【カレーおじさん\(^o^)/の今月のカレーとスパイス】2024年5月を振り返る

飲食業界が活気づいてきています。人気店が支店や姉妹店を増やすことも多く見かけるようになりました。カレー業界も同様なのですが、本店と全く同じというわけではなく、変化を出しながらという形もよく見かけます。

というわけで今月のカレーとスパイスは、カレーの人気店が手がける新店舗を中心にお届け。

1. 大阪カレー界を代表するシェフによる創作スパイス料理店が待望の復活

2. 蓮沼に誕生した南&東インド料理の新店舗は地域密着型の雰囲気

3. 海外進出も果たした神田カレーグランプリ受賞店が隣駅で新店舗をスタート

4. 予約の取れない人気カレー店が手がけるラーメン専門店は既に行列の人気

5. 羊料理とスパイス料理の歴史ある名店がカレー激戦区に新店舗をスタート

以上、5つのトピックスと店舗。2つ目の店舗以外は人気店の支店、姉妹店となります。大阪・千日前、蓮沼、御茶ノ水、神奈川・武蔵新城、九段下と様々なエリアの注目店のご紹介。どうぞご覧ください!

【第1週のカレーとスパイス】待望の復活! 大阪の創作スパイス料理店「モダンスパイス 虹の仏」が千日前に移転オープン「モダンスパイス 虹の仏」

スパイスカレーの聖地大阪でミシュランビブグルマンを獲得した名店「虹の仏」のシェフである伊東さんが、モダンテイストも含めた自由な創作スパイス料理をコースで楽しんでほしいとスタートさせた「モダンスパイス 虹の仏」。コロナ禍もあり長らく休んでいたのですが、2024年4月15日より、千日前の地に移転して見事復活を遂げました。

お店は久富千日プラザの2階

場所は雑居ビル内なのですが、さまざまな飲食店が軒を連ね、人気店も複数存在する久富千日プラザの2階。

カウンター

復活にあたって予約制のコースのみならず、席さえ空いていればアラカルトの立ち飲みも楽しめるようになったということで、今回はアラカルトからさまざまな料理を食べてきました。

ドリンクはワイン推し。シェフ自身が日本各地で見つけてきた珍しく、そしておいしいワインが取りそろえてあります。

「グラスワイン」

「グラスワイン」700円をおまかせでオーダーすると、徳島産の自社栽培の葡萄でつくったという生産数限定44本のレアなオレンジワインを用意してくれました。非常に飲みやすく、料理の邪魔をしない味わいでありながら個性ある風味。バランスの良いワインです。

「春菊とイチゴのマスカルポーネあえ」

まずは「春菊とイチゴのマスカルポーネあえ」600円を。こちらは春の定番メニューであり、イチゴの甘みと酸味、マスカルポーネの甘やかなコク、春菊の程よい苦みが三位一体となったもの。フルーツ使いの妙も虹の仏の特徴の一つと言えるでしょう。

「ビンチョウマグロのカルパッチョ」

続いて「ビンチョウマグロのカルパッチョ」600円。生魚をスパイス仕立てで調理するお店は今でこそ全国的に少なからずありますが、僕が初めてそれを食べたのは虹の仏でした。和食の経験もあるシェフだからこその逸品で、チャットマサラを上手に使ったカルパッチョは、醤油で食べるよりもおいしいと感じます。

「出汁キーマリエット」

メニューは日替わりでその日仕入れたものから色々と出すということのようですが、定番メニューとしてほぼあるのが「出汁キーマリエット」400円。こちらは虹の仏の看板メニューである出汁キーマをリエット状にし、クラッカーと共に楽しむ逸品。鰹、イリコ、昆布のだしを使用したうまみが爆発したキーマ。虹の仏の出汁キーマの面影はありつつも違った着地点となっているのも楽しいです。

「黒毛和牛ホルモンカレー」と「チャパティ」

〆に「黒毛和牛ホルモンカレー」600円を「チャパティ」200円で。ホルモン煮込みがカレーとなった形なのですが、和食のようでもあり洋食のようでもあり、さらにはインド料理のようでもあるという面白いテイスト。先述したように和食経験のあるシェフなのですが、イタリアンの経験もあり「洋食いとう」という洋食店も手掛けていることから、すべての経験がこちらの料理に活きていることがわかります。

