名店出身のシェフによるモダンフレンチ
表参道駅から徒歩10分ほど。骨董通りから六本木通りに向かい、横道を1本入ったところに「NeMo」がある。
ナチュラルな白木でまとめられた店内には丸テーブルとソファチェアがあり、居心地がよい。根本シェフが大切にしている季節感や自然の恵み、自然への感謝が形となっている。
魚をメインにした約10品のコース
同店のメニューはディナー、ランチともに「おまかせコース」がひとつずつのみ。その日仕入れた材料によって毎日メニューが変わっていく。興味深いのは、いわゆる前菜、スープ、魚料理といったフレンチのフルコースの流れにこだわっていない点だ。
理由はいたってシンプル。食材からメニューを考えるときに、コースの順番といった決まりごとがあると食材の可能性を妨げてしまうからだ。その食材を最もおいしい状態で出すのであれば、必ずしもアミューズや前菜、スープの流れである必要はない。
そのため同店のメニューには、蛸、穴子といった食材名だけが紹介されている。もちろん季節によってはスープというメニューも入っているが、それもすべては食材次第といったところだ。
コースの最初は「海幸・山幸(うみのさち・やまのさち)」。初めての来店であれば、最初に提供される一皿だ。
この日の「海幸」は、貝でとった出汁をかんぱちに和えたものと、カラスミを少々。サイコロ状のかんぱちは、刺身としてのおいしさをちょうどよく感じることができるサイズだ。
「山幸」は蓮根やオクラ、枝豆、ハーブなど。カリッと揚げた蓮根の歯ごたえをアクセントにしながら、オクラが全体を絡めてまとめ上げ、ハーブが香りを加えている。まさに、コースのスタートにふさわしい華やかな一品だった。
“ふわっ”ではなく“プリプリ”な食感は、新鮮な穴子の証
メニューに「穴子」とだけ書かれていたのは、新鮮な穴子のベニエにローストしたマカデミアナッツをまぶした一皿だ。
穴子とナッツ。これが驚くほどに合う。マカデミアナッツの香ばしさが穴子を引き立て、下に敷いた根セロリが爽やかさを出している。さらに、ザクザクとした音も楽しみながら、食べ進めることができる。
そしてもうひとつ驚いたのが、穴子の食感だ。穴子の食感を表現する際に「ふわっとした」やわらかさを示すことは多いが、同店の穴子はどちらかというとプリッとした海老に似た食感。根本シェフによると、新鮮な穴子は弾力があるのだという。魚を得意とし、鮮度にこだわる根本シェフだからこその仕上がりだ。