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【THEご褒美スイーツ 〜知っておきたい通な店〜】
「食事と同じくらい、スイーツにも絶対手を抜きたくない!」と、日々美味なるスイーツを探し求める甘いもの好きさんにお届けする本連載。スイーツの歴史研究のみならず、製菓にも精通するお菓子の歴史研究家・猫井登さんが太鼓判を押す、ご褒美スイーツを紹介します。
〈第20回〉「観音山フルーツパーラー 銀座店」

「観音山フルーツパーラー 銀座店」は、東銀座駅から徒歩1分。2021年10月にオープンした、和歌山県のフルーツ農園が営むフルーツパーラー。自家農園のフルーツのほか、主に和歌山県産の旬の果実をたっぷりと使ったパフェを堪能できるお店だ。今回は秋に旬を迎えるフルーツが主役のパフェを3つ紹介したい。
【ご褒美スイーツその①】「和歌山県産旬フルーツの農園パフェ」2,590円

和歌山県産の旬のフルーツをたっぷりと盛り込んだ同店の定番商品。使用するフルーツは時期によって変わるが、取材日のパフェの頂点を飾るのは、自家農園で採れたネーブルオレンジ。穏やかな酸味と陽光をたっぷりと浴びたうまみが感じられる。和梨(豊水)は、シャリッと食感でみずみずしい甘み、イチジクは粒々感が楽しくあっさりとした甘み、ぶどう(ピオーネ)は味わい深く濃厚な甘みとうまみ、キウイは完熟で軟らかく、酸味はわずかで、とにかく甘い!

これらのカットフルーツで囲まれた中心には、北海道生乳で作られたソフトクリームがこんもりと盛られている。これがとにかくミルキーで濃厚な味わい! その下に敷かれたグラノーラのガリッとした食感がアクセントを与えるとともに、香ばしくローストされた味わいがソフトクリームと一体となって、口中でミルクキャラメルのように奥深く、うまみのある甘みに変化する。

その下の層はヨーグルトと、自家農園のみかんを使用して作られたみかんジャム。みかんジャムのまったりとした濃厚な味わいを含んだヨーグルトの酸味が、上の香ばしいグラノーラの層に爽やかさを与えて、味わいに変化を持たせてくれる。

一番下は、見た目にも涼やかなカットフルーツ入りのアガーゼリー。アガーゼリーは海藻から抽出した成分で作られ、ぷるぷる・つるりんとした食感が特徴で、優しくフルーツを包み込む。最後は、みずみずしくフレッシュな3種のフルーツの味わいで爽やかにフィニッシュ! 味わいとともに、食感も緻密に計算された逸品である。
【ご褒美スイーツその②】「和歌山県産ふわトロいちじくパフェ」2,890円

和歌山県紀の川市は、市町村単位でいちじくの生産量がなんと日本一! 自家農園でも5年前からいちじくの栽培を開始。豊かな大地で育まれた完熟いちじくをたっぷりと使って作られたのがこちらのパフェ。
まずはトップのホイップクリームに刺されたドライいちじくから。滋味深く、いちじくの味わいが凝縮されている。緑色の葉のような飾りはホワイトチョコ。ちなみに、お店のロゴが入ったピックもホワイトチョコ製で食べられる。ミルキーな味わいでちょっと味変を楽しんで、いよいよいちじくへ!

最初はくし切りにされたものから。ねっとりと軟らかな食感と優しい甘み、小さな種のプチプチ感が良い。続いて、薄く輪切りにされたものを。
……? くし切りにされたものよりも、強くうまみと甘みを感じる!?
同じいちじくなのに、なぜ? もう一度、試してみても同じ。食べ方にもよるのだろうが、輪切りのものは舌の上にぺったりと張り付き、赤く熟した中央の甘くうまみの強い部分が舌全体を覆うようになるので、味わいを強く感じるのだろう。同じ果物でもカッティングの仕方で味わいが異なるのは面白い。