カレーですがつまみとしてワインも進むおいしさであり、チャパティとも相性が良くカレーとしても満足感が高くて素晴らしいです。

他にも色々と大いに食べ、飲み、いざお会計となった時に、安すぎて驚きました。そもそも以前のモダンスパイス虹の仏のコースも内容を考えると安すぎるくらいだったのですが、さらに安い印象です。リーズナブルに一流の料理を味わえる希有なお店だと言えるでしょう。

店内には立ち飲みスペースもあり

店内はカウンターのみ6席。基本はコースメインで椅子席は予約優先とのことですが、立ち飲みスペースもあって気軽に利用できるので、予約するのが苦手なタイプの方にはとてもうれしいお店であり、軽く1軒目としても、はしご酒の〆としても使え、以前よりも多角的なニーズに応えてくれるお店にブラッシュアップ。

とにかくおいしいものを飲み食いすることが好きで、さらにそれを作ることも好きなシェフだからこその、もっと気軽に面白い料理を楽しんでほしいという気持ちから進化したモダンスパイス虹の仏。

大阪のカレーシーンを代表するシェフの新たなる試み。カレー好きのみならず、おいしいもの好き、お酒好きならすべからく要チェックです!

【第2週のカレーとスパイス】家庭的なテイストが地元民の胃袋を魅了。蓮沼駅で話題の南&東インド料理店「ODISHI INDIAN RESTAURANT」

インド料理は地方によってさまざまな特色があります。北はリッチなテイストのものを基本にチャパティやナンなどパンのような主食に合わせ、南はヘルシーでスパイシーなテイストのものをインド米に合わせることが多いというのは、ここ数年でグルメな方の間では浸透しつつあるように思います。ただ、インドは広いです。北でも当然シンプルなテイストなものを米で食べることもあれば逆もまた然り。さらには東も西もあり、簡単にこうだと言い切ることはできないのが実情です。

今回ご紹介するのは、東急池上線・蓮沼駅近くに2024年2月に開店した「ODISHI INDIAN RESTAURANT」。インド南東部にあるオリッサ州出身のメンバーが中心となって立ち上げられた、南インド料理と東インド料理のお店です。

お店の入り口

外観はよくあるインド料理店のように見えるのですが、ディナータイムの早い時間に入ってみるとほぼ満席。

店内の様子

このスタイルのお店としては既にかなりの人気であり、地域住民にも受け入れられている様子でした。

「ダルショルパ」

幅広いメニューからまずは「ダルショルパ」450円を。豆のスープなのですが、シンプルイズベストな味付けで、豆の優しさとニンニクのパンチが調和していて食欲に火がつくスターターであり、他のカレーなどと合わせて食べても合いそうなスープです。

「チキン65」

続いて「チキン65」780円と「マッシュルームペッパーフライ」690円を。チキン65は南インドでよく食べられるチキンのスパイス唐揚げ。サクッとした衣の食感と一緒に素揚げされたカレーリーフのパリッとした食感のハーモニーが楽しく、そして香り高く、一つ食べると止まらなくなる逸品。

「マッシュルームペッパーフライ」

マッシュルームペッパーフライはケララ名物のペッパーフライかなと思いきや想像よりもかなり優しいテイストで、ブラックペッパーの刺激は控えめ。マッシュルームのうまみがトマトのうまみと渾然一体となったもので、良い意味で家庭的なテイストとなっていました。

「コルカタマトンビリヤニ」

メインに選んだのは「コルカタマトンビリヤニ」1,480円。コルカタ式のじゃがいもがドーンと存在感あるビリヤニ。骨付きマトンはスッと骨が外れるほろほろの軟らかさで肉の味が濃いのがたまりません。付属のライタ(ヨーグルトサラダ)をかけて食べればさっぱりとし、チキンカレーのグレイビーをかけて食べればよりリッチなテイストとなり、味変の振り幅も楽しめるビリヤニです。

ビリヤニはライタとグレイビー付きで、異なる味の変化を楽しめる

全体的に感じたのはホームメイドなおいしさという印象。調理にあたっている方も南インド料理のシェフと東インド料理のシェフがいるそうで、それぞれの経験を活かした料理と、家庭料理もメニューに加えているとのこと。だからこその幅広さであり、だからこそのオーセンティックな地方料理ともまた少し違った魅力があるものなのだなと感じました。

豊富なメニューは選ぶのも楽しい

先述したようにオリッサ州は東インドと南インドの中間に位置します。日本で例えると東京と大阪の中間の名古屋で東京と大阪の料理を出しているお店というような形。しかしそれはそれで独自の面白さがあるわけです。

