
メインはたっぷりの魚介で出汁をとった、「奈良のお米ヒノヒカリのアロスメロッソ」。煮崩れしにくい奈良県産のお米「ヒノヒカリ」は、歯ごたえもしっかりしていて、腹持ちがいい。「この時期は寒いから、来てくれたお客様には温かくなってもらいたくてこれをメインにしました」と長谷川シェフの思いやりもスープに溶け込み、優しい味になっている。
バルのコースにプラス550円で、ミニデザートとコーヒーが楽しめる。この時期はアーモンドの香ばしい味がたまらない焼き菓子「タルタ・デ・サンティアゴ」を提供。添えられているのは、奈良のイチゴ「古都華(コトカ)」のアイスクリームだ。散りばめられたレモンの皮がアクセントになって、お腹いっぱいでもペロリと食べられる。