【カレーおじさん \(^o^)/の今月のカレーとスパイス】2021年6月を振り返る

今月のカレーとスパイスは、北千住の人気店が新たに始めたカレースタンド、すっぽん料理のお店がマニアックなタイ料理を加えて進化、本場イタリア・フィレンツェで修業したシェフが作るスパイスカレーパスタ、そして北海道の素材を活かした南インド料理の4店舗です。

2店舗目、3店舗目はコロナ禍だからこそ生まれた新しい形。1店舗目はこの状況下でも果敢に攻める姿勢が素晴らしく、4店舗目はもはや北海道の宝とも言えるお店です。様々な場所で様々なカレーとスパイス料理があります。これから暑くなっていく季節。スパイスで気持ち良く汗をかいてスッキリしていきたいですね!

【第1週のカレーとスパイス】伝統の味に独自性をプラス。悪魔的おいしさを堪能できるカレーの新店が北千住に誕生「DEVIL CURRY

JR北千住駅前にある飲み屋横丁に、注目の新カレー店が誕生しました。その名も「デビルカレー」。実はこちらのお店、北千住の人気店である「タンブリンカレー&バー」が手掛ける3店舗目の系列店なのです。

「タンブリンカレー&バー」は、カレーやスパイス料理とお酒を飲めるお店。2店舗目の「ビリヤニ食堂」は店名の通りビリヤニがメイン。そして3店舗目のデビルカレーは、カレーライスに特化したカレースタンド的なお店となっています。

カレースタンドと言ってもそのおしゃれさは流石タンブリン系列だけあるなと思える空間。カウンターのみの小さなお店で、紫を基調とした内装は洗練されておりカレーのお店には見えないのですが、それでいてカレーがぴったりとハマる雰囲気です。

メニューはシンプルにカレーライスが数種類とドリンク。店名を冠したデビルカレーは極辛口。今回は「デビルカレースペシャル」1,300円をいただきました。

「デビルカレースペシャル」

スペシャルは通常のデビルカレーと具材が違い、三元豚をトロトロに煮込んだものが存在感ある大きさで入ります。この豚肉の上にはコリアンダーシードが散りばめられており、しっかりとした辛さのグレイビーと豚肉の甘味がおいしさのアウフヘーベンを繰り返し、そこにコリアンダーの爽やかさが花を添えるという完璧な三角形。「おいしい! めっちゃおいしい!」と思わず繰り返しながら食べました。玉葱のピクルスの酸味もまたよく合うのです。

タンブリンはスリランカ料理も出すお店なので、デビルというとスリランカのデビル(肉や魚介や野菜などをチリソースで炒めた料理)を思い浮かべる方もいるかと思いますが、こちらのデビルカレーはスリランカ料理ではなく、わかりやすく言えば老舗「デリー」のカシミールカレーに近いものです。

何しろこちらのマスターは「デリー」から派生した「ボンベイ」で修業されていた方なので、正統派のカシミールを受け継いだ味です。それでいてそのままの味ではなく、ちゃんと個性のある味に仕上がっているのが素晴らしいですね。

「マトンキーマカレー」

辛い物が苦手な方には辛さを抑えたカレーや辛さを選べるものもあります。辛さの選べる「マトンキーマカレー」1,200円は羊の挽肉がたっぷり。てんこ盛りに盛られたキーマのまわりにパクチーやグレイビーも添えられる形です。肉の旨味がスパイスとパクチーによって強く感じられ、これまたご飯が進みまくるおいしさ(ちなみにご飯の量は通常かなり多めなので、写真にあるものはどちらも少な目でのオーダーとなっています)。

マスターにお話をうかがうと「自分の中で原点回帰なカレーなんです」と語ってくれました。確かに修業先であるボンベイを思わせる雰囲気もありつつ、その後に積まれた経験や知識を活かして進化したカレーです。同じようでいて違うのです。ただ一周回った原点回帰ではなく、一周回ったら上の階層に上っていたというような原点回帰。デリーやボンベイのカレーが好きな方にとっても、違った楽しみ方ができると思います。

北千住という街において3店舗。それぞれ少しずつベクトルが違ったおいしさと楽しさがありつつも、大事な根幹はブレずに保っているという凄まじさ。お近くに在住在勤の方は是非食べ比べてみてください。これからもこの街のカレーをますます盛り上げていってくれることでしょう。