とにかくインドは広く人も数も膨大ですから、ジャンル分けが日本より遥かに難しい国。これはどこの料理なのかと決めつけることなく、柔軟な気持ちで食べれば素直においしいと感じるものを色々と楽しめます。だからこそここは地域住民にも愛されているのでしょう。南インド料理も東インド料理もよくわからないという人にこそ食べに行ってほしいお店です。

ちなみに店名について、看板には「おおでし」という日本語表記がありますがショップカードなどには「オリッシー」と書いてあります。オリッサ州のオリッシーという意味合いでしょうから、おそらくオリッシー、もしくはオリッシと発音するのが正しいと思われますが、このあたりのおおらかさがインドらしいなと、そしてこのお店の雰囲気を感じさせると思いました。

【第3週のカレーとスパイス】駅直結がうれしい! 秋葉原で人気のカレー店「カリガリ」が新御茶ノ水駅に誕生「カリガリ お茶の水」

「神田カレーグランプリ」殿堂入り、「食べログ カレー TOKYO 百名店」選出など、数々の栄誉に輝き、TVなどメディア露出も多い人気店「カリガリ」。キッチンカーや間借り店など様々な形で店舗を増やし、最近では香港進出も果たしているのですが、2024年4月24日、御茶ノ水にも「カリガリ お茶の水」を開店させました。

元は銀座のバーの裏メニューだったオリジナルのココナッツカレー。常連に人気となり渋谷で小さなお店をスタートし、秋葉原へ移転。現在も本店を秋葉原に構えつつ、今回のお茶の水店はフランチャイズ店となるそうです。

新店舗は千代田線新御茶ノ水駅直結

場所はJR御茶ノ水駅前、千代田線新御茶ノ水駅直結のお茶の水サンクレール1F。以前は喫茶店が入っていた場所。

店内はカジュアルな雰囲気

外観からも内観からも秋葉原本店の雰囲気を感じさせるデザインに安心感を覚えます。メニューは本店より数を絞った形となっていますが、カレーのみならず夜はおつまみになるサイドメニューも取りそろえているので、本店同様昼も夜も楽しめる店舗となっています。

「アキバ盛りカレー1」ランチ1,200円/ディナー1,460円

看板メニューの「アキバ盛りカレー1」を注文。カリガリカレーとインドカレーのあいがけにさまざまなトッピングがのったメニューであり、初めてカリガリの味を楽しむ方にはこれがおすすめ。

コクのあるカリガリカレー

カリガリカレーはオリジナルのココナッツカレー。ココナッツカレーというとタイカレーが思い浮かびますがそれよりも濃厚であり、クリームチーズを感じさせるコクが満足度を高めてくれるカレーです。

辛口のインドカレー

インドカレーも本格的なインドカレーとは違い、カリガリならではのインド風カレー。こちらの方がカリガリカレーよりスパイス感が強く、辛口となっています。

どちらも他にありそうでないカレーであり、わかりやすいおいしさなのがカリガリの個性。カレーに詳しくない方でも理解しやすく、マニアからすると個性を感じて面白く思えるテイスト。

個人的に渋谷店時代からずっと好きなお店なのですが、店舗数が増えてもフランチャイズ展開となっても、ちゃんとカリガリらしさを感じさせることができているのが素晴らしいです。

「タンドリーチキン」

サイドメニューから「タンドリーチキン」660円も。柔らかくジューシーな仕上がりのカレー味チキン。お酒のおつまみにも良く、カレーのトッピングとしても機能します。

アチャール

また、カレーを頼むと無料トッピングができるアチャールも同様に、おつまみにもなり、カレーの辛さ増しとしても機能するアイテムとなっています。

他にもカルダモン、クローブなどが利いた超スパイスカレーや、世界でも注目されているカツカレーがあり、通っても飽きがこないのも良いところ。

店舗のすぐ外は中庭的な場所となっており、テイクアウトの際には外でも食べやすいお盆も貸してくれるとのこと。本店から遠くないエリアということもあり、本店が行列の際はこちらに移動するのも良いでしょう。

時代に合わせてさまざまな形でカレーを提供し、発信し続けるカリガリ。創業時からのスローガン「文化、建設中」の精神は今も健在で、まさにカレーが文化であるということを体現している意欲的なレストランだと言えるでしょう。