【カレーおじさん \(^o^)/の今月のカレーとスパイス】2021年7月を振り返る

夏本番を迎えました。7月は北海道で進化するスパイスカレーの名店から始まり、下北沢のスパイスたこ焼き、新御茶ノ水で頑張る三代続く古き良きカレー、店舗数を増やしているスリランカスタイルのスパイスカレー、そして暑い時期にぴったりのタイ南部料理のお店をご紹介しました。

暑い夏だからこそ、スパイスが利いたカレーを食べると汗が出て涼をとれ、気持ちが良いものです。ちょうどスポーツの祭典も開催していますから、カレーを食べながらそれを見ると、食べているだけなのに一緒に汗もかけて一体感を得られるかもしれませんよ。

【第1週のカレーとスパイス】出汁カレーにスパイスカレーも。スープカレーじゃない札幌カレーの注目すべき3店「ニシジルシ」「未来カレー こりす」「のんびりスパイス酒場 harappi」

札幌で生まれ、全国に広がったスープカレー。ここ数年のカレー人気の高まりと共に都内でも店舗が増え続けています。今回僕は仕事でしばらく北海道に滞在していたのですが、そこで感じたのは、ご当地札幌でもスープカレーは相変わらずの人気ではある一方で、スープカレーではない他のカレーも盛り上がってきていることでした。今回は特別編ということで、2021年の札幌において、スープカレーではないカレーで注目すべきお店を3店舗ご紹介したいと思います。

出汁カレーに注目「ニシジルシ」

札幌市電・西線6条駅と東本願寺前駅の間くらいにある住宅街の中に店舗を構える「ニシジルシ」。こちらのカレーは、ここ数年カレー界の先頭を走るとも言える都市である大阪の、しかも2021年の今の大阪を感じさせる、出汁カレーのお店です。

鰈(カレイ)とアオサのカレーと牛豚あいびきサグキーマ」

ある日の限定メニューは、「鰈(カレイ)とアオサのカレーと牛豚あいびきサグキーマ」1,000円。その名前からして実に大阪的。サグとは青菜のカレーのことなのですが、通常はほうれん草を使うお店が多い中、こちらのサグは菜花、ニラ、コリアンダー、パセリ、青唐辛子、緑茶を使って緑色に仕上げているという手の込みよう。しかもそれがちゃんと味の根幹になっているのです。

もうひとつのカレーもカレイのカレーと駄洒落的ですがそれもある意味大阪的。アオサのうま味も加わって奥深い味わい。副菜も個性を感じ、2種類のカレーと副菜を混ぜて食べるとおいしさが跳ね上がります。そして全てを食べた後に感じる和食の雰囲気。大阪の一つの潮流となっている出汁カレーの楽しさとおいしさを札幌で味わえる貴重なお店です。

自家製パンとの食べ合わせに注目「未来カレー こりす」

食べログ カレー EAST 百名店」にも選ばれている名店です。こちらの特徴はカレーに合わせる為の自家製パンがあること。一見ナンにも見えるのですが食べてみれば確かにパン。パンの食感としてイメージする、モチ、フワ、サクという食感をすべて味わえるパンであり、シンプルだからこそ小麦の風味が活きていてとてもおいしいです。

そしてこのパンはカレーと合わせて食べることによってその魅力を完全に味わえるもの。ランチタイムはカレーの値段でライスかパンどちらかが付いてきます。「焼きチーズカレー」980円にパンを合わせていただきました。

「焼きチーズカレー」

トマト強めなチキンとしめじのカレーにチーズのせ。パンとの相性を考えて選んだのですが、完璧な組み合わせでした。北インド料理的な魅力も感じるのですが、それとも違う個性を持っていて、クセになります。思い出しただけでまたこのパンが食べたい!

カレーの種類も豊富で、中には確実にライスの方が合うであろうカレーもあるので、そのあたりは柔軟に、もっともおいしく食べられる組み合わせを考えながら食べるのもきっと楽しいですよ。

スパイスカレーに注目「のんびりスパイス酒場 harappi」

東京ではすっかり定着し、全国に広がりつつあるスパイス料理やカレーでお酒を飲むというスタイル。札幌でも見つけました。それがこちらです。現在は営業時間も早めの前倒しとなり、カレーがメインとなっているので「本日のカレープレート」1,370円にカレー追加(495円)していただきました。選べるカレーはパキスタン風チキンとラムカシミールで。

「本日のカレープレート」にカレー追加

パキスタン風チキンは昨今全国のカレー店で「無水チキン」と呼ばれる形で広がっている、「サリサリカリー」を思わせるチキンカレー。実はサリサリカリーの源流は北海道にある「カラバトカリー」であり、ある意味北海道的とも言えるカレーなのです。こちらのパキスタン風チキンは逆にカラバトよりもサリサリに近いテイスト。濃厚でおいしいです。

カシミールと言えば日本のカレーの歴史を語る上では欠かせない「デリー」の看板メニューですが、こちらのカシミールもしっかりとした辛さとニンニクの香りがカシミール的。それでいて具材がラムというのが北海道的であり、北海道だからこそのおいしさでした。マスターが全国のカレーを食べ歩いているからこそ作れる絶品カレーです。

このようにスープカレー以外にも個性があっておいしいカレーが増えている札幌。専門店のみならずカフェやバーでも様々なカレーが増えているのを発見しました。札幌においてはカレーの楽しみ方も確実に自由度が増してきています。北海道の良さは素材自体のおいしさが群を抜いているということ。そんな素晴らしい素材で作るカレーは当然おいしいのです。

