海老山登山はブームになるか?
プレオープンから行列ができるという偉業を成し遂げたのが「海老山」(7月16日グランドオープン)です。プロデュースはご存じ、光山英明さん。2012年、吉祥寺の外れに「肉山」を開店。5,000円ぽっきりの赤身肉コースが話題を呼び、「肉山に登山する」という言葉はグルメ好きの間で大流行しました。当時からSNSを駆使しての集客が抜群に上手で、光山さんと「豚組」の中村仁さん(現「トレタ」社長)が双璧だったと記憶しています。
「海老山」はどんな世界情勢にも左右されない、高級食材も銘柄食材も使わないスタイルを目指し、メニューは海老かつ丼とかつ丼のみ。卵でとじていないので、サクッと揚がった海老の食感も楽しめます。甘辛いタレゆえでしょうか、ボリュームたっぷりなのに、なぜか翌日も食べたくなるという中毒性があります。
明治通り沿いの路面店とはいえ、渋谷と恵比寿の間で決して行きやすい場所ではありませんが、そこに行列を生むのが光山マジックなのです。
恵比寿では有名寿司店の二番手が、門前仲町では老舗フランス料理店の総料理長が独立!
みんなが大好きお寿司部門では、7月3日、恵比寿にオープンした「すしさとる」でしょう。台形のカウンター6席、コース13,200円で、親方は「麻布十番 秦野よしき」で二番手だった元プロボクサーの荒木悟さん。マグロは「すきやばし次郎」と同じフジタ水産から。その身質にほれ込み、藤田浩毅社長のもとに通い続けて扱えるようになったそうです。
実は恵比寿で元プロボクサーといえば先輩がいます。かの有名な五反田「ヌキテパ」の田辺年男シェフ。独立最初の店が恵比寿「あ・た・ごおる」でした。とても小さなフランス料理店でしたが抜群のおいしさだったことを覚えています。
これもなにかの縁。27歳にしてスポンサーなしで完全独立した荒木さんも、素晴らしい寿司職人になって欲しいですね。先日伺いましたが、独自の工夫を凝らしていて、情熱とオヤジギャグはすでに一流でした。
フレンチつながりでいくと「銀座レカン」7代目総料理長だった渡邉幸司さんが7/21、最近やたらといい店ができている門前仲町に、ビストロ「渡辺料理店(わたなべりょうりみせ)」をオープンしました。“みせ”という呼び方は、シェフが生まれ育った大阪や京都で使われるようです。この原稿を書いている時点ではまだお邪魔できていませんので、どうぞ小松宏子さんの記事をご覧ください。
和食は全くコンセプトの違う3店に注目したい
和食も元気です。7月16日、広尾にオープンした「日日の料理 びおら」の料理監修は、武者小路千家十三世家元を父に、茶懐石料理研究家を母に持つ料理研究家の後藤加寿子さん。娘のすみれさんがオーナーです。“当たり前”や“普通”を突き詰めることで生まれる気品。その世界を味わってみたいですね。
7月4日、恵比寿ガーデンプレイスにできた「青ちょうちん」は、白金高輪の人気和食店「あき山」の姉妹店で、おでんと日本酒のお店です。レセプションでは「鮨竹」「鮨処やまと」「鮨桂太」「常盤鮨」「冨所」といった人気寿司店の若手親方たちが握りを披露したそうです。「鮨 真」出身、(青ちょうちんの店主)秋山英登さんの人徳でしょうか。
同じく7月4日、麻布十番にオープンした「麻布室井」は、すでに11月まで予約で満席。31歳の室井大舗さんは「石かわ」「紀茂登」という有名店で修業したとはいえ、コース39,600円(サービス料別)でこの人気、すごいですね。ちなみに同じ建物の2階には「薪鳥 新神戸」などで絶好調、末富信さんの「膳処末富」がオープン予定で、こちらも期待大です。
ジャンルは変わりますが、麻布十番といえば7月15日に元「ル・ブルギニオン」のソムリエ松田慧さんが、ブルゴーニュのワインバー「élevé (エルヴェ)」をオープンしています。ブルギニオンといえば、ブルゴーニュワインで有名ですから、品ぞろえの良さは推して知るべしでしょう。同店で共に働いた川面シェフの料理も魅力的です。
「TACUBO」の田窪大祐シェフも、7月6日に「ミラク」というワインバーを代官山にオープンしました。こちらはナチュール中心で軽食のみ。2軒目使いに重宝しそうです。
7月は他にも「ウルフギャングステーキハウス」のオーナー、ウルフギャング・ズウィナーさんが手掛ける表参道のゴージャスなイタリアン、というかアメリカンレストラン「IL LUPINO PRIME(イル ルピーノ プライム)」(7月1日)、「ヨヨナム」や「ピポンペン」の姉妹店でアジア料理とナチュラルワインの「椎數莊(シースーソー)」(7月6日 八丁堀)、「SENSE」初代料理長で「Cantonese 燕 KEN TAKASE」などをオープンさせた高瀬健一さんの中国料理店「Ino Cantonese 日本橋たかせ」(7月6日 人形町)など百花繚乱。
気になるお店はありましたでしょうか。