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知り合いの漁師から仕入れた鮮度抜群の魚たち

「NeMo」が大切にしているもののひとつに食材への愛情と感謝がある。それは根本シェフが幼いころから自然に親しみ、なかでも釣りを嗜んでいたことが大きい。釣った魚は責任をもって、その魚が最もおいしい方法で食べる。そうしたなかで出会ったのが、一般流通にはあまりのらない「梅色(ウメイロ)」という魚だ。
白身魚の梅色は淡白で上品な味わい。体色が梅の色をしていることからその名がついている。知り合いの漁師から今日、届いたばかりだという梅色を見せてもらったが、うつくしい色味にまだ生きているかのような澄んだ目。1匹ずつ竿で釣ることから、魚体に傷がなくつやつやと輝いていた。
この日の梅色はポワレでいただく。表面にはしっかりと焼き目をつけるものの、絶妙な火入れで実はしっとりした食感だ。パリパリとした皮目とのバランスが良い。焦がしバターでコクを、ドライトマトで酸味を出したソースがぴったりだった。
お店だからこその「出来立て」を味わう贅沢

コースのほとんどが魚を使った料理だが、肉料理も提供される。日によって異なるが、7~8皿の料理が提供され、最後にデザートとなる。
この日のデザートは、スフレとアイスクリーム。ランチではワンサイズ大きいプレーンのスフレを提供。ディナーでは、トリュフを入れたトリュフスフレと、同じくトリュフたっぷりのアイスクリームとなる。口の中にトリュフの香りがいっぱいに広がる大人のデザートだ。
スフレは出来立てのふわふわ、ふるふる。できるならば写真を撮る時間も惜しんで食べるべき一品と言えるだろう。
若きシェフのこだわりと挑戦

根本シェフとの会話では「レストランならでは」「出来立て」という言葉が何度か登場した。デザートをスフレにしているのも、出来立てでしか食べられないものだからだ。
穴子も梅色も出来立てのザクザク、パリパリとした食感や音が料理を奥深いものにしていた。「お店に食べに来ている以上、そこでしか提供できないものを味わってほしい」という根本シェフのこだわりのひとつだ。
絵画のような仕上がりを生む、国内の若き陶芸作家の器たち

同店のコースにはもうひとつの楽しみ方がある。それが器だ。
同店で使用する食器は、すべて根本シェフがイチから探してきたもの。主に、若手の陶芸作家のものを使っているそうで、「NeMo」のために初めてレストラン用の洋食器を作ったという作家も多いという。
例えば、最初に提供される「海幸・山幸」の食器。蓋は手彫りで穴を開け、レースのように仕立てている。光に透かすと精巧な模様が浮かび上がり、その繊細さに見惚れてしまう。この模様はひとつずつ異なっているそうで、複数人で訪れた際には互いの食器を見比べてみるといいだろう。

穴子の食器は女性作家のもの。花弁のように広がったカーブは、手仕事でつくられていることから、やはり一皿ごとに微妙に異なっている。
いくつもの窯元を実際に回って探し出してきた作家も多く、料理と器が互いを引き立てあった、うつくしい料理たちだ。
ノンアルコールで楽しめるティーペアリング

フランス料理にはやはりワインを合わせたいが、アルコールが得意でない人向けに同店が提供しているのがティーペアリング(ランチ3,200円、ディナー4,600円)だ。料理に合わせ、こだわりの茶葉が揃う台湾茶や日本茶、ときに紅茶などをセレクト。5~6種類ほどを提供する。
お茶は種類に限らず、温度や抽出時間でコクや渋みがまったく異なってしまう。台湾茶は水出しにすることで渋みをほどよく抑えまろやかにし、緑茶はコクのある「かぶせ茶」ながら温度を高めにすることでわずかな渋みを引き出し、清涼感を出している。
この日、穴子のベニエに合わせた緑茶の「さえみどり」は、緑茶のさわやかさが次のひと口を誘ってくれるものだった。
予約が取りにくくなる店となるのは必須

現在はまだ平日のディナーには空きがある「NeMo」。しかしすでに土日は予約で埋まることも多いという。今後はどんな魚料理が楽しめるのか。魚を良く知る根本シェフの、次の一手に期待が高まる。
※価格はすべて税込、サービス料別
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。
※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。
※本記事は取材日(2021年9月1日)時点の情報をもとに作成しています。
取材・文:岡崎たかこ(grooo)
撮影:松村宇洋