【第3週のカレーとスパイス】茶色いルウで白米が進む! 親子三代で受け継ぎ進化させた、古き良きカレー「レストラン マリ」

スパイスカレーは全国的に認知を得て広がりを見せ、現地系カレーもよりマニアックな地域にこだわった料理を出すお店が増えてきており、カレー界はまさに百花繚乱の時代を迎えています。しかし、カレーと言えばシンプルに茶色のルウで白いご飯が進むアレが好きなんだというオールドカレーファンも少なくありません。さらに言えばここ数年でカレー好きになった方は、古き良きカレーをあまり知らないのではないかと感じることも少なからずあります。

見た目から、家のカレーと大差ないと思い込んでしまって深掘りできていないのではと思うのです。懐かしいだけではなく今食べても間違いなくおいしい「古き良き」カレーは存在します。今回ご紹介するのは東京・神田淡路町にある「レストラン マリ」。2020年11月にオープンした比較的新しいお店なのですが、由緒正しい古き良きカレーをいただけるお店です。

新しいお店なのに古きとは何故か最初に説明すると、こちらの店主マリさんはお婆様の代からカレー専門店を営んでいる華麗(カレー)なる一族。お婆様は東銀座の老舗を立ち上げた方。その後その娘さんであり、マリさんにとってはお母様が立ち上げたのが渋谷の老舗。どちらもオールドカレーファンなら誰もが知る人気店です。

お母様はそのお店を弟さんに譲り、ご自身でまた新たに始めたのがかつて築地にあった「タイティ」というお店で、こちらを学生時代から手伝っていたのがマリさんでした。そのタイティが立ち退きとなり、近場で物件を探していたものの見つからず、エリアを広げて見つけたのが現在の場所。移転を機に店名も変わってスタートしたというわけです。

お婆様の代からの3店舗、どのお店のカレーも根本にあるものは近いながら、仕上がりが違うのが面白いです。聞いてみると場所によって好みが違うので少しずつ変えているのだそう。

「カツカレー」

「カツカレー」980円はひとくちカツが3枚のるカレー。カレーは欧風というよりも洋食的な味わいで、時折口内で弾けるクローブの香りが印象的。ご飯が進むカレーです。この手のお店は、ベースのカレーは同じで具が違うだけということも少なくないのですが、こちらはベースからして違うカレーが楽しめるのも飽きずに通えるポイント。

「牛すじカレーとキーマカレーの2種盛り」

カレーは2種盛りにもできるので、「牛すじカレーとキーマカレーの2種盛り」1,500円をいただいてみれば、牛すじがとにかく奥深いうま味で非常においしく、キーマは鶏と豚の挽肉使用で軽やかな仕上がり。相性の良い2種盛りとなりました。

マリさんが厨房、お母様はホール担当でとても仲の良いお二人。お二人ともおいしいものが大好きで、各地で色々なものを食べ歩いてきたそうです。マリさんはケーキ作りにも力を入れていて、予約限定ですが本格的なケーキもオーダーで作ってくれるとのこと。

三代に渡って受け継ぎ、進化させてきた「古き良きカレー」。古き良きカレーの街である神田エリアに落ち着いたのは必然だったのかもしれません。

※本記事は取材日(2021年7月14日)時点の情報をもとに作成しています。

【第4週のカレーとスパイス】朝ごはんはスパイスカレーで決まり! 朝8時から営業のカレー食堂が早くも2号店をオープン「スパイスカレー食堂」

今年の2月、四谷にオープンした「スパイスカレー食堂」というお店があります。スパイスカレーとは何か簡単に説明すると、インド亜大陸のカレーに影響を受けつつ日本人が独自に進化させた、ルウを使わずスパイスから合わせて作るカレーのこと。基本的にインド亜大陸の現地系カレーはスパイスカレーの範疇に含まれないのですが、以前四谷のスパイスカレー食堂に行った際は厨房にスリランカ人女性がいて、食べたカレーも現地スリランカに近いテイストでした。そのお店がこの7月、早くも五反田に2号店を出しました。

四谷同様、朝8時から開店しているのがまずうれしいポイント。朝カレーという言葉自体はすっかり浸透しているものの、実際に朝お店でカレーを食べられるところはまだまだ少ないですから、朝からカレーを食べたい僕のような人間にはありがたいです。朝からがっつり食べられないという人にはハーフサイズがあるのも良いですね。

メニューはチキン、ポーク、ベジタブルキーマカレー、シーフードの4つ。今回はベジタブルキーマとシーフードカレーをそれぞれハーフサイズでいただいてきました。

「ベジタブルキーマカレー(ハーフ)」

「ベジタブルキーマカレー(ハーフ)」800円は大豆ミートの挽肉と野菜をキーマにしたものにスリランカの副菜が周りを彩ります。素材自体の味を感じる優しく柔らかい仕上がり。スパイス感は控えめですが、卓上のスパイス2種を追加すれば自分好みのスパイシーさに変化可能です。

「シーフードカレー(ハーフ)」1,000円は海老、あさり、ホタテがたっぷりのドライカレーがのる豪華版。スリランカ料理はモルディブフィッシュなどのだしを使うことでも知られていますが、魚介が持つだし感もしっかり出ていて、しみじみとうま味を感じる一皿となっていました。どちらもパリップという豆カレーがついてきますから、実質2種盛りという形。少しずつ混ぜながら食べていくと味の変化も出て最後まで飽きずに食べることができます。

