アラカルトとコースの2本立てが売り

テーブル席をメインに、3席のカウンター席もある。

東京・白金の「私厨房 勇」といえば、ミシュランの一つ星の店として名高いが、そんな同店の姉妹店が5月15日に西麻布にオープン。それが「Azabu Yung 勇」である。「私厨房 勇」のメニューはおまかせコース1種のみだが、「Azabu Yung 勇」は7,500円のコースとアラカルトメニューの両方を提供。このアラカルトが大変充実しており、好きなものをアレコレ楽しめる気軽さが大きな売りとなっている。ランチも前日までの完全予約制で営業し、こちらは3,800円のコース1種のみである。

「私厨房 勇」の選抜メニューが勢揃い

「活鮑のリゾット風炒飯」は、「私厨房 勇」の追加メニューにある一品。

まず「Azabu Yung 勇」の料理を説明する前に、姉妹店である「私厨房 勇」のメニューを紹介したい。それは「Azabu Yung 勇」のメニュー「私厨房 勇」の豊富な料理の中から“選抜”して構成されたものだからだ。

「私厨房 勇」のメニューはコース1種といっても、満足感を高めるため客によって毎回、料理内容を変えるなど手間をかけている。さらに、リピーターの客には来店回数に応じてコース内容をすべて変えるほど、客の側に立った商品を提供しているのである。その結果、料理のバリエーションがどんどん増えていく。追加メニューも含めた中から、選りすぐりのメニューが「Azabu Yung 勇」で味わえるのだ。

香り豊かなエビワンタンで香港の魅力を体感

ネギとピーナッツの香りがたまらない「海老雲吞 フィッシュソース」。

「Azabu Yung 勇」のメニューの贅沢さが分かると、何を食べるか選びきれずに迷ってしまう。そんな時にオススメなのが、代表的香港料理の一つである「海老雲吞 フィッシュソース」1,200円。これは「私厨房 勇」の原勇太シェフが「日本人にも、ぜひそのおいしさを知ってもらいたい」とメニューに組み込んだもの。

茹でたエビワンタンに、せん切りの長ネギと茗荷をのせて、高温に熱したピーナッツ油をジュワーッとかけているので、ネギとピーナッツの複合的な香りに鼻腔をくすぐられ、食欲を大いにそそられる。

しっかり食べ応えのあるサイズがうれしい。

ワンタンの具材のエビは大きめに切りつけられていてとても弾力があり、食感もプリプリ。ボイルするため、どうしても皮が水分を吸って水っぽくなりやすいが、フィッシュソースや、ネギとピーナッツ油の香りづけで、ワンタンのおいしさを引き立たせている。

大きめに切ったエビの食感が、何ともクセになる。

フィッシュソースは「魚汁(ユイチャー)」とも言い、香港ではエビワンタンの他に、蒸し魚料理などにも使われる魚醤のようなソース。同店では日本人にも親しみやすい味にしようと、粉末のカツオ節を隠し味として加えている。初めて食べた人も、どこかしみじみするおいしさを感じるのは、この和風の隠し味があってのものだ。

なお、同店の料理はどれも、2人で食べるのにちょうどいいボリュームとなっている。

和牛レバーと黄ニラの豪華なレバニラ

レバニラが苦手な人も食べやすい「和牛レバーの勇式レバニラ」。

しみじみするおいしさという意味では「和牛レバーの勇式レバニラ」2,400円も外せない。レバニラは定番の中国料理だが、その特有のにおいが苦手な人もいる。だが、同店のは贅沢に和牛のレバーを用い、ニラも黄ニラを使用した豪華版。食材の名前を聞いただけで、期待感がどんどん高まっていく。

外カリッ、中トロリ。絶妙な仕上がり。

和牛レバーは油で揚げて表面をコーティングするため、外はカリッとしていて中はトロリ。野菜は黄ニラの他、赤玉ネギ、ゴーヤなど、その時々の魅力のものを用いるので毎回変わり、楽しみだ。さらにフライドガーリックの食感も心地よい。

和牛レバーは新鮮なものを丁寧に下ごしらえしており、各種調味料を合わせたものに2時間以上漬け込んでいる。レバーは火が入ると表面が白くなるため、色づけと味に深みを出す狙いで下ごしらえに中国のたまり醤油も用いる。手間をかけているので、臭みがなくて、やわらかく、そしてコクがあるレバーに仕上がっている。レバニラが苦手な人もきっと満足するであろう、とびきりのおいしさだ。

“いいとこどり”したリゾットのようなチャーハン

新食感に誰もが驚く。

一方、定番でしみじみおいしいだけでなく、さらに“新しい”料理が「活鮑のリゾット風炒飯」2,800円だ。“リゾット”と“チャーハン”という同じご飯もののメニューでありながら、作り方も食感も異なる料理を見事に融合させた、独自性の高い料理である。何でもここ数年、注目を集めている新進気鋭の中国料理とのこと。

香港には干しアワビのタレを使ったチャーハンがあり、「私厨房 勇」のコースにも初めての客に出す「活鮑のチャイニーズステーキ」というメニューがある。そのステーキソースを用いてチャーハンに仕立てたのが、「Azabu Yung 勇」の「活鮑のリゾット風炒飯」なのだ。

「活鮑のリゾット風炒飯」は、「私厨房 勇」の「活鮑のチャイニーズステーキ」のソースを取り入れたもの。

“リゾット風”となっているが、基本は通常のチャーハンだ。ご飯をあおって、あおって、玉杓子で押さえの工程を繰り返し、玉子の中にご飯を押し込むイメージでコーティング。これでパラパラのチャーハンができあがる。そこに“アワビの肝ソース”を合わせて仕上げる。

しっとりではなく、パラパラしたチャーハンだからこそ、とろ~っとした“アワビの肝ソース”との塩梅で絶妙な“リゾット風炒飯”になるのである。

「活鮑のリゾット風炒飯」はランチ、ディナーともコースの“お食事”に組み込まれ、プラス1,000円で選ぶことができる。

食感はリゾットだが、味は間違いなくチャーハン。 肝ソースにはしっかりアワビの身も入っているので活アワビのコリコリした食感も心地よく、ご飯メューだがアルコールが欲しくなる。そう、これはもう立派な酒のパートナーと言える料理である。