メインのソースは香り豊かなウーシャンで食欲増進

メインはじっくり時間をかけて焼きあげたフランス、ドンブ産の小鴨のむね肉と、低温でじっくり煮た鴨のコンフィをほぐし、そこにマッシュルームなどをつぶしたものを合わせて包んだガレットの2種類になっている。ソースは鴨出汁と、多くの香辛料が配合されたウーシャンという調味料を合わせたもの。スパイスの香りが、食べる前から嗅覚を刺激し食欲をそそられる。

このコースはメインまでゲストが楽しめるよう、アミューズブッシュは少しだけ塩味を強くしてワインが進むようにし、後に続くアミューズ、前菜、魚料理は塩味を加減している。それはメインでパンチのあるソースを提供するため、そこに向けてゲストの胃が疲れたり、味に飽きたりしないようにというシェフの配慮だ。
竹炭のメレンゲを崩すと、クレームブリュレとオレンジが姿を見せる

デザートは縦長の竹炭のメレンゲが3枚立てかけられた、大胆な盛り付けの一皿。隠された内側への期待を込めてメレンゲを優しく崩すと、クレームブリュレと、コンポートされたオレンジが姿を見せてくれる。
シェフの遊び心も入ったこのデザートは、見た目も楽しく、思わず笑顔がこぼれてしまう。楽しい食事を締めくくるのにはピッタリなデザートだ。今回はオレンジだったが、パプリカのコンポートで提供されることもある。「パプリカのコンポート?」とこれも気になるところだが、次回の食事の楽しみにしたい。

コースの最後は一口大のアーモンドのチュイール、桜色のマカロン、チョコレートとマドレーヌが盛られた小菓子が提供され、飲み物で終了となる。
なお、ディナーのコースはランチの品数に3品程度、増える構成で展開している。またメニューも2か月に1度は内容がかわるので、季節の味が楽しめる。
食事とともに楽しみたいフランス産のワイン

ワインはフランス産のものだけを扱い、ボルドー、ブルゴーニュ、アルザス、ロワール、ジュラ、ローヌなど、ほぼ全土のもの約80種を揃えている。価格帯も様々だが、7,000~25,000円ぐらいのものが中心。
グラスワインもシャンパーニュ、赤、白、とあるので、料理にあわせて種類をかえるのもいいだろう。
「64歳、人生最後の挑戦です」と言う榎本シェフ

8年ぶりに厨房に戻ってきた榎本シェフは「今、楽しくて仕方ないんです。自分の料理がまた作れること。そしてそれをお客様に提供できる環境に戻ってこられたことが」と、笑顔で語ってくれた。シェフの喜びは料理からも十分に伝わってくる。「64歳だから、この店が人生最後の挑戦です」と何度も繰り返す榎本さん。足元を見ると、新店舗に合わせて用意したという新しいオレンジのコックシューズが眩しかった。
これから冬になり、ジビエの季節がやってくる。ジビエ料理の第一人者である榎本さんの料理を心待ちにしていた多くの食通たちが、この店にも押し寄せるだろう。
西麻布にフランス料理の名店がまた一つ増えたことは間違いない。

※価格はすべて税込、サービス料別。