【第3週のカレーとスパイス】マリトッツォまでスパイス仕立て! カレーに目覚めたイタリアンシェフが振る舞う、曜日&ランチ限定カレー「トラットリア モンテトミ」

両国にある「トラットリア モンテトミ」。本場フィレンツェの名店「トラットリア・アルマンド」で修業した日本人シェフのお店です。基本的にはれっきとした正統派イタリア料理店なのですが、水・木曜のランチタイム限定で「昼間のトミさん」という名前に変わり、カレー専門店に変身するのです。

合い盛りの「トミプレート」1,350円

こちらのシェフは元々カレー好きで様々なお店でカレーを食べ歩いていた中、「カレーノトリコ」や「魯珈」で今まで食べたことがなかったような個性的な絶品カレーと出合って衝撃を受け、自分でも作ってみたいと思うようになったそうです。独学でカレー作りを開始し、最初は賄いとして従業員と一緒に食べていた中で、だんだんとカレー作りのコツが掴めてきて、スタッフさんに「これならお店で出せるんじゃないですか?」と言われたのをきっかけに、曜日限定で二毛作的にカレーのお店を始めたのが2020年1月のこと。

僕は何度かこちらのお店のカレーを食べているのですが、食べる度においしさのレベルが上がってきていると感じます。そんな中、最近遂にご自身の専門分野であるパスタとカレーを融合させたカレーパスタがメニューに加わったということで、気になって食べに行ってきました。

「マトンのレモンカレーパスタ」

いただいたのは「マトンのレモンカレーパスタ」1,200円。これに「パクチーソース」50円をトッピング。修業先の名物料理であるチンギアーレ(猪)のラグー(煮込み)をヒントにスパイスと合わせて再構築したというカレーパスタ。麺にもこだわっていて、米粉で作った高たんぱく麺なのです。

マトンはブリブリの食感で程良い火入れ。イタリア料理らしくトマト感がベースにありつつ、スパイスとハーブが香り、上にのったレモンとカレーリーフが良いアクセントになっています。麺ももちもちで食べ応え十分。パクチーソースはジェノベーゼソースのような仕上がりですが、香りがバジルではなくパクチーであり、これをかけるとよりカレー感が強まって非常に面白く、おいしいカレーパスタとなっていました。

カレーうどん、カレーラーメンなど、カレー麺にも色々あるのですが、カレーパスタが一番進化できていない料理だと感じています。昔ながらのおいしさのカレーパスタは時々あり、それはそれで魅力的なのですが、ここ数年で盛り上がりを見せているスパイスカレーをパスタにしたものはありそうで意外となかなか無いもの。こちらのカレーパスタはまさにその時代の先端を行くカレーパスタだと感動していると、シェフから「もし良かったらこちらも味見してみてください」と出していただいたのが、カブの冷製パスタ(ひとくちサイズを特別に)でした。

ひとくちサイズの「瀬戸内レモンとカブの冷製カレーパスタ」

こちらはイタリア料理のクレマというスープとピューレの間くらいのものを元に、スパイスを合わせて作ったというカレーパスタ。カブの良い意味でザラッとした舌ざわりが心地よく、青唐辛子とセロリのペーストが添えられ、すべて混ぜて食べてみれば、スパイス感は控えめでありながら確かに香りが立っているというもので、カレーパスタと聞いて想像するものを超えた場所にある、興味深いパスタとなっていました。

「マリトッツォマサラ」

おいしかったのでデザートも。デザートには最近流行しているイタリアのデザートであるマリトッツォ。こちらにマサラを合わせた「マリトッツォマサラ」350円です。ブリオッシュにたっぷりのクリームを挟み込んだスイーツなのですが、クリームの上にかかっているのがガラムマサラ。このスパイスの香りが華やかであり、ほのかな苦味がクリームの甘さを適度に抑える働きを見せていて、こちらも興味深いおいしさになっています。

元々料理の基礎がしっかりしているシェフがカレーに目覚め、自身の専門分野とスパイスを合わせて新しい形のカレーを生み出しているお店が少しずつ増えてきていますが、こちらのお店もまさにそれ。イタリアではカレーはほとんど食べないといわれていますが、よく使う食材を考えればトマトやニンニクなど共通点は少なからずありますから、イタリア料理とカレー、インド料理の相性は良いはずなのです。