いちじくの下にはバニラアイスとグラノーラ。これまたミルクキャラメルのようなうまみを出してくれて良いのだが、今回はそれに加えていちじくアイスが! このいちじくアイスは、いちじくを煮詰めて高濃度にしたような濃い味わいで、そこにいちじくの果肉も入れられて、バニラアイス+グラノーラのうまみとベストマッチ! ミルクキャラメル状の味わいと濃いいちじくの味わいの、まさにうまみの二重奏。

その下の層では、いちじくジャムの甘みを含んだヨーグルトの優しい酸味が待ち構えていて、爽やかさを送り込んでくる。フレッシュないちじくの輪切りを口に含み、落ち着いたところに、軟らかで優しい食感のいちじくのわらび餅が軽やかなホイップクリームと登場。最後は、フレッシュないちじくの果肉でフィニッシュとなる。
いちじくの味わいを、さまざまに味わえる工夫が散りばめられた、いちじく好きにはたまらないパフェとなっている。
【ご褒美スイーツその③】「銀座店限定 和歌山県産梅パフェ」2,390円

和歌山県の特産といえば「梅」! 正面に鎮座しているのが、このパフェの主役である、金箔をまとった「梅の甘露煮」。煮上げられた梅は軟らかく、優しい酸味と甘みを湛えている。甘露煮の右にはネーブルオレンジ。梅の花に舞い降りた蝶をイメージしたフォルムにカッティングされている。甘露煮の背後に盛られているのが、梅ソルベ。瑞々しく爽やかな味わいを添えている。

奥に見えるのが、クレープチップス。厚手のクレープを香ばしく焼き上げたものだが、瓦せんべいのような味わい。下に敷かれているのが抹茶のグラノーラで、中央に隠れたバニラアイス(日によりソフトクリーム)や、その下のホイップクリームと相まって、抹茶ミルクのような味わいで、和の雰囲気を演出。

その下の層が同店の商品である「梅なちゅるんゼリー」。トロトロでありながら、わらび餅のような弾力と粘性をもった何とも不思議な食感! 梅の酸味を感じさせつつもホイップクリームと合わさり、優しい味わいに。

最後は、再びぷるぷるつるりんとした食感のアガーゼリーに包まれた、主役である梅の甘露煮を堪能してフィニッシュ。完成度の高い爽やかな酸味の和テイストのパフェである。
和歌山の自家農園で育ったフレッシュなフルーツを東京でも堪能できる「観音山フルーツガーデン 銀座店」
観音山フルーツパーラーは、天保年間創業、和歌山県紀の川市を拠点とする果樹園・加工・販売・飲食事業を一体的に展開する、観音山フルーツガーデンが運営するお店。

観音山フルーツガーデンは、約15ha(東京ドームの約3.2倍)の敷地で柑橘類を中心に栽培する家族経営の専業農家。こちらの農園では、農薬を極力減らすとともに、防腐剤・ワックスは使用しない。実も木を一本一本試食して適熟の木からのみ収穫。また大型機械を使って選別作業を行うと果実同士のぶつかり合いや摩擦で味にも影響が出るため、手選別を徹底。
社名の「観音山」は、千手観音を祀る地元の粉河寺の裏手に広がる山々、通称「観音山」から。フルーツ生産においては“実”を作ることでなく“葉”を作ることが一番大事だと考えていることから葉をロゴマークに据え、そこに観音山フルーツガーデン、果物、紀州……などを表す「k」の文字があしらわれている。

2018年4月、新鮮なもぎたてフルーツのおいしさを知ってもらいたいとの思いから園内にフルーツパーラーを開設したところ、和歌山県の観光名所に。「スイーツに生まれ変わらせることで、フルーツはより一層老若男女を笑顔にさせてくれるんだ」ということを知り、店舗を増やし、今では全国で7店舗に。現在、東京では銀座に出店。

パフェは、日により異なるが、常時3種類ほどがラインアップされている。メニューは概ね月替わりだが、季節の変わり目では、2週間程度で変わることも。年間で40種類程度が登場するという。

銀座店は入ってすぐの1階フロアーのほか、奥にやや雰囲気の異なる2つのステップフロアがあり、全37席と外観から見るよりも広く落ち着ける。

1階の厨房横のスペースでは、自家農園で栽培されたフルーツのジャムやジュース類も販売されていて、こちらはお土産にも最適だ。
※価格はすべて税込