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2021年6月1日)時点の情報をもとに作成しています。

【第2週のカレーとスパイス】メニュー充実のランチも開始! 地元で愛される日本料理店がすっぽんとタイ料理店に驚きのパワーアップ「すっぽんとタイ料理 月島源平」

東京・月島のすっぽん料理を中心とした「日本料理源平」が、2020年9月から「すっぽんとタイ料理 月島源平」に生まれ変わりました。

すっぽんとタイ料理という組み合わせ、ほかでは見たことがありません。一般的にあれもこれも色々とやるお店よりも、ひとつのメニューに絞って出す専門店の方がおいしいと思われがちですが、例外は意外とあるのです。こちらのお店もまさしくその例外的においしいお店であり、すっぽんとタイ料理という一見つながりがなさそうに見える料理をどちらも出すということは、どちらにも自信があるからこそとも言えるでしょう。

マスターは元々タイ料理店で腕を振るいつつ「日本料理源平」の常連だったという方。リーズナブルにすっぽん料理を食べることができるお店として通っていたそうですが、ある時先代が「そろそろ引退しようと考えている」と話したのを聞き、ここの料理を食べられなくなってしまうのはもったいないということで自らお店に入り、お店を手伝いながら料理の手ほどきを受けたそうです。

「すっぽん鍋」(1人前)

そんな中で先代から店を譲るという話が出て、代替わりしたのが昨年9月。その際に先代が「すっぽんは鍋が中心だから夏場が弱いんだ」という話が出て、ならば自分がやってきたタイ料理を合わせるという提案をしたところ、承諾してくれて今の形になったというお話です。

お店の常連がそのお店を受け継ぐという形はカレー界にも少なからずあることですが、その多くがうまくいっているように思います。何しろ常連だからこそお店と料理に対する愛とリスペクトがありますから、商売としてやるよりも味が守られる可能性が高いわけです。

そんな月島源平。コロナ禍の中でランチタイム営業を始めています。ランチタイムはタイ料理中心でありつつ、すっぽん雑炊などもあるという面白さ。タイ料理もポピュラーなものからマニアックなものまで多種多様です。レギュラーメニューと限定メニューの組み合わせで様々な楽しみ方ができるのですが、例えば限定メニューには「クアクリンムー」900円が出ることもあります。

「クアクリンムー」

クアクリンとはタイ南部の激辛ドライカレーのこと。僕の大好きな料理なのですが、これを食べられるお店はまだまだ少ないです。粗挽きという以上に叩いたようなカットの豚肉が自家製のクアクリンペーストと新鮮なバイマックルー(こぶみかんの葉)で仕上げられ、しっかりと辛いのですが、カイダーオ(目玉焼き)を割って食べるとその辛さが程良く落ち着き、ご飯が止まらなくなる逸品です。クアクリンも色々なお店で食べてきましたが、こちらのクアクリンはトップクラスにおいしいです。

「グリーンカレー炒飯」

ある日のランチには「グリーンカレー炒飯」850円に「ミニゲーンソム」400円を合わせていただきました。グリーンカレーのペーストで作る炒飯はほかのお店よりもドライでシャープな仕上がり。スパイスの刺激とホーラパー(タイのスウィートバジル)の香りがおいしさの相乗効果を生んでいます。

「ミニゲーンソム」

ゲーンソムとはタイ南部の酸っぱ辛いスープ状のカレーのこと。海老やパパイヤが入っていて南国ムード満点。蒸し暑い時期にぴったりのおいしさです。

「クンパッポンカリー」

夜には「すっぽん鍋」1人前3,500円や、「さばのへしこ」950円、タイ料理なら「クンパッポンカリー」1,300円などもあり、タイ料理と日本料理を融合させた「土鍋カオマンガイ」2,000円はぜひとも食べてほしいこちらのお店ならではの逸品です。

「土鍋カオマンガイ」

現在は基本的に不定休とのことなのでお店のSNSで営業情報を確認してみてください。そしてシェフはお一人しかいないお店なので、混んでいる際には焦らず、限定メニューも多いのでこれが食べたいというものがあれば予めご連絡くださいとのことです。

「さばのへしこ」

僕はすっぽん料理については全く詳しくないのですが、何もわからない僕が食べてもおいしいと思えるすっぽん鍋ですし、日常的に食べているタイ料理に関しては間違いなく一級品のおいしさと言えるクオリティのお店です。どちらの料理が好きな方にも行ってほしいお店であり、どちらの料理も食べ比べてみてほしいです。普段食べ慣れていない料理への興味が生まれる良いきっかけになると思います。

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2021年6月8日)時点の情報をもとに作成しています。