「シーフードカレー(ハーフ)」

食べてみて思ったのは、四谷店よりもスパイスカレー的であるということ。このメニュー自体もそうですが、全体的な味のまとまりや食後感がスパイスカレーのそれであり、現地の尖った味が苦手だという方にもすんなり受け入れられそうなおいしさでした。五反田はサラリーマンも多い街ですが、朝から来ていたサラリーマンと思しきお客さんが帰り際「いやぁ、これ、クセになりますね」と満足そうに帰っていったのが印象的でした。こんなカレーを朝食べたら、確かに一日頑張れるでしょう。

ちなみにこちらのお店、中野坂上に3号店も準備中とのこと。この調子でお店を増やしていく予定だそうです。何しろこちらのお店を手掛けるのは新宿エリアに展開する「もつ煮込み専門店 沼田」(ちなみに沼田にはカレー煮込みもあり、おすすめです)をはじめ、様々な飲食店を展開する企業。そしてその社長自ら五反田店の厨房に立って営業していました。それだけ本気で展開を仕掛けているということ。

朝からスリランカスタイルのカレーが食べられるお店が全国各地に増えていったら、きっと楽しいですしカレーQOLも上昇することでしょう。今後にも期待大のお店です。

※本記事は取材日(2021年7月20日)時点の情報をもとに作成しています。

【第4週のカレーとスパイス】暑〜い夏はアジアめしがうまい! テイクアウトも充実のタイ料理専門店「ピラブカウ」

暑くなってくると暑い地域の食べ物が一層おいしく感じられます。本来なら海外へ旅に行きたいところですが、そうもいかないご時世。ならば少しでも海外を感じられる場所へ行こうじゃないですか。今回はタイ料理激戦区である池袋においても、個性あるメニュー展開をしている「ピラブカウ」をご紹介しましょう。

ピラブカウは元々、JR池袋駅北口方面にあったお店。人気が出てすぐ近くにタイスイーツのお店を支店として出したものの、本店が閉店となり、現在はその支店が本店となっているという少々わかりにくい状況なのですが、そのおいしさとタイ的な雰囲気は店舗が変わっても健在です。

テイクアウトも充実。デリバリーにも力を入れているお店ですが、やはり店内で食べるのが最もタイを感じられます。タイに行ったことがある方なら納得していただけると思いますが、こちらは現地の食堂のような雰囲気なのです。

メニューは王道のものから珍しいものまで。一時期創作メニュー的なものも出していて興味深かったのですが、今はもう無いようです。

「グリーンカレー」

王道メニューのおすすめは「グリーンカレー」。こちらはライスとカイダーオ(タイの目玉焼き)がついて通常980円なのですが、ランチタイムは750円とお得。青唐辛子の爽やかな辛さとココナッツミルクの甘味が調和し、タイのハーブもたっぷり入ってヘルシー。ほかのタイ料理店とは一味も二味も違う奥深いおいしさです。

「豚肉とタガヤサンのカレー」

マニアックなメニューだと「豚肉とタガヤサンのカレー」980円もあります。タガヤサンとは鉄刀木とも言われ、数珠の原料としても使われている広葉樹。葉には独特の苦みとオリエンタルな香りがあるのですが、これが使われているカレーは日本のタイ料理店ではなかなかお目にかかれません。

ゲーンキーレックとも呼ばれるタイ南部ではポピュラーな料理なのですが、そもそも日本のタイ料理店はタイ北部の料理店が多く、南部の料理に力を入れているお店はまだまだ少数派。ピラブカウは南部料理にも力を入れている貴重な存在なのです。タイカレーを色々と食べている方にこそその違いを味わってほしいですね。

タイ南部料理と言えば僕が好きなのが「クアクリン」。わかりやすく言えば激辛のドライカレーです。見た目はガパオにも似ているのですが味と辛さは全然違います。ダメ元で「クアクリンはできますか?」と聞くと、「できるよー!」と。クアクリンはご飯と一緒に食べることもあれば単品で野菜と一緒に食べることもあるので、今回は単品で「クアキンムー」980円をオーダー(クアクリンはクアキンと発音することもあります。ムーとは豚肉のことです)。

「クアキンムー」

確かな辛さとターメリックやバイマックルーの香り。ゲーンキーレックのご飯にクアクリンをかけてタイ南部あいがけカレー的にして食べてみればもうスプーンが止まりません。そして激辛のクアクリンを食べ進めれば汗も止まらない! 店内は冷房が強すぎるわけではなく、あえての扇風機。だからこそ味わえる現地感。良いなぁ。池袋にして気分はタイです。

ちなみにクアクリンは裏メニュー。シェフによって作れる人がいる場合といない場合があるので、ダメ元で頼んで“あったらラッキー”なのですが、それでも頼んでみてほしい逸品です。

暑い夏にぴったりのお店。テイクアウトも充実していますから、まずは定番メニューで味を確かめ、気に入ったらどんどんマニアックなメニューも攻めてみてほしいです。食べたことのないメニューを頼むのに躊躇する方も多いかと思いますが、少しの勇気をもってそれをやっていくと、今まで知らなかった新しいおいしさに出合えますから。

※本記事は取材日(2021年7月26日)時点の情報をもとに作成しています。

※価格はすべて税込

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

文・写真:カレーおじさん\(^o^)/