シェフご自身がカレーが好きだからこそのカレー愛と探求心で日々進化するカレー。ライスで食べるカレーもあり、こちらもおいしいのですが僕のおすすめはカレーパスタ。水・木の昼のみとハードルは高いのですが、そのハードルを乗り越えていく価値あるお店です。

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2021年6月13日)時点の情報をもとに作成しています。

【第4週のカレーとスパイス】このおいしさ、北海道ならでは! カレー好きなら知っておきたい帯広の南インド料理店「DAL」

北海道でカレーと言うとスープカレーを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
確かにスープカレーは札幌で生まれて全国へ広がっていったカレーであり、今も札幌を中心に多くの人気店がある北海道を代表する料理の一つなのですが、ここ数年で北海道ではスープカレーではないカレーも増え、進化してきているのです。

今回ご紹介するのは帯広市にある「DAL」。帯広といえば豚丼が有名で、カレーとなれば「インデアン」がソウルフードとも言われているのですが、DALも帯広を代表するお店であり、北海道のスパイス料理を牽引していると言っても過言ではない、レベルの高いお店なのです。

JR北海道根室本線・帯広駅からタクシーで向かったのですが、運転手さんにも店名を言えば伝わるほどで、地元ではすっかり有名な様子。店内は明るく、南インドの地図が描かれた壁が印象的。インドの民族衣装を身に纏ったマダムが丁寧にメニューの説明をしてくれました。

「スパイス煮玉子」を追加した「マハラジャのミールス」

「マハラジャのミールス」2,400円に「スパイス煮玉子」160円を追加して注文。内容はまさしくマハラジャの食事のように豪華! ラムと黒胡椒のカリー、チキンカリー、ベジタブルカリー、さらにラッサムが2種という構成。ご飯にはキーマカレーも添えられているので、一皿で6種のカレーを味わえる贅沢なメニューです。

カレーだけではありません。ピクルスもチキンピクルス、とかちマッシュのマスタードピクルス、芽室ピーナッツのスパイシーピクルスと、地元の食材にこだわったものが3種のります。

カレーを混ぜながらいただきます

これがとんでもないおいしさ! 北海道はおいしいものがとても多いと言われていますが、素材自体のおいしさが日本でもトップクラスだからこそ。特に野菜の味わいの深さと強さは出色で、だからこそスープカレーもほかの土地で食べるより格段においしく感じるのですが、その力強いおいしさの野菜を見事に南インド料理の中に取り入れているのです。これは北海道在住のシェフだからこそできること。

野菜だけではありません。北海道名物としても知られるジンギスカン。羊肉を食べる文化が根付いている土地だからこそのラム自体のおいしさがまずあり、それを見事なスパイス使いで最高の状態に仕上げたラムと黒胡椒のカリーも驚きのおいしさでうなってしまいました。

ブラックペッパーの使い方が上手いのはラッサムでも感じます。これでもかと利かせている状態でありながらもそれがやりすぎではない絶妙なバランス感で、食べる程に食欲がどんどんわいてくるのです。

スパイス煮卵を割ると半熟の黄身がとろり

スパイス煮玉子も個性的。煮凝りのようになった状態の玉子はそのまま食べて良し、ほかのカレーと合わせて良し。特にチキンカリーと一緒に食べると幸せな気持ちになりました。

「ハニーアイス」

どれもこれもおいしかったのでデザートもおいしいことを確信。「ハニーアイスとチャイのセット」800円をいただきました。ハニーアイスはインドの黒蜂蜜を使用。濃厚でありながらしつこくなく香りの良い蜂蜜と、ミルキーなアイスクリームは抜群の相性です。チャイも北海道のてんさい糖を入れていただきます。最初から最後まで北海道を感じさせてくれる素晴らしさ!

「チャイ」

今回僕はこちらのお店に初めてうかがったのですが、会計時、シェフから「お久しぶりです」と言われて驚きました。神奈川・能見台の南インド料理店「ガネーシュ」で修行されていた方だったのです。ガネーシュも名店ですが、北海道の素晴らしい食材を手に入れたことにより、さらなる高みへ到達しているようにも感じました。

北海道だからこそのオリジナリティ溢れる南インド料理。この地ではまだまだマニアックな料理ということでご苦労もあるようですが、そのおいしさはマニアじゃなくとも理解でき、マニアならその奥にある凄まじさに気づけることでしょう。素晴らしい名店です!

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2021年6月21日)時点の情報をもとに作成しています。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

文・写真:カレーおじさん\(^o^)/