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2021年6月28日)時点の情報をもとに作成しています。

【第2週のカレーとスパイス】大阪の2大名物が見事に融合! 下北沢で話題のスパイス料理&スパイスたこ焼き屋さん「タコムマサラダイナー」

夏と言えばやっぱりお祭りシーズンですが、昨年からのコロナ禍で夏祭りらしい気分をなかなか味わえない状態が続いてしまっています。夏祭りと言えば屋台。縁日などで食べるたこ焼きは不思議とおいしく感じられたのを思い出しますね。

東京では日常的にたこ焼きを食べるという程ではないですが、大阪では日常的に食べるものとして定着しています。大阪名物と言えば、昔はたこ焼きなどのいわゆる粉ものでしたが、今はスパイスカレーも名物であり、大阪市内に限って言えば粉もののお店の数を近年カレーのお店の数が抜いて多くなったとも言われています。そんな2大大阪名物であるたこ焼きとカレー。これを見事に融合させたお店が下北沢の「タコムマサラダイナー」です。

こちらのたこ焼き、スパイスを使用しているのですが、そのスパイス感とだし感がまさに大阪カレー的。「スパイスたこ焼き」6個560円は、見た目は普通のたこ焼きですが、割ってみるとカレーのような色合い。たこのみならずズッキーニなどの野菜や、レーズンまで入っているという個性派。それぞれの食感と味が混ざり合うとカレーを食べているような感覚になるという、非常に面白く、おいしいたこ焼きなのです。

「スパイスたこ焼き」

最初は何もつけずに味わい、その後で卓上のイチジクを使った甘口ソース、ごま油醤油麹、スパイス塩昆布などをつけて食べるとまた変化が出て、1人で6個でも足りないくらい。お酒のアテとしても最高なのですが、このご時世ですから今回はソフトドリンクを飲み比べしてみました。

写真左から「タコムクラフトコーラ」「スパイスプーアル茶」「タコムクラフトジンジャーエール」

「タコムクラフトコーラ」450円はスパイスとシロップを合わせた自家製コーラ。昨今カレーのお店でクラフトコーラを出すところが増えていますが、カレーに使うスパイスとコーラに使うスパイスって実は共通するものが多いので納得ですし、違和感のないおいしさに仕上がっています。

「タコムクラフトジンジャーエール」450円はしっかりと生姜が利いており、さらにはチリの辛味も感じるスパイシーなドリンク。お酒が入っていなくてもお酒を飲んだような感覚になれます。そもそもジンジャーエールは禁酒法の時代のアメリカで、お酒の代わりになる飲み物として人気を博したという史実があります。今の東京に悲しくもぴったりな飲み物とも言えるわけです。

炭酸系が苦手な方には「スパイスプーアル茶」450円もあります。こちらはカルダモンの皮とプーアル茶を一緒に煮出したという爽やかな飲み物。カルダモンの甘く華やかな香りがお茶と見事にマッチしています。

「タコム風プルドポークライス」

こちらのお店、通常時はディナータイムのみの営業なのですが、コロナ禍でランチタイムを始めました。ランチタイムはカレーライスもあるのですが、お店イチ押しメニューとして「タコム風プルドポークライス」1,000円もあります。

プルドポークはアメリカのBBQ料理で元々スパイスも使用する料理なのですが、こちらはそのスパイス感をさらにレベルアップさせたもの。焼いてほぐした豚肉と一緒にトマトの酸味の利いたチリビーンズが盛り付けられており、それぞれ食べればおいしいプルドポークとおいしいチリビーンズなのですが、混ぜて食べてみると一気にカレーに近づいてくるという興味深い一皿です。

「スリランカ風カツオのカレー」※ カレーの内容やメニューは日替わりで時期によって変わりますので、詳しい情報はお店のSNSで確認してください

でもやっぱりカレーも食べたい! ということで「スリランカ風カツオのカレー」をご飯無し(750円)でいただきました。通常ランチのカレーはスパイスカレープレートということでご飯と副菜がついて1,200円なのですが、ディナータイムはカレーのみでの注文が可能です。今回は特別にランチだったのですがカレーだけで頼んだという次第。

そんなの紹介するなよと言われそうですが、マスターに「この記事を読んだ方から同じような注文がきた場合は受けてくれますか?」と聞いたところ、「カレーの小鉢的メニューができるように検討します!」と答えてくれたので、是非聞いてみてください。

話が少しそれてしまいましたがスリランカカツオカレー。これまたおいしい! 何しろマスターは大阪カレーを代表する名店のひとつである「旧ヤム邸」のメインシェフの一人だった方なので、カレーの専門家なのです。スリランカ料理でよく使われるゴラカを感じるスパイス使いであり、鰹節のだしがよく利いています。

スリランカと言えばモルディブフィッシュでだしをとる料理が多いので、そのあたりもスリランカ的。スリランカ現地の味そのままではないのですが、オーセンティックな料理法をちゃんと理解した上で日本的に仕上げてオリジナルのおいしさに仕上げているのは流石です。

こんな時期ですがスパイスドリンクやスパイスたこ焼きでお祭り気分を思い出させてくれて、ランチのプルドポークとカレーも最高のおいしさ。今年2月にオープンしたお店なので、カレー激戦区下北沢においてはまだそこまで知られてはいないのですが、マニアの間では既に支持されている名店です。店内はアジアを感じさせる内装で、旅気分も味わえます。今こんな時期だからこそ、特におすすめの素敵なお店ですよ!

※本記事は取材日(2021年7月5日)時点の情報をもとに作成しています。